『スター・ウォーズ』日本初公開日記念!その誕生の裏側を河原一久が読み解く【全4回―①】

46年前の1978年6月24日、全米公開から約1年、日本中の映画ファンが待ちに待った「スター・ウォーズ」が日本で初公開(先行上映)された歴史的な日だ。前年の5月に全米公開され、未曾有の大ヒットを記録、その約1年後、日本列島をその熱狂の渦で包み込んだ。その後、映画史に残した足跡、伝説は語るまでもないが、その始まりの前夜にどれだけの物語が存在したのか。
もしかしたら、この伝説はすべて夢となっていたかもしれない──
フランスですでに8万部以上を売上げた大ベストセラー、「ルーカス・ウォーズ」。ジョージ・ルーカスの生い立ちから「スター・ウォーズ」誕生までを描いたこのバンド・デシネ(フランス語圏の漫画)からその裏側を読み解きたい。

 

封印されていたエピソードが描出された稀有な1冊「ルーカス・ウォーズ」

いまや映画業界における伝説ともなっている「ジョージ・ルーカスの生い立ちとスター・ウォーズ誕生まで」の物語が、彼の母国ではなく、フランスで出版されたという点は興味深い事実だ。無名時代におけるスタジオとの戦いや、当時を支えた妻マーシアとの関係、撮影中のキャリー・フィッシャーの恋バナなど、実に人間臭いエピソードに満ちていたが、ディズニー傘下となる以前から、ルーカスのヒストリーには彼の作品と同様に時代ごとに「修正」が加えられてきた。

そのため前述したような出来事は、いわゆる「正史」からは封印された形になっていた。これを「言論・表現の自由」に世界でも最もこだわるフランスで、今では忘れ去られたような細かい出来事までくまなく網羅して構成されたのが本書である。

ルーカスの成功物語は、たとえ当たり障りのない話だけで構成しても十分に興味深い話だし、後進のアーティストにも参考になる要素は多々ある。だが、今回、一編のコミックとしてまとめられた本書には、己の理想と夢を実現するために奮闘を続ける者たちの苦悩に満ち、しかし一方では形になりつつある夢の実現に興奮と震えを感じながら邁進を続ける姿が、ありのままに描かれている。そこがいい。

そしていつの時代でも、時代に変革をもたらすような作品が誕生する背景には、こうした人間臭い物語が存在していたのだ。これを誰もがわかりやすいコミックとしてフランスでまとめられたことが、ある意味「ルーカスらしい」と思えるのだ。

なぜならルーカス自身は常にハリウッドに対する反逆児として、作家としての自由を勝ち取るための戦いを続けてきたし、そのためのインフラが存在しない中で、自らそれを新たに作り出してきたからだ。画期的なVFX工房であるILMの設立やTHXサウンドシステム、世界初のノンリニア編集システムであるエディットドロイド、そしてCG専門スタジオであるピクサーなど、どれもがルーカスが必要と感じて作り出したものだ。

 

第2回へ続く……

 

 

【書籍名】ルーカス・ウォーズ
【著者名】ロラン・オプマン 作 ルノー・ロッシュ 画 原正人 翻訳 河原一久 監修
【ISBNコード】978-4-87376-491-7
【判型・頁数】A4判/208頁/書籍
【刊行年月】2024年5月

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