ザ・ビッグハウスの映画専門家レビュー一覧

  • ライター

    石村加奈

    ある日のフットボールスタジアムの光景から、人種や格差、教育とビジネスへ現代アメリカの光と影が浮き彫りになってゆくダイナミズム!観察した映像の断片を、編集作業を通して積み重ね、抽象性へと辿り着く、想田監督の唯一無二の手腕が発揮されている。監督率いる総勢17人の映画作家たちが捉える、カメラを回していなければ素通りしてしまいそうな被写体のドラマも、複合的な分、従来の観察映画よりバラエティ豊かな印象だ。神出鬼没の猫のようなスリルが物足りない気もして残念。

  • 映像演出、映画評論

    荻野洋一

    バルセロナのカンプ・ノウなど巨大スタジアムでの撮影に親しむ筆者には、本作の全カットが同僚の撮ってきたラッシュを見る気分だ。このスケールがプロではなく、大学スポーツという点が米国らしい。ただし周辺取材の充実に比べて中心部の画が物足りない。核心の秘境にもっと迫るべきでは? 試合直前のロッカールーム、監督室、審判の控室、ドーピングルームでもいい。そこまで撮るのかという禁断の驚きが欲しいし、それは想田監督の「観察」という概念とも矛盾しないはずだ。

  • 脚本家

    北里宇一郎

    10万人入るスタジアム。その内外で蠢く人々を望遠鏡で覗き、興味を惹いた者をじっと眺めている感覚。伝統と信仰を重んじる土地。それゆえか住民は善人風。その合間をトランプの宣伝カーが縫って走る。フットボール試合のお祭り騒ぎ。その裏に格差や差別を思わせるスケッチもはさんで。アメリカという巨大な国。それを丸ごと呑みこんだような作り。けど目を凝らせば、その国情に対する批評がちらほら。そうかと頭では納得。が、どこか心に響かない。少し計算でこしらえた気がして。

1 - 3件表示/全3件

今日は映画何の日?

注目記事