天才ヴァイオリニストと消えた旋律の映画専門家レビュー一覧

天才ヴァイオリニストと消えた旋律

ティム・ロス&クライヴ・オーウェン競演、クラシックの名曲と世界をめぐる音楽ミステリー。将来を嘱望されていた天才ヴァイオリニストは、なぜ晴れ舞台の当日に姿を消したのか。ロンドン、ワルシャワ、ニューヨーク……その旋律に導かれ、35年前の真実を探す旅が始まる。監督は「レッド・バイオリン」「シルク」「ボーイ・ソプラノ ただひとつの歌声」などの音楽映画の名手フランソワ・ジラール。ハワード・ショアによる音楽とともに、激動の時代に兄弟のように育った二人がたどる旅路を、ブルッフ、バッハ、ベートーヴェン、パガニーニなどクラシックの名曲が彩る。また、21世紀を代表するヴァイオリニスト、レイ・チェンが本作のヴァイオリン演奏を務めている。
  • 映画監督/脚本家

    いまおかしんじ

    主人公が再会した友人を思い切り殴りつけるシーンに驚いた。探す動機が怒りだったと、ここで知る。勝手に消えた友人を35年も探し続ける男。男と男の友情は、恋愛に似ている。少年の頃に出会った天才と仲良くなりつつ嫉妬もあるって感じがよく出ている。まさに恋愛。奇行に付き合わされ、文句を言いながら、それでも楽しくなってくるあの感じ。ヴァイオリンの演奏が、天才っていうだけあってすごいと思った。少年の彼、本物のヴァイオリニストだったのね。納得。

  • 文筆家/女優

    睡蓮みどり

    ヴァイオリンの音が身体の中に入り込んでくるような不思議な感覚に陥った。その音はただ美しいだけではなく、重くのしかかる苦しみも伴っている。コンサートの日に失踪した天才ヴァイオリニスト・ドルヴィルと彼を探すマーティンの物語は、謎解きのミステリーとしての面白さもある一方で、一筋縄ではいかない家族への愛情と友愛の物語なのだと受け取った。この、なんとも表現しがたい感情をどう映像で見せるか。緊張感溢れる挑戦的な作品だ。音と映像のバランスで魅了してくる。

  • 映画批評家、東京都立大助教

    須藤健太郎

    トレブリンカで死んだ者たちを忘れないように、みなで名前を口ずさみ続けて生まれたという“名前たちの歌”というアイデアがあまりに強烈であり、この映画も結局はそこに尽きる。ただ、これは他の映画を見ていてもたまに思うことだが、他にクライマックスの作り方はないものか。最後のコンサートの場面で、シナゴーグで初めて聴いた〈名前たちの歌〉から病棟やトレブリンカでの演奏までが映像で順に挿入される。これだと、「あー、はいはい」ってなるだけではないかな、と。

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