“ヨーロッパの裏側と偽りについての話”。「ヨーロッパ新世紀」クリスティアン・ムンジウ監督のコメント、予告編が到着

 

「4ヶ月、3週と2日」の巨星クリスティアン・ムンジウが、トランシルヴァニア地方の村を舞台に不穏な群像劇を紡ぎ、第75回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品された「ヨーロッパ新世紀」が、10月14日(土)よりユーロスペースほかで全国順次公開。場面写真と予告編、監督コメントが到着した。

 

 

 

出稼ぎ先のドイツで暴力沙汰を起こし、経済の冷え込んだトランシルヴァニアの村に戻ったマティアス。妻との関係は冷え切り、森での出来事をきっかけに口がきけなくなった息子のルディ、ならびに衰弱した父との接し方に迷う彼は、元恋人のシーラに安らぎを求める。

ところがシーラが責任者を務めるパン工場が、アジア人労働者を迎え入れたばかりに、彼らを異端視する村人たちは不穏なムードに。SNSに過激なコメントがあふれ、外国人追放に向けた署名運動に発展する。そんな中、ルディが姿を消し──。

 

 

火炎瓶の投入、熊の格好をして行進する伝統行事、さらに17分間のロングテイクで捉えた緊急集会など、緊張を孕んだシーンが次々と現れる。

 

 

 

クリスティアン・ムンジウ監督のコメント
本作は連帯対個人主義、寛容対利己主義、ポリティカル・コレクトネス(政治的妥当性)対真摯さといった現代社会が抱えるジレンマに疑問を投げかけている。また、自分の民族や部族に帰属し、他の民族、宗教、性別、社会階層を問わず他者を遠慮や疑惑の目で見るという、根源的な欲求にも疑問を投げかける。これは古き良きと思われている昔の時代と、混沌としていると思われている現在の時代の話であり、実行性よりも批判に価値が置かれるヨーロッパの裏側と偽りについての話でもある。不寛容と差別、偏見、固定観念、権威、そして自由についての物語。臆病と勇気、個人と大衆、個人的な運命と集団的な運命についての物語。また生存、貧困、恐怖と険しい未来についての物語でもある。
本作は世俗的な伝統に根ざした小さなコミュニティで、グローバル化がもたらした影響について描いている。情報・モラルが混沌とした現代において、真実と自分の意見を区別することの難しさを背負うことになった。
この物語は、「政治的に正しくない」意見を特定の民族や集団に結びつけている訳ではない。意見や行動は常に個人的なものであるため、集団のアイデンティティに依存するのではなく、もっと複雑な要因に依存するのだ。社会的な意味合いを超えて、もっと根源的な人間そのものに根ざしている。信念がいかに選択を形成するか、本能、不合理な衝動、恐怖について、人間の中に埋もれた動物的な部分について、感情や行動の曖昧さとそれを完全に理解することの不可能性について、この物語は語っている。映画の中で最も好きなのは、言葉にはできない何かだ。

 

 

©Mobra Films-Why Not Productions-FilmGate Films-Film I Vest-France 3 Cinema 2022
配給:活弁シネマ倶楽部、インターフィルム

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