ショーイング・アップの映画専門家レビュー一覧
ショーイング・アップ
「ウェンディ&ルーシー」などで組んできたケリー・ライカート監督とミシェル・ウィリアムズの4度目のタッグとなる人間ドラマ。美術学校に勤める傍ら間近に控えた個展に向け準備を進める彫刻家のリジーだったが、作品の制作に集中したいのにままならず……。共演は、「ザ・ホエール」のホン・チャウ、「フェイブルマンズ」のジャド・ハーシュ、アンドレ・3000名義でミュージシャンとしても活動するアンドレ・ベンジャミンほか。2022年第75回カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品。アメリカの制作・配給会社A24の作品を集めた特集『A24の知られざる映画たち presented by U-NEXT』にて上映。
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文筆業
奈々村久生
米インディーズ映画の至宝とも言われるライカートの最新作は、ミューズとも言うべきミシェル・ウィリアムズの仏頂面がトレードマークの、ミニマムでオフビートな世界。名もない人物のごく限られた日常にフォーカスすることで世相を映すジャンルは確かに存在するが、誰でも個人的な動画を発信できるようになった今、映画としてはいささか古典的な手法であるともいえる。そしてストイックでパーソナルな作風は退屈と表裏一体。胸躍るような映像体験とは対極にあることが存在意義となり得ている。
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アダルトビデオ監督
二村ヒトシ
僕はアートのことを何も知らないが、有名な芸術家のインタビューや作品を撮影したドキュメントを観るよりもアートに近寄れた気がする。役者が皆いい。アートは不完全な人間が創造してること(それが脚本のテーマなんだろう)が肌でわかった。何がA24っぽさなのかもよく知らないが、アート作品も登場人物も事態もとにかく不気味で、ずっと怖くて不安だった。物語では絶対に感動させないぞという監督の強くて清洌な意志が輝いてて、でも、しっかりした物語があり、すばらしい映画だった。
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映画評論家
真魚八重子
ライカートは厳しい目線で人間を見据えた作品も撮るが、本作は明るく健やかな雰囲気に満ちている。主人公のリジーは彫刻家で、オープニングのカラフルな素描を貼った壁を写していくシーンから楽しい。リジーは間近に迫った展覧会の準備が進まず、厄介な用事を頼まれてばかりで苛々するというシンプルな物語だ。舞台となる美術学校は自由で風通しが良く、端々に写る実際のアーティストの作品も魅力的である。ライカートは自身で編集もしており、ドアの下に現れる猫の手のカットに惚れてしまった。
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