チャンシルさんには福が多いねの映画専門家レビュー一覧

チャンシルさんには福が多いね

ホン・サンス作品のプロデューサーを務めてきたキム・チョヒによる長編監督デビュー作。プロデューサーとして長年支えてきた映画監督が急死したことで失職した女性チャンシル。家も男も子供も青春さえも棒に振ってきたそんな彼女に、ある日思わぬ恋の予感が訪れる。出演は『必ず捕まえる』のカン・マルグム、「3人のアンヌ」のユン・ヨジュン。第15回(2020年)大阪アジアン映画祭にて『チャンシルは福も多いね』のタイトルで上映。
  • 映画評論家

    小野寺系

    「はちどり」や「82年生まれ、キム・ジヨン」の監督たちに匹敵する才能がまたしても出現し、韓国女性監督のラッシュが凄まじいことになっている。このキム・チョヒ監督は、なかでもユーモア感覚に優れ、本作ではホン・サンス作品で製作の仕事をしていたという、監督本人をモデルにした主人公を通し、自虐的な描写の数々で笑わせる。映画づくりに全てを注ぎながら自分の手柄になっていないという積年の思いを本作にぶつけ、ここまでのものにしたのだから、天晴れと言う他はない。

  • 映画評論家

    きさらぎ尚

    邦題から想像して、主人公は福の神に愛されて多幸な人生を送っているかと思いきや、思わぬことから失業の身となった女性だった。好きな仕事に打ち込んでそこそこキャリアを積み、人生の重要なアラフォーという時期の試練を、自虐も含めて飄々と生きるキャラが爽やか。演じるカン・マルグムのいかにもナチュラル風な感情表現にも共感する。ユン・ヨジョンの大家さんはチャーミング。キム・ヨンミンの幽霊はご愛敬。韓国映画界に次々と登場する元気のよい女性監督から目が離せない。

  • 映画監督、脚本家

    城定秀夫

    ホン・サンスのプロデューサーとして知られるキム・チョヒのデビュー作とのことだが、主人公の職業を映画監督にしがちなホン・サンスに対し本作の主人公は映画プロデューサーというのには苦笑が漏れるし、やたらディープフォーカスな画作りなど類似点は多く見られるものの、変なズームとかはしないし、イマジナリーフレンド(幽霊?)の似てないレスリー・チャンなどというふざけた要素をシームレスで日常に混ぜ込む手捌きは見事で、個人的にはホン・サンスよりも楽しくて好きだ。

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