カンヌ受賞のアキ・カウリスマキ新作。可笑しくも切実な恋物語「枯れ葉」

 

孤独な男女の恋模様を紡ぎ、第76回カンヌ国際映画祭審査員賞や2023年国際批評家連盟賞年間グランプリを受賞、アカデミー賞国際長編映画賞部門フィンランド代表にも選ばれたアキ・カウリスマキ監督作「枯れ葉」が、12月15日(金)よりユーロスペースほかで全国公開される。

 

 

「希望のかなた」のプロモーション中に監督引退を宣言して5年、カウリスマキはあっけらかんと戻ってきた。労働者3部作(「パラダイスの夕暮れ」(86)「真夜中の虹」(88)「マッチ工場の少女」(90))に連なる “4作目” として発表された「枯れ葉」は、ギリギリの生活ながらも喜びと誇りを失わない労働者たちを描き出す。

ヘルシンキの風景、バンド演奏やカラオケなどの音楽、とぼけたユーモアといったカウリスマキらしさは健在。一方で人々の周囲ではつねにロシアによるウクライナ侵攻のニュースが流れ、監督のメッセージ性を感じさせる。

主演は「トーベ/TOVE」のアルマ・ポウスティと「アンノウン・ソルジャー 英雄なき戦場」のユッシ・ヴァタネン。それぞれの友人を「街のあかり」のヤンネ・ヒューティアイネンと「希望のかなた」のヌップ・コイブが演じ、カウリスマキ映画には欠かせない《犬》も登場する。可笑しくも切実なラブストーリーに胸を打たれる。

 

アキ・カウリスマキ監督メッセージ

取るに足らないバイオレンス映画を作っては自分の評価を怪しくしてきた私ですが、無意味でバカげた犯罪である戦争の全てに嫌気がさして、ついに人類に未来をもたらすかもしれないテーマ、すなわち愛を求める心、連帯、希望、そして他人や自然といった全ての生きるものと死んだものへの敬意、そんなことを物語として描くことにしました。それこそが語るに足るものだという前提で。

この映画では、我が家の神様、ブレッソン、小津、チャップリンへ、私のいささか小さな帽子を脱いでささやかな敬意を捧げてみました。しかしそれが無残にも失敗したのは全てが私の責任です。

 

なお、長らく廃盤だったカウリスマキ作品のブルーレイBOXが、プライスダウンして12月6日(水)に再発売される。こちらも注目したい。

 

Story
ヘルシンキの街。アンサは理不尽な成り行きで仕事を失い、ホラッパは酒に溺れながらもどうにか工事現場で働いていた。ある夜、ふたりはカラオケバーで出会い、互いの名前も知らないまま惹かれ合う。だが、不運な偶然と過酷な現実が、ささやかな幸福すら遠ざける。果たしてふたりは再会できるか……?

 

「枯れ葉」

監督・脚本:アキ・カウリスマキ 撮影:ティモ・サルミネン
出演:アルマ・ポウスティ、ユッシ・ヴァタネン、ヤンネ・フーティアイネン、ヌップ・コイヴ
2023年/フィンランド・ドイツ/81分/1.85:1/ドルビー・デジタル5.1ch/DCP/フィンランド語/原題「KUOLLEET LEHDET」/英語題「FALLEN LEAVES」
配給:ユーロスペース 提供:ユーロスペース、キングレコード
公式サイト:kareha-movie.com

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