枯れ葉の映画専門家レビュー一覧

枯れ葉

カンヌ国際映画祭審査員賞に輝いたアキ・カウリスマキのラブストーリー。北欧の街ヘルシンキ。理不尽な理由で仕事を失ったアンサと、酒に溺れながらも工事現場で働くホラッパはある夜、カラオケバーで出会い、互いの名も知らぬまま、惹かれ合うが……。出演は「TOVE/トーベ」のアルマ・ポウスティ、「アンノウン・ソルジャー 英雄なき戦場」のユッシ・ヴァタネン。
  • 翻訳者、映画批評

    篠儀直子

    ケータイもネットもあるけどほとんど使われず、テレビすら誰も見ておらず、年代物のラジオからウクライナ侵攻のニュースが流れつづける。まるで時空がねじれたかのようだが、ここには第二次世界大戦時のフィンランド国内の雰囲気(特に対ソ感情)が重ねられているのかも。いつにもまして強いシネフィル風味は、(映画)愛だけが暴力に対抗しうると言っているかのようでもあり、単なる趣味の爆発のようでもあり。チャイコフスキーの6番と、雨の窓辺のヒロインのショットに陶然とする。

  • 編集者/東北芸術工科大学教授

    菅付雅信

    アキ・カウリスマキ監督6年ぶりの新作。ヘルシンキの街で仕事を失った女と酒に溺れる男が出会い、惹かれ合うが物事はうまく進まない。ラジオはウクライナ戦争のニュースを絶え間なく流し、女も男も工場や建設現場の過酷な仕事を日々の糧にする。そのような天国とは遠い場所に身を置きながら、いかにロマンを持ち続けるか。カウリスマキはますます洗練されたユーモアとメロウネスを持って、辺境の街から普遍的ロマンスを描き続ける。精緻な色彩設計による映像美も特筆すべき。

  • 俳優、映画監督、プロデューサー

    杉野希妃

    ウクライナ侵攻のラジオをBGMに繰り広げられる、不器用な中年男女のすれ違いと再会。依然として、カウリスマキの無駄を削ぎ落とした演出が研ぎ澄まされており、極めてシンプルな物語を崇高な次元へと昇華させている。日常のささやかな幸せを大切に紡いでゆけば、戦争なんてなくせるかもしれないと本気で思えてくる、祈りのような作品だった。思いやりとユーモアに満ちたラストシーンを思い返すたびに胸が熱くなる。カウリスマキの透徹したまなざしによって生み出された、珠玉の一作。

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