アシスタントの映画専門家レビュー一覧

アシスタント

映画業界の闇を暴く、#MeToo運動を題材にしたリアル・タイム・スリラー。映画プロデューサーを目指して大手の映画会社で働き始めた新人アシスタントの一日の物語を通して、さまざまな職場が抱えるハラスメントや搾取の構造、女性蔑視や抑圧、ヒエラルキー最下層の人々の葛藤を浮き彫りにする。「ジョンベネ殺害事件の謎」で知られるドキュメンタリー映画作家のキティ・グリーンが監督。24時間まるで透明な存在のようにさまざまな暴力の矛先になり、ある決断を下す主人公ジェーンを演じたのは、Netflixのドラマ『オザークへようこそ』で三度にわたるエミー賞助演女優賞に輝いたジュリア・ガーナー。サンダンス国際映画祭、ベルリン国際映画祭にて上映。
  • 映画評論家

    上島春彦

    監督が取材、見聞した企業内ハラスメントの数々が脚本に活かされている。エンディング・クレジットにそれが分かる。主人公が勇気をもってその事例を社内の然るべき部署に告発するもあっさりもみ消され、しかもオフィスに戻ると同僚、上司、問題の加害者である会長にまでその件が筒抜けになっている。電話で素早く連絡が回ったわけだ。これは怖いよ。実話ならではの細部。画面自体は劇的なドラマをあえて志向せず、コピー取りばかり描かれるも、これまた生々しい。地味な秀作でお薦め品。

  • 映画執筆家

    児玉美月

    今年初めに公開された「SHE SAID/シー・セッド その名を暴け」でもハーヴェイ・ワインスタインははっきりとその姿を現していないが、ここでも彼をモデルにしたような男性上司は声のみ。「プロミシング・ヤング・ウーマン」「69歳」「ウーマン・トーキング 私たちの選択」など、女性作家による近年の性暴力を描く映画は直接的な描写を避けているが、いずれも「見せない」演出が奏功した。本作はヒロイックなカタルシスよりも、システムへの透徹したまなざしによって成り立つ。

  • 映画監督

    宮崎大祐

    性加害問題で話題となった映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインのアシスタントをつとめていた女性の体験を着想源にしているという本作はそのスキャンダラス性をつかみとしながらも極めて静謐な作品である。シャンタル・アケルマン直系とも言えるような奇妙なフレーミングや移動撮影でとらえられたシングル・ショットの反復と引き算からなるサウンド・デザインによって主人公の孤独は次第に浮き彫りにされていき、いつの間にかわれわれを映画ならではの場所へと導く。

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