遙かなる帰郷
はるかなるききょう The Truce
解説
アウシュヴィッツから奇跡的に生還したプリーモ・レーヴィが、故郷イタリアへ戻るまでの8か月の旅を書き記した記録文学のベストセラー『休戦』の映画化作品。監督は「黒い砂漠」「パレルモ」のフランチェスコ・ロージ。製作はレオ・ペスカローロとグイド・デ・ラウレンティス。脚色はロージと「みんな元気」のトニーノ・グエッラ。脚本はロージとステーファノ・ルッリとサンドロ・ペトラリァ。撮影は「湖畔のひと月」のパスクワリーノ・デ・サンティスだが、撮影中に死去。その後をマルコ・ポンテコルヴォが受け継いだ。音楽は「イル・ポスティーノ」のルイス・バカロフ。美術は「小さな旅人」のアンドレア・クリザンティ。編集はロージ作品には欠かせないルッジェーロ・マストロヤンニだが、編集中に死去。その後をブルーノ・サランドレアが受け継いだ。衣裳は「イノセント」のアルベルト・ヴェルソ。出演は「バートン・フィンク」「ガール6」のジョン・タトゥーロ、「ビフォア・ザ・レイン」のラーデ・シェルベジヤ、「心のおもむくままに」のマッシモ・ギーニ、「カストラート」のステーファノ・ディオニジほか。
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この作品のレビュー
ユーザーレビュー
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ミャーノフ大佐
アウシュビッツから解放されたユダヤ人が故郷のイタリアに帰るまでの話。
アウシュビッツというとその中でのジュノサイドの話かと思うと、解放されてからの苦労の話でした。確かにそうだよな。解放されたら、故郷まで連れて行ってくれるのではなくて、自力で故郷に帰らなければいけないんだ。
気になるのは、製作に英語圏の国が入ってないのに、英語で話していることだ。主人公がイタリア人なら、監督もイタリア人だし、イタリア語の映画で良かったのに。これはアメリカのマーケットを意識したか。
アウシュビッツはソ連軍によって解放されるのだが、まあポーランドだからソ連が解放するのは、考えればそうだよな。解放されてもお金もないし、食料もないし、でなんとかウクライナまで行くのだが、当時のウクライナは、スターリンがウクライナの小麦を取り上げて、大量の餓死者がでていた頃だ。その辺が出てこないなあ。それとロシア兵は解放した女性たちに対して乱暴していなかったのだろうか。ソ連兵が割と善人に描かれているのも、今となってはちょっと違うかな、と思う。最も原作がそこまで書かれていないのかもしれない。
監督がフランチェスコ・ロージということで、ある種の期待があったのだが、割と情緒的な映画だった。
エンドクレジットで主役がジョン・タトゥーロであることがわかった。私の中でジョン・タトゥーロといえば、1990年代、スティーヴ・ブシェミと並ぶ変態俳優として評価していたんだが、こんな真面目な映画の主役をヤルなんて。
「遙かなる帰郷」のストーリー
1945年1月26日、連合軍に押されたドイツ軍は収容所を放棄して撤退を始めた。アウシュヴィッツから解放されたプリーモ(ジョン・タトゥーロ)は、一緒に生き残った友人ダニエーレ(ステーファノ・ディオニジ)とは輸送トラックが別になったので、ひとりで連合軍の命じる地へと向かう。ポーランド、クラクフに向かう列車で彼はモルド(ラーデ・シェルベジヤ)というギリシア人の男に出会う。モルドは混乱下を生き抜くための知恵をたくさん持っていて、プリーモは彼に敬意を抱くが、実生活で役に立たないプリーモをモルドは見捨ててひとりで行ってしまう。プリーモはポーランドのカトヴィッツェにあるソ連軍の中継キャンプで数か月を過ごすことになる。そして4月になり、ベルリンは陥落。キャンプはヒトラーの死に沸き立った。プリーモたちイタリア人は故郷を目指してロシアのオデッサに向かう。ロシアの国境を越えた時、線路が破壊されたので機関車を降りた彼らは、近くの中継地スターリエ・ダローギの赤い家まで歩くことになる。到着すると、そこにはあのモルドがいた。彼は故郷ギリシアへのバスを待つ間、女たちの売春を斡旋して稼いでいたのだ。そこには平和な光景が広がっていた。ふとアウシュヴィッツの記憶を思い出したプリーモは、解放されてから初めて激しく泣いた。そしてプリーモはルーマニア、オーストリア、ドイツと巡り、8か月の旅の末、母と兄弟の待つトリノに戻る。彼は自分の体験したことを人々に伝えようと、ペンを取った。
「遙かなる帰郷」のスタッフ・キャスト
スタッフ |
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キャスト | 役名 |
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「遙かなる帰郷」のスペック
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