1秒先の彼女の映画専門家レビュー一覧

1秒先の彼女

台湾のアカデミー賞=金馬奨で5部門を受賞したファンタジックなラブストーリー。何をするにもワンテンポ早いアラサー女子のシャオチーは、バレンタインにデートの約束をしたものの、目覚めるとなぜかその翌日に。約束の1日が消えた理由を探り始めるが……。出演はNetflix「同級生マイナス」のリウ・グァンティン。監督は「熱帯魚」「ラブ ゴーゴー」のチェン・ユーシュン。
  • 映画評論家

    小野寺系

    時間が止まるという奇跡が訪れる描写が見せ場となっているが、この現象が起こったと思ったら、いの一番に意中の女性のところに駆けつけ、動かない女性を連れ回す、ある意味変態的な主人公の男性を純粋で誠実な人物として爽やかに演出しているのが、どうにも納得できない。自分に合ったパートナーとなかなか出会えないという、多くの人々が共有する課題から始まる作品だが、その結論として、おとぎ話みたいな無根拠な理屈を持ってくるのも無責任。全体に精神的な幼さを感じる一作。

  • 映画評論家

    きさらぎ尚

    人よりワンテンポ早い女とワンテンポ遅い男のファンタジックなコメディの魅力は、時間の操作。ユニークなアイディアに加え、それぞれの視点に切り分けて、早いか遅いかによる時間の損得がもたらす人生の変容を、「アメリ」を連想させるタッチで描いている。早い女にあるはずの時間(バレンタインデー)は消え、片や遅い男は時間の影響は受けずわきまえた大人の行動様式が欠落。周辺人物の個性も楽しく、海岸線などの風景の美しさもあり、コロナでなければロケ地巡りをしたいくらい。

  • 映画監督、脚本家

    城定秀夫

    時間は平等に流れるとは限らないというアインシュタイン的発想を軸にした発明ともいえる幾多のアイディアを見事なストーリー構成でまとめ上げ、高度な映像表現を惜しげもなく盛り込んでいる極めて技術力の高い映画なのだが、それをひけらかすことなく、ともすれば垢抜けない印象すら与えるベタベタなユーモアで味付けして、間口の広い大衆娯楽映画に仕上げるチェン・ユーシュン監督の作風はデビュー作「熱帯魚」から一貫しており、真に優れた映画とはこういうものなのかもしれない。

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