• キネマ旬報WEB トップ
  • ニュース一覧
  • “監督は現地の人々と人生を分かち合おうとした”。「マリウポリ 7日間の記録」プロデューサーのメッセージと著名人のコメント到着

“監督は現地の人々と人生を分かち合おうとした”。「マリウポリ 7日間の記録」プロデューサーのメッセージと著名人のコメント到着

 

ロシアがウクライナに侵攻して間もない2022年3月、リトアニア出身のマンタス・クヴェダラヴィチウス監督が東部ドネツク州の激戦地マリウポリで、廃墟と化した街や教会の地下で助け合いながら生きる人々を捉えた「マリウポリ 7日間の記録」が、4月15日(土)よりシアター・イメージフォーラムほかで全国順次公開。現地で親ロシア派勢力に殺害された監督の意志を継ぎ、映画を完成させたプロデューサーの一人であるナディア・トリンチェフのメッセージ、ならびにフリーアナウンサーの久米宏、戦場カメラマンの渡部陽一、ジャーナリストの江川紹子ら著名人のコメントが到着した。

 

 

プロデューサーのナディア・トリンチェフからのメッセージ
「マリウポリ 7日間の記録」が日本で劇場公開されることを大変嬉しく誇りに思います。ニュースや忙しい日常から離れ、時間を割いても、この映画を劇場で見て欲しいのです。ニュースで目にしていても、一緒に寄り添うことができない人々の生活を共感するためにマンタス・クヴェダラヴィチウスが試みたのは、人々と共に暮らし、彼らの人生を分かち合うことでした。そうすることで、私たち観客は、感情的に親密に他人を知ることができるのです。マンタスは本作の撮影中、昨年、ウクライナのドンバスで命を落としました。この映画は普遍的なアプローチだと思います。日本の皆さんもそう感じて、本作を愛していただければ幸いです。マンタスは世界中の皆の記憶に残るでしょう。日本は、彼にとっても私たちにとっても親愛なる国です。日本で本作を公開いただき有難うございます。

 

〈著名人コメント〉(50音順・敬称略)

爆撃の音が鳴り続け、窓からの景色は一変する。“暮らしてきた街が戦場になる”という事の残酷さをリアルに映し出す傑作ドキュメンタリー。目に焼き付けるべし!
──赤ペン瀧川(映画プレゼンター)

子どもの頃に祖父母から聞いた、瓦礫の道端に死体が並ぶ日常の話。それがここにある。
絶え間ない爆音、避難所のささやき声、小鳥のさえずり。しかし全編は意外なほど沈黙に包まれている。
教会の屋根の十字架が、砲撃から人々を護ろうとする避雷針に見えた。
──石坂健治(東京国際映画祭シニア・プログラマー/日本映画大学教授)

戦地と化した住宅地の、筋書きのない日常を圧倒的なリアリティで映し出す。見ている間、自分がまるで彼の地を訪れているような錯覚に陥る。何十年も働いて築いた生活が破壊され、その後も命の危機が続く。その怖さと絶望感と慣れが、肌身に迫ってくる。こうした日々が7日間ではなく、もう1年も続いているなんて、なんて残酷なことか!
──江川紹子(ジャーナリスト)

最後にマリウポリに行ったのは2013年。港から見たアゾフ海に浮かぶ月に心奪われたのが昨日のことのようです。2022年、その町はこの世の地獄と化します。ロシアによるウクライナ侵略、その真実がこの映画にはあります。
──岡部芳彦(ウクライナ研究会会長)

戦場だが、戦闘が視野に入ることはない。
ミサイルの音が飛びかうなか、淡々とつづく日常生活。
ニュースでは報道されない、ウクライナ戦争の本当の怖さがここにある。
──金子遊(批評家・多摩美術大学准教授)

至近距離での爆発音 画面を見ている我々はとても驚く
遠くの爆発音は絶え間ない 鳥や犬はずっと啼いている
人間達も話しているが ロシアやプーチンへの恨み言はない
この作品のカメラマン兼監督は 去年の3月30日に殺害された
──久米宏(フリーアナウンサー)

ロシア軍の激しい攻撃に晒されたマリウポリ。夜明けごとに空爆の響きが近づいてくる日々の中、何とか生き残る術を工夫して生を享受する市民たち。そんな死に直面しながらも逞しく生きる彼らの姿を、キャメラは一切の説明抜きでひたすら記録することで、ロシアによる侵略戦争の不条理さを見事に浮き彫りにする。監督自身がこの撮影直後に親ロシア派勢力に拘束され殺害されたことを知ると、何ともやるせない感情が込み上げてくる。
──村山匡一郎(映画評論家)

破壊された町、絶えることのない砲撃音。本格侵略戦争勃発直後の町と人々の姿を定点観測した本作の価値は計り知れず、殉死した監督の遺志を継ぐためにも、私たちは作品を通じて廃墟と瓦礫に身を置き、戦争を我が事としなければならない。
──矢田部吉彦(映画祭プログラマー/映画プロデューサー)

ウクライナ取材で繰り返し目にした“SAVE Mariupol”のメッセージ。この作品の意志があの言葉に重なることを確信しました。戦場という日常がここにあります。
──渡部陽一(戦場カメラマン)

 

 

© 2022 EXTIMACY FILMS, STUDIO ULJANA KIM, EASY RIDERS FILMS, TWENTY TWENTY VISION
配給:オデッサ・エンタテインメント、TOMORROW Films.

▶︎ ウクライナの惨状を伝える。亡き監督の遺志を継いで完成させた「マリウポリ 7日間の記録」