モーリタニアン 黒塗りの記録の映画専門家レビュー一覧

モーリタニアン 黒塗りの記録

9.11同時多発テロの首謀者の一人として、キューバのグアンタナモ米軍基地に裁判もないまま何年も拘禁された男モハメドゥが、弁護士と共にアメリカを訴えた実話を映画化。激しい法廷対決で明らかになる驚愕の真実とは……アメリカの深い闇をえぐり出す問題作。原作者のモハメドゥ・ウルド・サラヒが獄中で書いた手記は2015年、アメリカ政府による検閲で多くが黒く塗りつぶされたまま出版されたが、20カ国で翻訳されるベスト・セラーとなった。その本を読んだベネィクト・カンバーバッチがすぐに映画化権を獲得、出演とプロデューサーとしても名を連ねる。監督は「ブラック・セプテンバー/五輪テロの真実」でアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞受賞のケヴィン・マクドナルド。モハメドゥ役を黒沢清の「ダゲレオタイプの女」のタハール・ラヒム、モハメドゥを助ける実在の弁護士ナンシーをジョディ・フォスターが演じている。
  • 映画監督/脚本家

    いまおかしんじ

    拷問のシーンが凄まじい。あんなの絶対おかしくなっちゃうよと思った。彼は耐え続けた。よく生きていたと思う。どんなときもユーモアを忘れない彼のキャラクターがいい。実話ベースだからなのか、派手な展開はない。検察も弁護する側も、地道な努力を繰り返す。山と積まれた黒塗りの資料を読む徒労感が伝わってくる。権力を持っている側が、いかにひどいことをやりかねないか。見ていて怖くなった。彼を弁護するジョディ・フォスターがかっこ良くて、シビれた。さすがです。

  • 文筆家/女優

    睡蓮みどり

    不当な拷問により自白させられた事実、黒塗りにされた書類の山。9・11により一層、恐怖と憎しみが蔓延していくなか、疑いだけで長い間拘束されていた男の手記が原作となっている。日本での黒塗り文書のことも頭をよぎりつつ、原作の手記を映画化したいと望んだカンバーバッチの心意気に思わず拍手。人権弁護士ナンシー・ホランダーを演じたジョディ・フォスターのクールで知性溢れるまなざしと色気にも惚れ惚れする。暴力はいかなる未来も作らない。非常に見応えがあった。

  • 映画批評家、東京都立大助教

    須藤健太郎

    ジョディ・フォスターかっこよすぎと思いつつ、映画としては厄介な代物。最後の本人登場がなければ、まったく別の映画として見れたが、ラストに本人映像を流す実話ものはすでに一つのフォーマット。それを踏襲するだけでは芸がない。「15時17分、パリ行き」(18)で、もう本人たちに演じてもらおうっていうのをイーストウッドがやっているのでなおさらだ。テーマ的にいっても、イーストウッドとの対決は不可避だったと思う。制作陣からすれば、知るかって話なんだろうけど。

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