ティルの映画専門家レビュー一覧

ティル

アフリカ系アメリカ人の公民権運動を前進させるきっかけとなった1955年のエメット・ティル殺害事件を初めて劇映画化し、各国の映画祭を席巻した伝記ドラマ。一人息子エメットを白人に壮絶なリンチの末に殺害された母メイミーは、ある大胆な行動を起こす。出演は、「ザ・ハーダー・ゼイ・フォール 報復の荒野」のダニエル・デッドワイラー、「天使にラブ・ソングを…」のウーピー・ゴールドバーグ、ドラマ『ブルーザー』のジェイリン・ホール。ウーピー・ゴールドバーグは製作にも参加。
  • 文筆業

    奈々村久生

    本篇が始まって間もなく、監督は女性に違いないという予感があった。それは一人息子を人種差別の激しい土地へ送り出す母親の複雑な胸中を、鏡に向かってイヤリングをつける彼女の上半身で見せたカット。そして終盤、すべてを終えて家に帰った彼女の一人の時間を写したシークエンスで、予感は確信に変わる。演出や画面構成のきめ細やかさも別次元。本格的な商業劇映画としてはこれがほぼ初監督となるチノヤ・チュク監督、近い将来ハリウッドのメインストリームの一角を担う存在になるはずだ。

  • アダルトビデオ監督

    二村ヒトシ

    あらすじや背景をまったく知らずに観て、あ、こりゃこれから最悪のことがおきるぞと確信させるフラグが冒頭から立ちまくり、べそをかきそうになりながら気を動転させながら観た。非黒人である僕にとってもまったく他人事ではなく、こういうこと書くと怒られるかもしれないが「空気が読めない人とは、どういう人なのか」「空気が読めない人が立場が弱いと、それを理由に本当に殺されることが現代でもある。こっちが空気が読めない人をヘイトしちゃう可能性もある」などと、いろいろ考えさせられた。

  • 映画評論家

    真魚八重子

    映画は演出で見せるので、14歳の黒人少年の無邪気な振る舞いに対し、白人の男どもが憤激して殺害するまで暴行を加えたことを、いかようにも描けたはずだ。しかしそんなおぞましい出来事が、本作では観客の想像に委ねられており、脆弱になってしまっている。この映画は母が棺の中の、息子の変わり果てた姿を人々に見せた実話に基づくはずなのに、役者が号泣し、人々を説得しようとする部分に焦点が置かれる。その演出が残念ながら力みすぎており、カメラワークも単調で間延びしてしまっている。

1 - 3件表示/全3件