神々の山嶺の映画専門家レビュー一覧
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映画監督/脚本家
いまおかしんじ
登山家なんてみんな変人に決まってる。わざわざ死ぬかもしれないことを意地を張って貫く。アホだけど、冒険ってそれほど人を惹きつけるものなのだろう。慕ってくる若者が、案の定、事故にあって死んでしまう。ほらもう言わんこっちゃない。予想はしていたが痛々しかった。死んでもいいから山に登りたいっていう狂ったやつらの、だからこその連帯にグッとくる。頑なでストイック。実は心優しい。登山家のキャラってみんなこうなのか。もっと変なやつがいても良かった。
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文筆家/女優
唾蓮みどり
山登りについて何の知識がなくとも、いかに登山が過酷なものであるかが伝わってきて何度も息を飲みながら釘付けになっていた。「アルピニスト」がドキュメンタリーであったのに対しアニメーションである本作は、緊張感がありながらも、映像の中で人が死なないという安心感によって集中して見ることができたように思う。フィクションだからこそ織りなすことのできるリアリティだ。シンプルながらも、こと細かに書き込まれた背景からは匂いすら立ちこめていた。
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映画批評家、東京都立大助教
須藤健太郎
写真家の深町は、山を被写体にしようと崇高な自然美には関心がない。彼にとって写真とはあくまで証拠であり、「マロリーのカメラ」にこだわるのはそれゆえである。一方、登山家の羽生はそんなマロリーのカメラを「どうでもいいこと」だと吐き捨てる。写真には大事なことは何も写らないからだ。この作品は「グラン・ブルー」(88)の深海を山頂に転じたもので、通俗的な自殺の審美化にすぎない。そのうえイメージの不可能性に居直る点では「グラン・ブルー」以上に反動的である。
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