「悪魔が夜来る」のストーリー

十五世紀、中世の騎士道はなやかであったころのフランス。ユーグ男爵どのの壮大な城では、姫のアンヌと騎士ルノオの婚約ひ露の宴がたけなわであった。近郷はもとより遠い旅の芸人たちも多勢集められて、色々の余興が席をにぎわせている中に、吟遊詩人の兄弟もまじっていた。しかし、まことは兄弟でも吟遊詩人でもなく、かつては恋人同志であった男女で、悪魔に魂を売り、悪魔の命令をうけ、アンヌとルノオの幸福を破壊するためにつかわされた、悪魔の使者であった。男はジル、女はドミニックといった。ジルの歌はたちまちアンヌの心をとらえ、ドミニックの美しい脚はルノオの眼を奪った。宴も終って参会者一同が、みやびやかなダンスに打興じ始めたとき、ドミニックが静かに琴を鳴らすと、楽士は音楽を、踊る人々はダンスを、ピタリとやめて石像のように動かなくなった。ジルはアンヌの手を、ドミニックはルノオの手を、それぞれとって庭に立出で、恋をささやくと二人は恋の奴となり、婚約のことも忘れて了う。その夜ドミニックは男やもめのユーグ男爵の部屋に姿をあらわし、女であることを示して男爵の胸にも愛のほのおを燃え立たせた。しかしジルはひたむきに彼を愛するアンヌのまごころに動かされ、使命を忘れ果てて人間の本心にもどって彼女を愛する。悪魔は怒って旅の貴族を装って雷雨の一夜、城に乗込む。狩の日ルノオはドミニックと男爵のランデヴーの姿を見ると、しっとは烈しい仲たがいとなり、二人は決闘をすることとなった。野試合に事よせて真剣の勝負をしたが、悪魔の力添えで男爵が勝ち、若いルノオがあえなく殺された。男爵はもはやドミニックのとりこであった。悪魔の命令で城を去って行く彼女を追って、狂気の如くユーグ男爵は馬を走らせた。違約したジルはろうにつながれ、ろう番にむちうたれてもアンヌを愛する誠を捨てない。悪魔はジルを自由にしてやるから、おれのいうことをきけと彼女を口説いた。その甘言にのるなと叫ぶジルの痛々しい姿を見ると、やさしいアンヌは恋人をこれ以上苦しませたくないばかりに、悪魔の申出でを承知した。開放されたジルは一切を忘れて、アンヌがだれだかも分らず、城を出てゆく。アンヌはそれを見ても彼を愛する一念はかわらず、狩の日ジルと初めてキッスを交した泉のほとりへ、ただ一度だけ行かせてと悪魔に頼む。悪魔は怒ったが、彼女の願をかなえてやる。アンヌがジルに泉の水を手にくんで飲ませると、彼は愛するアンヌを思い出した。二人の愛が復活したのを見ると、悪魔はかんべん成らぬとばかり、二人とも石になれ!とのろった。ジルとアンヌは相抱いたまま石像となったが、二人の心臓は生きていて、一つに化し、一つの鼓動をうっている。狂ったように怒った悪魔は石像を烈しくむちうつ。しかも石像の心臓は鼓動し続けた。悪魔をあざけるようにいつまでも。

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