自主映画を対象とした日本初の本格的なコンペティション「PFFアワード」を擁することで知られるぴあフィルムフェスティバル(PFF)。今年で45回目を迎えるが、2028年の第50回に向けて、毎年10年区切りで往時の作品を上映し、時代と歴史を体感する企画が始動する。


今年は⟨イカすぜ! 70〜80年代⟩ と銘打ち、70~80年代の映画に着目した特集を展開。激動の60年代が過ぎて⽣活が⼤きく変わり、⾃ら⽣み出す映画=⾃主映画の熱⾵が渦巻いた70〜80年代は、PFFが⽣まれ、最初の隆盛をみせた時代でもある。


あの時代、どんな⼈々と映画が“⾵”を起こしていたのか?
中でも注目の、⼤森⼀樹監督と斎藤久志監督を〈再発見〉する特集上映ラインアップを紹介したい。

 

〈大森一樹再発見〉
映画が好きすぎて映画になろうとしたひとの、映画への愛と憧れが溢れる3プログラム。
貴重な8㎜時代の作品を中心としたラインナップで、トークゲストには、大森監督の下で助監督を務めた経験を持つ緒方明監督が登壇する

 

大森一樹監督

 

 

自主映画時代①8mm 6作品一挙上映 *8ミリ作品は全てデジタル上映
◎9月10日(日)13:00~ 小ホール
ゲスト:緒方明監督、モルモット吉田氏

 

「革命狂時代」
1969年/カラー/13分
監督:大森一樹
六甲高校2年時の記念すべきデビュー作!
文化祭用映画として製作を始めるも文化祭粉砕シーンで終わる、1969年という混沌とした年を大きく反映した一篇。

 

「ヒロシマから遠く離れて」
1972年/白黒/2分
監督:大森一樹
秀逸なタイトルの大森監督唯一の実験映画!
医大入学後、映画製作熱が増し、実験映画にも挑戦。インクに滲む紙束をめくる手をリズミカルに描写した作品。

 

「空飛ぶ円盤を見た男」(3部作)
1972年~/カラー&白黒/合計49分
監督:大森一樹
ライフワークとして始めた3部作を一挙上映!
大学入学直後の1作目から、「ヒポクラテスたち」後に製作した3作目まで、8ミリ映画独自の表現を駆使した作品集。

 

「明日に向って走れない!」
1972年/カラー/42分
監督:大森一樹
素晴らしいショットの連続は見逃せない!
恋人から別れの手紙を受け取った主人公の行動を、様々な映画へのオマージュを織り交ぜ描いた疾走感に満ちた作品。

 

自主映画時代②8mm+16mm2作品
◎9月10日(日)16:30~ 小ホール
ゲスト:緒方明監督、モルモット吉田氏

 

「死ぬにはまにあわない!」
1974年/カラー/47分
監督:大森一樹
京都を舞台にしたハードボイルド映画に挑戦!
日活ニューアクションに触発され、初めて脚本を執筆し臨んだ、銃撃戦やカーチェイスシーン満載の意欲作。

 

「暗くなるまで待てない!」
1975年/カラー&白黒/70分/16mmフィルム上映
監督:大森一樹
初の16ミリによる「ない!」シリーズ最終作!
神戸を舞台に映画製作に打ち込む大学生たちの情熱的な姿を描き、当時の映画を志す若者たちに大きな影響を与えた傑作。

 

「夏子と長いお別れ」
1978年/カラー/25分/16mmフィルム上映
監督:大森一樹
映画愛に満ちた自伝的な青春映画
神戸を舞台に、「暗くなるまで待てない!」のヒロイン・稲田夏子が再び登場!名画座「文芸坐」が製作に乗り出す!

 

必見!秘蔵長編映画豪華2本立て
◎9月20日(水)13:00~
ゲスト:緒方明監督、モルモット吉田氏

 

「女優時代」
1988年/カラー/93分/35mmフィルム上映
監督:大森一樹/原作:乙羽信子/脚本:新藤兼人
出演:斉藤由貴、根津甚八、森本レオ、相楽晴子、川谷拓三
宝塚から映画女優へ。乙羽信子の半生を斉藤由貴が熱演
原作・乙羽信子×脚本・新藤兼人のテレビドラマ。映画界へ転身し、成長していく乙羽の姿を、当時21歳の斉藤由貴が見事に演じている。

 

「悲しき天使」
2006年/カラー/113分/35mmフィルム上映
監督:大森一樹
出演:高岡早紀、岸部一徳、筒井道隆、山本未來、河合美智子
女性たちの生きざまが交錯するヒューマンドラマ
父親を殺した娘を追って大分県で張り込みを開始した刑事は、やがて意外な真実に直面する。紆余曲折の末完成した意欲作。必見!

 

大森一樹 OMORI Kazuki
1952年大阪府生まれ。高校時代に8ミリ映画を撮り始め、大在学中に初めて16ミリで撮影した「暗くなるまで待てない!」が関西で注目を浴びる。76年にぴあ主催の〈ぴあシネマブティック〉で「ない!」シリーズ3部作が好評を博し、自主映画ムーブメントの先駆けに。77年にはシナリオ「オレンジロード急行」で城戸賞を受賞し、翌年に同作で商業監督デビューした。
その後「ヒポクラテスたち」(80)「風の歌を聴け」(81)「すかんぴんウォーク」(84)「恋する女たち」(86)「ゴジラ」シリーズなどを発表。2022年12月に逝去。

 

 

〈斎藤久志再発見〉
長廻しのロングショット、ひとを捉える独自の空間と時間、惜しまれるその逝去…。
PFF入選作から遺作まで幅広いプログラムをお届け。同時代に出てきた風間志織や塚本晋也がセレクトした作品も上映される

 

斎藤久志監督

 

◎9月14日(木)11:30~

© 2021 HAKODATE CINEMA IRIS

「草の響き」
2021年/カラー/116分
監督:斎藤久志/原作:佐藤泰志
出演:東出昌大、奈緒、大東駿介、Kaya、林裕太
走ること 愛すること そして自由
作家・佐藤泰志の映画化シリーズ第4弾。心を病んで郷里に戻った和雄は、精神科医の勧めでランニングを始める。地元の青年たちとも交流し、生活は安定したかに見えたが……。“幸せ”の定義を覆す、大胆な脚色が見事。

◎9月14日(木)14:30~
ゲスト:風間志織(映画監督)鈴木卓爾(映画監督・俳優・脚本家)

「うしろあたま」
1985年/カラー&白黒/124分
監督:斎藤久志/原作:高野文子
超長回しで切り取る女子大生の現在と過去
1985年(第8回)PFF入選作。突然、髪を男のように短く切った女子大生の日々を淡々と描く。カメラ据えっぱなし、超長回しという独特のスタイルが早くも開花し、過去と交錯して反転する日常を鮮やかに捉える。

 

「0×0(ゼロカケルコトノゼロ)」
1984年/カラー/22分
監督:風間志織
ヌーヴェル・ヴァーグ女子高生監督、誕生の瞬間!
いつもと違う一日を過ごそうと街に出た二人の女子高生。次々出会う奇妙な人々の中で、彼女たちは自分たちの日常を発見する。当時高校三年生だった監督の圧倒的な感受性が躍動し、PFFスカラシッププロジェクトの始まりに繋がる。

【スペシャルトーク】「特別企画:斎藤監督の現場で出会った3人が語り、秘蔵映画をみせる」

◎9月14日(木)18:30~
ゲスト:鈴木卓爾(映画監督・俳優・脚本家)、矢口史靖(映画監督)、田中要次(俳優)

斎藤監督の映画に出演中の鈴木卓爾氏を訪ねたことで、矢口史靖監督、田中要次さん、3人の長い友情が始まった。秘蔵作品を上映し、数々のエピソードを披露しながら、斎藤久志監督の映画術を伝えていく。

塚本晋也監督presents
◎9月21日(木)18:30~
ゲスト:塚本晋也(映画監督)、唯野未歩子(女優)

「サンデイドライブ」
1998年/カラー/86分/16mmフィルム上映
監督:斎藤久志/製作:塚本晋也
出演:塚本晋也、唯野未歩子、丹治 匠、中山舞衣、小野麻希子
日常の延長線上にある“非日常”の逃亡劇
レンタルビデオ店の店長・岡村とアルバイトの結衣。ただそれだけだった関係は、結衣が浮気した恋人を殺した夜に一変。岡村は思いを寄せる結衣のため、共犯者となる。あてもない逃避行の結末は?塚本晋也監督主演&プロデュース。

 

ワンピース「Whatever」
1996年/カラー/11分
監督:斎藤久志
出演:唯野未歩子、塚本晋也
★「サンデイドライブ」制作をインスパイアしたワンピース作品を特別上映
※ワンピースとは?(第39回PFFより)

 

ワンピース「DON'T LOOK BACK IN ANGER」
1998年/カラー/16分
監督:斎藤久志
出演:鈴木卓爾、唯野未歩子、丹治匠

 

斎藤久志 SAITO Hisashi
1959年東京都生まれ。85年に自主製作映画「うしろあたま」がPFFに入選し、87年に第2回PFFスカラシップ作品「はいかぶり姫物語」を発表。その後、廣木隆一監督「夢魔」(94)の脚本や塚本晋也監督「東京フィスト」(95)の原案などを手掛け、「フレンチドレッシング」(97)で劇場映画デビュー。「サンデイドライブ」(98)「いたいふたり」(02)などを発表し、「草の響き」(21)は映画芸術ベストワンを受賞。2022年12月に逝去。

 

〈第45回ぴあフィルムフェスティバル2023〉
【東京】9月9日(土)~23日(土) 会場:国立映画アーカイブ ※月曜休館
【京都】10月14日(土)~22日(日) 会場:京都文化博物館 ※月曜休館
第45回特設サイト https://pff.jp/45th/
チケットは8月19日(土)より発売

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