アニエスによるヴァルダの映画専門家レビュー一覧

アニエスによるヴァルダ

2019年に亡くなったフランス映画界を代表する女性監督、アニエス・ヴァルダの遺作となったドキュメンタリー。1954年の長篇劇映画監督デビュー作「ラ・ポワント・クールト」から「顔たち、ところどころ」まで、60余年の自身のキャリアを振り返る。第69回ベルリン国際映画祭正式出品作品。特集上映『RENDEZ-VOUS avec AGNES アニエス・ヴァルダをもっと知るための3本の映画』にて上映。
  • 映画評論家

    小野寺系

    ヴァルダ監督本人による、シンプルな構成の回顧録といえる作品だが、なにせ紹介する作品群が凄まじい。彼女の知性はもちろん、驚異的に軽やかな感性と好奇心が、映画という二次元の表現媒体と幸せな出会いを果たし、生涯の友となる関係性が生まれていく過程に感動。一見難解に感じられる「幸福」へのシンプルな解説も嬉しい。彼女ののびのびとした姿を見ていると、女性監督の地位の低さや、才能に見合わぬ評価に甘んじている日本や世界の状況に思いを馳せざるを得ない。

  • 映画評論家

    きさらぎ尚

    「アニエスの浜辺」を、アニエス・ヴァルダのセルフポートレートとするなら、遺作となってしまったこの作品は遺影である。自らの創作の歴史を自身の言葉と映像とで構成する技法は、ヴァルダその人によるマジックショー。タネ明かしに納得したり、驚かされたり。今作の結末にしている浜辺の情景は、前作「顔たち、ところどころ」でラストと決めていたそうで、シーンに重ねた彼女の声「よく見えないまま徐々に姿を消しつつ、私はあなた方のもとを去る」は完璧な終幕。余韻嫋々。

  • 映画監督、脚本家

    城定秀夫

    アニエス・ヴァルダによるアニエス・ヴァルダの映画及びアート作品の解説といった趣で、冒頭彼女の口から語られるように劇中すべての作品には、ひらめき・創造・共有というテーマが貫かれており、波に消されてしまう浜辺の絵のように儚いからこそ美しいそれらを高尚ぶることなくキュートに総括した本作は、寂しいが遺作に相応しく思うと同時に、彼女の人生そのものともいえるこの映画にスコアをつけることには抵抗感があり、一応中間の3つ星をつけるも本来なら星などナシにしたい。

1 - 3件表示/全3件