ミッドナイト・ファミリーの映画専門家レビュー一覧

ミッドナイト・ファミリー

メキシコの民間救急救命事業に迫るドキュメンタリー。公共の救急車不足を背景に救急車ビジネスを営むものの、汚職警官に闇営業を取り締まる名目で賄賂を要求され追い詰められていくオチョア家族を通し、メキシコの医療事情や行政機能の停滞を浮き彫りにする。監督は、Netflix『ラスト・チャンス』シリーズに参加しているルーク・ローレンツェン。サンダンス映画祭2019米国ドキュメンタリー・コンペティション部門撮影賞受賞。2020年1月、46分の短縮版がNHK BS1にて放映された(タイトル『真夜中の家族 ~密着 メキシコ民間救急車~』)。
  • 映画評論家

    小野寺系

    一家が自前の救急車で“もぐり”の救急活動を営んでいるという、ドキュメンタリーとは到底思えない取材対象に度肝を抜かれた。家族一人ひとりのキャラクターが立っていて、TVアニメ「マッハGoGoGo」そっくりだ。優秀でたのもしく大人びている息子たちが、闇事業に従事していたり振り回されていることは社会的な損失に思えるが、同時にこの稼業が“自己責任社会”のなかで必要悪とされていることがよく分かる内容になっていて、観る者に複雑な現状をまるごとぶつけてくる。

  • 映画評論家

    きさらぎ尚

    終始、驚きに満ちたドキュメンタリーである。公的な救急車の数の少なさに驚かされるが、してみると主人公一家のような私営救急隊稼業の存在は必然だろう。加えて業者間の競争、要請者から日銭を得る、業者に違反切符を切り賄賂を要求する警官、利用者。もちろん主人公一家の事情も。等々、夜の救急車の舞台裏を追うことで、行政や医療や市民生活が抱える問題が浮き彫りになる。さながら快調に展開するハリウッドの劇映画を見ているようだが、記録映画ということがそれ以上に驚く。

  • 映画監督、脚本家

    城定秀夫

    深刻な公営救急車不足のメキシコシティで闇救急車で生計を立てる家族、という元素材から映画的であるうえに、ドキュメンタリーとは思えない的確なフレーミングやカッティング、公道で繰り広げられるカーチェイスの迫力など、劇映画さながらに完成度の高い画面設計には驚かされるばかりで、ナレーションを排して、警察や政治、時に利用者を口汚く罵りながら金のために人助けを行っている彼らの背中から清濁あわせ呑んだ人間の善の本質を炙り出さんとするドライな眼差しにもシビれた。

1 - 3件表示/全3件

今日は映画何の日?

注目記事