キャンディマン(2021)の映画専門家レビュー一覧

キャンディマン(2021)

「ゲット・アウト」のジョーダン・ピールが製作・脚本を務め、1992年の同名ホラーをリメイク。ヴィジュアルアーティストのアンソニーは、鏡に向かって5回“キャンディマン”と唱えると、殺人鬼に体を切り裂かれるという都市伝説の謎を追求するが……。出演は「アクアマン」のヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世、「ビール・ストリートの恋人たち」のテヨナ・パリス。監督は「ヘヴィ・ドライヴ」のニア・ダコスタ。「ヘル・レイザー」シリーズの原作者クライヴ・バーカーが“キャラクター創造”としてクレジットされている。
  • 映画評論家

    上島春彦

    不勉強でオリジナル版を知らなかったが、そちらの主演ヴァージニア・マドセンはニュース画面に登場。シカゴは現代建築の聖地みたいな場所だが、ここではかつての現代建築と最先端の現代建築が同居する空間を現出させている。サミー・デイヴィスの歌で有名な「キャンディマン」。しかしこの映画のインテリ黒人たちはアート・アンサンブル・オブ・シカゴっぽいフリージャズを楽しんでいて、可笑しい。彼らが、しかし黒人リンチの記憶を地域に呼び起こしてしまう趣向が残酷だ。

  • 映画執筆家

    児玉美月

    洗練されたスタイリッシュな演出を基調に、突然爆音で脅かすようなオリジナル版の古典的な演出も取り込んでいるようであり、前作への敬意が垣間見える。個人の物語と集団の物語を往還しながら、抽象性と具体性が溶け合う巧妙な寓話。前作の記憶が前提とされているのも、「歴史を学べ」という教訓を持つ作品にあって必然か。黒人同士でないのは留保が必要だとしても、ゲイカップルの描写はこれまでのホラー映画におけるクィアなキャラクターへの意識的な目配せがあるのだろう。

  • 映画監督

    宮崎大祐

    鏡を覗きこんでその名を唱えると魔物があらわれるという世界のどこにでも存在する都市伝説をシカゴに実在するアフリカ系住民向けの集合住宅を舞台にして語り直すことでその地に眠る黒人奴隷の悲劇と現在のアフリカン・アメリカンの社会的地位の変化を接続させようという発想は実に面白い。このツカミだけでも2021年に見る価値がある。ただし、恐怖演出の肝となるカットが撮れていないため、なんとなく怖い雰囲気がつづく社会学の論文を読んでいるような気分になるのも事実だ。

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