ヒッチコックの映画術の映画専門家レビュー一覧

ヒッチコックの映画術

“サスペンス映画の神様”アルフレッド・ヒッチコック「本人」が自身の監督作の裏側を語るスタイルで、その面白さの秘密を解き明かしていくドキュメンタリー。膨大なフィルモグラフィと過去の貴重な発言を再考察し、遊び心と驚きに満ちたその演出魔法の世界に迫る。監督は「ストーリー・オブ・フィルム 111の映画旅行」のマーク・カズンズ。
  • 映画監督

    清原惟

    ヒッチコック自身によるナレーションという設定(実際は監督が書いて俳優が読んでいる)で進んでいく、異色のドキュメンタリー作品。テーマごとに分類し、いくつもの作品の切り抜きを並べて語る方法は、ヒッチコック映画の見方を更新してくれる感覚があった。一方で、もう今はいない人の言葉を勝手に想像し語ることは、仕掛けとしては面白くはあるが、若干の違和感も拭えない。ヒッチコックがこんなことを言うのだろうか?と思ってしまうような、作品と言葉の距離感に時々疲労を感じた。

  • 編集者、映画批評家

    高崎俊夫

    痛快無比なヒッチコック映画の魅力を〈逃避〉から〈高さ〉に至る6章に分けて技法と主題の両面から解析しようとする野心作だが意外性に乏しい。名著『映画術 ヒッチコック/トリュフォー』ほかを熟読したこちらがすれっからしになっているせいか。たとえば〈欲望〉ならもっと相応しい作品があるはずと半畳を入れたくなる。ただ引用される無声時代の作品は豊潤な鉱脈で、「リング」にはジャン・ルノワールの「ピクニック」の祖型のような官能的なブランコのシーンがあり、深く動揺してしまった。

  • 映画批評・編集

    渡部幻

    マーク・カズンズを知ったのは壮大な映画史シリーズ「ストーリー・オブ・フィルム」で、世界の映画史を個人的な観点から横断する長大な作業に目の回る想いがした。新作も平均的なドキュメンタリーではない。ここでの企ては、今は亡き20世紀最大の監督の一人、ヒッチコックを蘇らせて、「デジタルの洗練時代」を生きる観客に「本物の洗練とは何か」を問いかけさせること。トリッキーな構成で、絵画的でも写真的でもない映画的な美を追求した天才の「ピュアシネマ」をひもとき、再考を促すのだ。

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