ミセス・クルナス vs. ジョージ・W・ブッシュの映画専門家レビュー一覧

ミセス・クルナス vs. ジョージ・W・ブッシュ

第72回ベルリン国際映画祭で主演俳優賞・脚本賞を受賞した実話に基づく物語。ドイツのトルコ移民ラビエは、長男ムラートが旅先でタリバンの嫌疑をかけられ、収監されたとことを知る。人権派弁護士の助言を受けた彼女は、米国で大統領を相手に訴訟を起こす。監督は、「グンダーマン 優しき裏切り者の歌」のアンドレアス・ドレーゼン。出演は、ドイツの人気コメディアンでドイツ映画初出演のメルテム・カプタン、「ソニア ナチスの女スパイ」のアレクサンダー・シェアー。
  • 文筆業

    奈々村久生

    いつ帰ってくるのか、帰ってこられるのかどうかもわからない不在の長男を待つ拠り所のなさを、メルテム・カプタンの演じる肝っ玉母さんの強烈なキャラクターで強引に押し切る。その原動力が無条件の母性というものにフルベットしていて、劇中の訴訟でもそれを最大の武器として民意に訴えているのがしんどい。彼女にはラビエというファーストネームがあるのだが、邦題では「ミセス」と改訳されているのも、人間であることより母であることが存在意義のすべてとされているようでつらい。

  • アダルトビデオ監督

    二村ヒトシ

    息子が突然いなくなった母。息子は自分の意志で帰ってこないのではなく、遠い外国で幽閉されてしまったのだ。しかもドイツの友好国であるはずのアメリカの兵隊から拷問をされている。ほんとうにひどいことが世界中でおきている(こういう外国映画を観て「日本はまだマシ」とは言いたくない)。だけどこっちに元気があるうちはジタバタはしてみるものです。がんばるおっ母さんとマジメな弁護士のユーモラスな凸凹コンビの姿を見ているだけで、笑うべきところじゃなくても笑みがこぼれてしまう。

  • 映画評論家

    真魚八重子

    クルナス夫人のように陽気でふくよかで、華やかな女性はいる。政治にうとくても収監された息子の解放のため、奔走するイメージそのものの外貌だ。その明るさと経過する日数の乖離が恐ろしい。役所の書類はなぜか読みづらい文章で書かれていて、意味を解するのが難しいのはどこも同じか。それがさらに複数の言語にわたってしまうと、絶望的な気持ちになる。本作も人権派弁護士のおかげで理解できるが、被監禁者がどういう理由で、なぜたらい回しにされるのか、根本的なところが知りたい。

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