薄氷の告発の映画専門家レビュー一覧
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文筆業
奈々村久生
スポーツ界における師弟関係を利用した性加害が次々と明るみに出てくる中、そこに切り込んだ制作の心意気は買う。が、これは現在進行形で取り組まなければならない切実な問題であり、社会的な制裁が被害者個人の魂を救うとは限らない。それに対してこの脚本や演出はあまりにも事態を単純化しすぎており、被害者と加害者の人物造形や演出も、複雑な現実に対応するきめ細やかさを携えているとは言い難い。性犯罪がいかに一人の人間を破壊するのか、ラストはせめてもの誠意として受けとめたい。
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アダルトビデオ監督
二村ヒトシ
現実の事件についてこういう話をすると「加害者を甘やかすな」と批判されることがあるのでこの映画についての話としてするけど、むろん第一に必要なのが被害者の心のケアであるのは当然として、同じくらい重要なのが加害側の心の治療だ。この映画の犯人はパワハラと性的暴行をしないでは生きてる実感がわかない〈死んだ魂〉の持ち主なので服役しながらカウンセリングを受ける義務があるし、この映画に登場する加害側の人間全員にも、あなたはじつは心の病気なのだと教えるべきだと思う。
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映画評論家
真魚八重子
韓国スケーター界の、パワハラ、セクハラと脅迫の犯罪行為を取り扱った映画で、最悪の結果を想定したストーリーである。被害の経験者が、これから被害に遭うかもしれない状況の女性に対して、自分の過去を口にできず、茫漠とした説明しかできないのもわかる。そういった口が重くなる羞恥や苦痛も含めての加害行為なのだ。被害を立証する難しさや、加害者側が有利に立ち回りやすい案件であることも本作は証明する。日本の映画業界も同様の最悪の結果が続き、非常に腹立たしい。
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