塩田明彦 シオタアキヒコ

  • 出身地:京都府舞鶴市
  • 生年月日:1961/09/11

略歴 / Brief history

【ヒットメーカーの座に安住せず走り続ける逸材】京都府舞鶴市の生まれ。立教大学在学中より自主映画活動を始め、1982年の「優しい娘」が、PFFに準入選、83年の「ファララ」で入選を果たす。大学卒業後、高橋洋らと同人誌『映画王』を発刊し、映画評論などを執筆。その取材を機に知り合った大和屋竺のもとで脚本を学び、91年に脚本家として独立。山口貴義監督の「恋のたそがれ」(93)、「ヤマトナデシコ」(96)では撮影・照明を手がけ、96年にOV『露出狂の女』を監督して、一部から注目されていた。99年、劇場映画デビュー作となる「月光の囁き」が、ゆうばり国際冒険ファンタスティック映画祭の審査員特別賞と南俊子賞をW受賞。同年公開の「どこまでもいこう」もナント三大陸映画祭審査員特別賞を獲得し、期待の新鋭として一躍脚光を浴びる。デジタルビデオ作品『ラブシネマ』シリーズ第5弾「ギプス」(00)に続き、テレビドラマ『あした吹く風』(01)でATP賞の優秀作品賞ならびに総理大臣特別賞を受賞。2002年の「害虫」ではナント三大陸映画祭のコンペティション部門審査員特別賞、宮崎あおいに主演女優賞をもたらした。そして03年、初のメジャー作品「黄泉がえり」を手がける。愛する人の祈りにより死者が3週間だけよみがえるという内容にちなみ、当初は3週間限定の上映予定だったが、泣けるファンタジーとの評判でロングランとなり、興収30億円を超える大ヒットを記録する。05年、地下鉄サリン事件の衝撃にインスパイアされた力作「カナリア」を発表。同年、「黄泉がえり」に続く梶尾真治の原作を映画化した「この胸いっぱいの愛を」も公開され、07年には手塚治虫の人気漫画を映画化したアクション大作「どろろ」でスマッシュヒットを飛ばして、予算の大小に関わらず結果を出す手腕を発揮した。【一貫して流れるリアルな人間観】黒沢清、万田邦敏、青山真治ら、数多くの映画人を輩出し“立教ヌーヴェルヴァーグ”とも呼ばれた立教大学の制作集団“パロディアス・ユニティ”の出身であるが、同人作家に比べ、塩田が描く人物像は、よりリアルで生々しい。傍目にはいびつでも絶ち難い絆で結ばれた「月光の囁き」のカップルに象徴されるように、複雑な“さが”を内包した登場人物は、絶望を見据えた末に祈りにも似た希望へと到達する。そんな塩田の人間観は、子供にしか見えない風景が鮮やかに切り取られた「どこまでもいこう」をはじめ、子供を一個人として捉えるフェアな眼差しにも顕著であり、親から見離されても、たくましく生き抜く子供たちが度々登場することも、それを裏付ける。壮絶な旅の先に光を見出す「カナリア」の少年少女や、家族や友人、恋人さえも捨てて、不透明な未来を自らの意志で選ぶ「害虫」の女子中学生、父親にバラバラにされた身体をかき集める過程で、失われた笑顔を取り戻す「どろろ」の百鬼丸も、親の庇護を拒絶し、混沌とした社会へと漕ぎ出していく。「黄泉がえり」以降はヒットメーカーとしての顔も加わり、大作監督との二面化に進むか、その動向が注目されている。

塩田明彦の関連作品 / Related Work

作品情報を見る

  • 春画先生

    制作年: 2023
    「さよならくちびる」の塩田明彦が監督、性風俗を題材にした春画に魅せられた者たちを描くコメディ。春野弓子は変わり者として知られる春画研究者・芳賀一郎から春画鑑賞を教わり彼に恋心を抱くが、彼の亡き妻の姉・一葉や編集者・辻村が現れ波乱が起きる。妻を亡くしますます研究に没頭する春画研究者・芳賀一郎を『きのう何食べた?』の内野聖陽が、芳賀の弟子・春野弓子を「ペンギン・ハイウェイ」で主人公の声を担当した北香那が演じる。全国公開される商業映画作品として日本映画史上初めて浮世絵春画が無修正で登場する。
  • 麻希のいる世界

    制作年: 2022
    元「さくら学院」の新谷ゆづみと日高麻鈴がW主演した青春映画。「さよならくちびる」で二人と出会った塩田明彦が、彼女たちの役名をそのままにオリジナル脚本を執筆、監督を務めた。重い持病を抱えて、ただ生きてきた高校2年生の由希は、美声の同級生・麻希と出会ったことで世界が一変する。男性の噂が絶えず、自己中心的で自滅的な麻希に振り回されても、彼女を強く求める由希。そんな由希に思いを寄せる軽音部の祐介も加わり、激しい不協和音が鳴り響く。劇中歌をナンバーガールの向井秀徳が塩田監督の「害虫」「カナリア」に続いて提供している。
  • さよならくちびる

    制作年: 2019
    「坂道のアポロン」の小松菜奈と「チワワちゃん」の門脇麦が音楽デュオを演じるロードムービー。ハルとレオの音楽デュオ・ハルレオは、ローディ兼マネージャーのシマとともに7都市を回る解散ツアーに出発する。しかし初日からレオが遅刻し、険悪なムードに。監督は、「抱きしめたい 真実の物語」の塩田明彦。出演は、「キセキ あの日のソビト」の成田凌。
    90
  • 風に濡れた女

    制作年: 2016
    ロマンポルノ生誕45周年を記念したロマンポルノ・リブート・プロジェクトの一作。都会の喧噪を避け、過去から逃げるように山小屋で暮す高介。だが、生命力と性欲を持て余し、野性味溢れる魅力を放つ汐里との出会いを契機に、高介は欲望の渦へと巻き込まれてゆく。出演は「甘い鞭」の間宮夕貴、「誘惑は嵐の夜に」の永岡佑。監督・脚本は「黄泉がえり」「どろろ」の塩田明彦。撮影を「貞子vs伽椰子」の四宮秀俊、音楽を「セーラー服と機関銃 卒業」のきだしゅんすけが担当。
    50
  • 昼も夜も

    制作年: 2014
    「カナリア」の塩田明彦監督が、webサイト『ネスレシアター on YouTube』用に制作した中編。『ネスレシアター on YouTube』内にて公開され(2014年4月10日~/現在は公開終了)、同サイトで公開された映像作品を集めた神戸三宮映画祭(上映日:2014年5月30日)や、第16回東京フィルメックス(上映日:2015年11月24日/同時上映「約束」)で上映された。
    90
  • 抱きしめたい 真実の物語

    制作年: 2014
    TVドキュメンタリー『記憶障害の花嫁-最期のほほえみ-』としても紹介された実話を基に「黄泉がえり」の塩田明彦監督が映画化。北海道・網走を舞台に、交通事故で左半身と記憶能力に障害を負った女性とタクシードライバーの男性との恋愛模様を描く。出演は「ルームメイト」の北川景子、「県庁おもてなし課」の錦戸亮、「漫才ギャング」の上地雄輔、「愛と誠」の斎藤工、「二流小説家 シリアリスト」の平山あや、「ナイトピープル」の佐藤江梨子。

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