ゴッドランド GODLAND(2022)の映画専門家レビュー一覧

ゴッドランド GODLAND(2022)

第96回米アカデミー賞国際長編映画賞アイスランド代表となり、ショートリストにも選出された人間ドラマ。19世紀後半。若きデンマーク人牧師ルーカスは、植民地アイスランドの辺境まで布教の旅に出るが、その前には想像を絶する過酷な道のりが待っていた。出演は「ウィンター・ブラザーズ」のエリオット・クロセット・ホーヴ。
  • 映画監督

    清原惟

    ふしぎな夢を見ているような感覚だった。寒い土地の話だけれども、画面の隅々までいつも光があたっているような、独特の色彩がうつくしい。厳密に計算して撮影されたフレーミング、芝居だと思うが、にもかかわらず人々の生活はまるで目の前で本当に繰り広げられているような説得力がある。傍観するようなカメラも、けっして突き放すわけでもなく寄り添うわけでもなく、この土地の匂いや湿度、そして時間そのものを捉えようとしているように感じ圧倒された。犬がとにかくかわいかった!

  • 編集者、映画批評家

    高崎俊夫

    デンマーク人の若い牧師ルーカスがかつての植民地アイスランドの辺境の村へ教会を建てる命を受け、旅立つ前半は過酷な自然に脅かされる受難篇。後半は村の教会が完成するまでの牧歌的かつ不穏な日々が描かれる。ダゲレオタイプに想を得た村人たちの肖像写真が印象深いが、腐蝕する事物たちの定点観測は実験映画的だ。とりわけ二人の姉妹が室内で佇むシーンはその陰影の深さにおいてカール・ドライヤーに影響を与えた画家ヴィルヘルム・ハマスホイの人物画を想起させるすばらしさである。

  • 映画批評・編集

    渡部幻

    19世紀末、デンマーク統治下のアイスランドに派遣された若い牧師。教会を建て、布教するためだが、彼の理想と支配者側の傲慢さは厳しい自然に囲まれた現実の生活に押し潰されていく。旅を描いた前半部の目の眩むロケーション撮影と流れるような映像の絵画は、ヘルツォークを彷彿とさせるほど壮大で、同時にライカートやフォードの西部開拓劇、「ミッション」「沈黙」を思い出したが、神々を知覚させる自然環境の描写は、アイスランドの山々が人の営みを見下ろす「LAMB/ラム」をむしろ連想してもいた。

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