「さまよえる人々」のストーリー
16世紀後半、スペイン帝国の支配下にあったオランダ。スペインの圧政とカソリックの厳しい法に対して民衆は大きな不満を募らせ、偶像崇拝に反抗し、教会や修道院を攻撃して多くの彫像を破壊していた。この反乱を鎮圧するため、地元の領主やスペインは各地に審問官を配置し、恐怖支配を断行していた。1568年、フランドル地方のとある農村。イタリア人の吟遊詩人カンパネリ(ニーノ・マンフレディ)は、反逆者たちが残していった巨大な頭像の下から助け出された奇妙な男(レネ・グルーゾフ)と、その土地の農主ネトルネック(ウィリー・ヴァンダーミューレン)の妻(イングリッド・デ・ヴォス)が関係してしまうのを目撃する。カンパネリは男の持っていた金の聖像を目当てに男を助けようとする。だが、男はネトルネックに撃たれ、自分はオランダから来たと言って息絶えた。翌年、ネトルネックの妻は男の子を産んで死んでしまうが、子供はダッチマンと呼ばれ、土地の農奴たちによって育てられる。7年後、ダッチマンは、再びやって来たカンパネリに、自分の父親の話を聞かされる。父は空を飛ぶことができ、フライング・ダッチマンと呼ばれて7つの海を支配しているのだと聞かされた彼は、父への思いを募らせた。14年の歳月が流れ、成人したダッチマン(レネ・グルーゾフ二役)は、またも現れたカンパネリとネトルネックの争いに巻き込まれて金の聖像を見つけ出し、ネトルネックの息子の妻ロッテに助けられる。彼女はダッチマンの年上の幼なじみだったが、彼に思いを寄せていた。ダッチマンとロッテはオランダを目指して河を下り、途中で2人は、初めて愛を交わす。海に出た2人はオランダに行くための船に乗ろうと、金の聖像を現金に換えるが、2人を追ってきたネトルネックの息子(ゲネ・バーヴォエツ)に命を狙われる。だが、奇跡的に命をとりとめたダッチマンは、さまよった末に岸に乗り上げて朽ち果てた、大きな帆船を見つける。彼はそこに住む得体の知れない小男(レネ・ウァント・ホヌ)から船を買い取り、修理する。小男はダッチマンを殺そうとするが失敗。その後、ダッチマンと小男は武装した一団に捕らわれ、オランダへと連行された。2人はアムステルダムの矯正院に収容され、強制労働に就かせられる。数年の時が流れ、苦しい日々の中でダッチマンは脱走を試みるが失敗し、地下の井戸に閉じ込められて水攻めにされる。その頃、ネトルネックの息子に捕まり、アムステルダムで再び彼の妻として貴婦人の生活を送っていたロッテは、偶然に矯正院を見学者として訪問。ついにダッチマンと再会した彼女は金で彼を救い出そうと、彼との間に生まれた息子を連れて再び院を訪れる。一方、ダッチマンは自分を殺そうとした小男を逆に倒し、院内で迷っていた自分の息子と出会うが、彼が父であることを知らぬ息子に「本当の父は空を飛ぶことができるんだ」と言われる。ダッチマンは父であることの証として、高い壁によじ登り、そこから宙に舞い上がろうとするのだった。