帝一の國の映画専門家レビュー一覧
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評論家
上野昻志
原作は読んでいないが、マンガだったら面白く読めるのだろうと、映画を見ながら思った。というのも、ここまで徹底して類型的な人物を活かすのには、付随的なエピソードを含めて、叙述に相当な分量を必要とするからだ。マンガなら何ページも使って、それができる。だが、映画では、尺数の関係もあり圧縮せざるを得ない。そうなると、類型的であればあるほど、人物の薄っぺらさが際立ってしまう。だから原作を読んだ人には、それを踏まえて見る面白さもあろうが、素で付き合うのは辛い。
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映画評論家
上島春彦
この生徒会選挙運動映画という大真面目なホラ話に痺れる。絵に描いたような正義漢があくまで脇役で、ライバル関係にある主人公二人、菅田と野村がどっちも「ろくなもんじゃない」という構造が秀逸。いわゆる権謀術数というヤツ、「どこまで相手をおとしめられるか」のみが問題なのだ。現代日本の政治体制云々を連想するのは野暮で、あくまで冗談だからいいのよ。文化祭の和太鼓パフォーマンスとか、菅田の相棒のメカおたくとか細部の充実ぶりも特筆もの。マイムマイム事変にゃ大笑い。
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映画評論家
モルモット吉田
鈴木則文が「ドカベン」で実践したように漫画実写化は表情から動きまで如何に再現するかが重要だが、その方法論を理想的に発展。役が固定化しかけていた菅田に跳んだ役を振ったおかげで全篇を全力で演じて引っ張るが、間宮の〈妖演〉も良い。「ちょっと今から仕事やめてくる」同様に吉田鋼太郎の怪演も支柱になっている。「小説・吉田学校」を超える政治闘争劇を堪能。演技や世界観が大仰な分、演出は抑制されているのも好感。この布陣なら加藤諒を迎えて『パタリロ!』も出来そう。
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