走れロムの映画専門家レビュー一覧

走れロム

第24回釜山国際映画祭ニューカレンツ部門最優秀作品賞受賞ほか多くの映画祭で注目されたベトナム映画。サイゴンの路地裏にある古い集合住宅。違法宝くじの予想屋として生計を立てている孤児のロムは、立ち退きを迫られた住民たちのため、危険な賭けに出る。プロデューサーは、「青いパパイヤの香り」のトラン・アン・ユン。監督は、新鋭チャン・タン・フイ。第16回大阪アジアン映画祭特別招待作品。
  • 非建築家、美術家、映画評論、ドラァグクイーン、アーティスト

    ヴィヴィアン佐藤

    血湧き肉躍る。ほとばしる汗、息、鼓動、熱量。美しすぎる絵作り。キップ・ハンラハンばりのザラついた音。違法くじや母親探し、貧困社会。そんな話題は糞食らえ。コード化されないメッセージ。意味の過剰。鋭い陰影。鈍い記号。たしかに「数字」に取り憑かれた人間たちの物語ではあるが、それは記号ではなく、あまりにも強すぎる生きる力が形象化された神の姿そのものだ。「時は止まらない」。ロムも映画も私たちも待ったなしの一回きりの本番の人生を疾走しているだけなのだ。

  • フリーライター

    藤木TDC

    ヴェトナム都市部の庶民に根づくノミ屋産業「闇くじ」の風俗的珍奇と、スラム暮らしの人々や孤児の厳しい生きざまを交錯させたスピード感ある力作。若い監督は構図や編集に才気が漲り、街頭での生々しいロケも刺激的。「くじ」の必勝理論にもっと踏み込み、当たりハズレが脇役各々の人生に深く突き刺さる様を脚本化できればギャンブル映画としてさらに良かったと感じるのは私が阿佐田哲也や寺内大吉を読みすぎのせいかもしれないけれど、監督に彼らの小説を読ませたかった気も。

  • 映画評論家

    真魚八重子

    サイゴンの裏町の喧噪とバイタリティが切り取られ、少年の日常がスピード感あふれる演出で展開していく。不安定な日々を表す表現として、カメラが傾いでいるだけなのは安易でびっくりするが、RPGゲームのように立て込んだ集合住宅地のダンジョンを駆け抜けていく縦横無尽さは生き生きとしている。貧困から危うい仕事に携わる子どもの映画はたくさんあり、本作はそこから頭抜けているわけではない。しかし二人の少年の友情と敵対の成り行きは、珍しい衝動的なドラマとなっている。

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