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1970年代のブラジルにおいて、元国会議員のルーベンス・パイヴァが軍事政権に誘拐された。彼の行方を、妻のエウニセは諦めずに追い続ける──。実際に起きた事件を「セントラルステーション」「モーターサイクル・ダイアリーズ」の名匠ウォルター・サレス監督が映画化し、第81回ヴェネチア国際映画祭最優秀脚本賞と第82回ゴールデングローブ賞主演女優賞を受賞、さらに第97回アカデミー賞で作品賞・主演女優賞・国際長編映画賞の3部門にノミネートされた「アイム・スティル・ヒア」が、8月より公開される。 軍事政権下のブラジルで、元国会議員のルーベンス・パイヴァと妻のエウニセは、5人の子どもとリオデジャネイロで穏やかに暮らしていた。ところがスイス大使誘拐事件で国の空気が一変する中、ルーベンスが軍に連行されてしまう。夫の行方を追うエウニセは、拘束されて過酷な尋問を受けながらも、不屈の精神で前進。そうして上げ続けた声は、歴史を動かす力となっていく──。 原作は、ルーベンス・パイヴァの息子で作家のマルセロ・ルーベンス・パイヴァが発表した書籍『Ainda Estou Aqui』。壮年期のエウニセ役をサレス作品の常連であるフェルナンダ・トーレスが務め、老年期はフェルナンダの母であり「セントラル・ステーション」でおなじみのフェルナンダ・モンテネグロが演じる。闘いと絆に心揺さぶられる注目作だ。 「アイム・スティル・ヒア」 監督:ウォルター・サレス 脚本:ムリロ・ハウザー、エイトール・ロレガ 音楽:ウォーレン・エリス 撮影:アドリアン・テイジド 出演:フェルナンダ・トーレス、セルトン・メロ、フェルナンダ・モンテネグロ 2024年/ブラジル、フランス/137分 ©2024 VideoFilmes/RT Features/Globoplay/Conspiração/MACT Productions/ARTE France Cinéma 公式サイト:https://klockworx.com/movies/imstillhere/
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【特別寄稿】「セプテンバー5」―かつてピーター・ジェニングスというキャスターがいた!
2025年2月17日テレビ報道に長年携わってきたジャーナリストが伝える、本作で描かれた報道戦争の教訓、そして今の時代に求められる報道の姿勢とは――。 報道陣が主人公の社会派ドラマ 他人事ではない。なぜならば、僕が長年関わってきたのがテレビ報道という仕事だからだ。実際この映画「セプテンバー5」には僕自身の既視体験のようなシーンが多々ある。テレビ局のサブ(副調整室)で、現在進行形の出来事を生中継で報じ続けた経験が脳裏にいくつも蘇ってくるのだ。 この映画は1972年、当時の西ドイツ(何とベルリンの壁崩壊前の出来事なのだ)、ミュンヘン・オリンピック開催中に選手村で起きたパレスチナ武装組織「黒い九月」による襲撃事件についてのストーリー、というよりはその事件を、生中継を交えて報じ続けたアメリカのテレビ局ABCの五輪中継チームがいかに極限的な状況のなかでそれを成し遂げたかについてのストーリーなのである。いわば報道陣が主人公になっているのだ。 そこで、まずとても重要なことを確認しておかなければならないのだが、「起きた事実」と「報道された事実」は同一ではない。事件が何であったかについての考察は、映画という手段だけでなく、より多面的なアプローチが存在している。そしてそれらの考察は、今現在、中東の地で起きている過酷な現実ともつながっている。そのことを踏まえたうえで、僕が言えることを書こうと思う。 当時の米ABC報道局の位置 僕は映画評論家ではないし、その分野のプロでもない。ジャーナリズムの世界の端くれとしてまだ取材を続けている記者のひとりにすぎない。だから映画「セプテンバー5」について映画作品としての評価などを堂々と語れる立場にはない。だが、この映画の背景事情について観客の皆さんと多少とも共有したいと思われることは多々ある。以下、それらを記す。 それは、当時の米ABCというテレビ局がどのような位置にあったのか、なかでもこの映画に登場してきているABC報道局の記者ピーター・ジェニングスという、のちにABCの看板キャスター、というよりは全米を代表する優れたアンカーとなった人物がどのような業績と評価を得たのかについては知っていたほうがいいと思われるからだ。 僕は日本の民放テレビ局の特派員として、2002年から3年間、ワシントンD.C.で、そして2008年から2年あまりニューヨークで特派員として仕事をしていたことがある。ワシントンD.C.から東京に帰任した直後の2005年8月にピーター・ジェニングスの訃報に接した。肺がんだった。まだ67歳だった。 ワシントンD.C.で仕事をしていた当時は、アメリカの3大ネットワーク(ABC、CBS、NBC)の夕方のニュースは、ニュース報道の「主戦場」となっていて、激しい競争が繰り広げられていた。僕が勤めていた日本の民放局TBSは米CBSとの提携関係にあって僕は常時CBSを見ていた。そのCBSイブニングニュースは、キャスターのダン・ラザーが局の顔として攻撃的な報道を繰り広げていた。またNBCもトム・ブロコウというアメリカの国益を前面に掲げるタイプのキャスターが活躍していた。3人は「ビッグ3」と言われた。 その中でABCのピーター・ジェニングスはといえば、アメリカには珍しく、どこか含羞のような、つまり傲慢さを嫌うような慎ましさという面がどこかにあるキャスターだったというのが僕の印象だった。彼は他の2人(ダン・ラザーやトム・ブロコウ)とは違って海外特派員の経験が長かった。とりわけ中東アラブ世界で初の米テレビ局の支局をレバノンのベイルートに開設したことで知られていた。つまり、アラブ世界でアメリカがどのようにみられているかを、肌身をもって知っている人物だった。 思い出される9・11事件以後の報道 僕がワシントンD.C.に赴任したのは、あの9・11=世界同時多発テロ事件が起きた直後のアメリカだった。時の大統領はジョージ・W・ブッシュ。アメリカ全土が熱狂的な愛国心に染まっていた時期だった。 3大ネットに加えてケーブル・ニュースのCNN、FOXニュースなども9・11後に多くの視聴者を再獲得していた時期で、テレビ画面の右上に星条旗のロゴがはためいていた局もあった。さらに看板キャスターたちは、ジャケットの襟に星条旗のバッジをつけながらニュースを伝えていた時期だった。 当時ブッシュ大統領の支持率は90%を超え、アメリカは9・11への報復戦争として、対アフガニスタン戦争でタリバン政権を崩壊させ、対イラク戦争でサダム・フセイン政権を倒した。後年になってイラクには戦争の動機とされていた大量破壊兵器など存在していなかったことが判明したが、あとの祭り。あのアメリカの復讐心を止める勢力は当時、地球上には実質的にどこにも存在しなかった。 そのなかでABCのピーター・ジェニングスは、襟に星条旗のバッジをつけることを拒否し「愛国心が足りない」などと右派市民から批判された。その批判は熾烈なもので、もともとカナダ生まれでカナダ国籍だったピーター・ジェニングスに対して「奴はカナダ人だから」という中傷が殺到した。 後年、彼はアメリカ国籍を取得してカナダとの二重国籍者となった。きっかけは同時多発テロ事件翌年のABCの9・11特番で、超愛国派のカントリー歌手トビー・キースの〈怒れるアメリカ人〉という曲を番組のオープニングに使うことをピーター・ジェニングスが拒否したことから、彼への「カナダ人」批判が殺到したことにあった。報復感情に沸き立つアメリカ国民に対して、彼の態度は、頭を冷やせ、冷静になれ、と静かに呼びかけているように僕には思えた。 ミュンヘン五輪の事件現場に居合わせた「天の配材4 」 なぜ、彼はそのようなスタンスをとり続けることができたのか。そこにこの映画の背景となる出来事が深く関係している。ミュンヘン・オリンピックのあの事件の現場に居合わせ、リアルタイムで事件を刻一刻と正確に報じ続けたときの経験が決定的だったのだ。 中東取材のプロと言っても過言ではないピーター・ジェニングスが、あの「黒い九月」による襲撃事件の現場に居合わせたという「天の配材4 」。彼は「黒い九月」という武装組織の来歴(ヨルダン国王がPLO=パレスチナ解放機構の追放を決めヨルダン内戦が起き多数の死傷者が出たのが19710年の9月だったことにちなんで、命名された)についても熟知していたし、彼がミュンヘンからの放送中に「テロリスト」という言葉を使わずに、「コマンド」「ゲリラ」という語を使っていたことについても、後日批判がアメリカ国内であがった事実がある。パレスチナとイスラエルの長い紛争の歴史を熟知していればこその報道というものがあるのだ。 ピーター・ジェニングスにはミュンヘンからの報道で、それを一定程度成し遂げた思いがあったのではないか。ABCの看板キャスターになってからも、彼は国際報道の分野にテーマを求め、1990年4月には『キリング・フィールドから』という特番で米政権のカンボジアのクメール・ルージュ支援を批判、さらには1995年7月には『広島の原子力爆弾』を戦後50周年特番として放送し、保守派からの激しい批判を浴びた経緯があった。 この映画「セプテンバー5」を注意深く見ていると、ABCのオリンピック中継チームが、ピーター・ジェニングスに敬意をもって接していることがみてとれる。また彼も中継チームとの間に信頼関係があって、それに応えようとしていたことも読み取れる。だからこそABCはこの報道において「圧勝」したのだろう。 だが冷静に頭を冷やして考えてみようではないか。ニュース戦争において他局に「圧勝」したから何だというのだ。この文書のはじめの方で記したように、「起きた事実」と「報道された事実」は同一ではない。「起きた事実」を冷徹に受け止めること。それこそが枢要なのではないのか。 映画の中で、興奮しているABCスポーツ中継チームが、アメリカのABC報道局中枢から「われわれに仕切らせろ」との要求があったときに「これは俺たちのストーリーだぞ」と本音をぶちまけるシーンが実に印象的だ。戦争やテロ事件をまるでスポーツ中継のように「迅速に」 「わかりやすく」 「SNSの拡散力を発揮して」報じることは、かつてあったし、今現在もあるし(とりわけSNSの地殻変動的な台頭が見えてきた今)、これからもあるかもしれない。ただ、僕自身は、ピーター・ジェニングスが身につけていた「含羞」がこれからの時代にはますます必要なものだと思っている人間だ。映画以外のことを書きすぎたかな。 文=金平茂紀 制作=キネマ旬報社(「キネマ旬報」2025年2月号より転載) https://www.youtube.com/watch?v=9ObP0CDHcrc&t=7s 「セプテンバー5」 2月14日(金)より TOHOシネマズ日比谷ほか 全国にて公開 2024年/ドイツ、アメリカ/95分 監督・脚本:ティム・フェールバウム 出演:ピーター・サースガード、ジョン・マガロ、レオニー・ベネシュ、ベン・チャップリン 配給:東和ピクチャーズ ©2024 Paramount Pictures. All Rights Reserved. 公式HP:https://september5movie.jp/ -
換算すれば昭和100年となる記念すべき2025年。東映が最後の直営館であり、7月27日(日)に閉館する丸の内TOEIにて、特集上映〈昭和100年映画祭 あの感動をもう一度〉を3月28日(金)〜5月8日(木)に開催することが決定した。 上映されるのは昭和を彩った名作・ヒット作42本で、東映だけでなく松竹・東宝・KADOKAWA・日活など配給会社の垣根を越えたラインナップ。リアルタイム世代には懐かしく、若者世代には新鮮な映画世界が一挙に甦る。丸の内TOEI閉館プロジェクト〈さよなら丸の内TOEI〉のバトンを繋ぐ企画として、ぜひ注目を。 〈上映作品〉 1. 丹下左膳餘話 百萬兩の壺 2. 人情紙風船 3. 鴛鴦歌合戦 4. 羅生門 4K版 5. 東京物語 6. 二十四の瞳 7. ゴジラ 8. ビルマの竪琴 総集篇 9. 幕末太陽傳 デジタル修復版 10. 純愛物語 11. 無法松の一生 12. ギターを持った渡り鳥 13. 銀座の恋の物語 14. キューポラのある街 15. ニッポン無責任時代 16. 天国と地獄 17. 人生劇場 飛車角 18. 武士道残酷物語 19. 愛と死を見つめて 20. 昭和残侠伝 21. 大魔神 4K版 22. 黒部の太陽 23. 男はつらいよ 24. 緋牡丹博徒 お竜参上 25. 仁義なき戦い 26. 砂の器 27. 新幹線大爆破 28. 犬神家の一族 4K版 29. 八甲田山 30. さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち 31. 遙かなる山の呼び声 32. 影武者 33. 二百三高地 34. 駅 STATION 35. 蒲田行進曲 36. 幻魔大戦 37. 探偵物語 4K版 38. 南極物語 39. お葬式 40. 極道の妻たち 41. 火垂るの墓 42. 釣りバカ日誌 [caption id="attachment_46895" align="aligncenter" width="1024"] 「羅生門」© KADOKAWA1950[/caption] [caption id="attachment_46891" align="aligncenter" width="886"] 「幕末太陽傳 デジタル修復版」©日活[/caption] [caption id="attachment_46894" align="aligncenter" width="738"] 「天国と地獄」 ©1963 TOHO CO.,LTD.[/caption] [caption id="attachment_46885" align="aligncenter" width="1024"] 「新幹線大爆破」©東映[/caption] [caption id="attachment_46890" align="aligncenter" width="591"] 「さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち」 ©東北新社/著作総監修 西﨑彰司[/caption] [caption id="attachment_46886" align="aligncenter" width="1024"] 「蒲田行進曲」©1982 松竹株式会社[/caption] 〈昭和100年映画祭 あの感動をもう一度〉 期間:3月28日(金)〜5月8日(木) 場所:銀座・丸の内TOEI 入場料金:一般1,500円 学生以下1,000円
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NCTのジェヒョン主演。予知から始まるサスペンス「6時間後に君は死ぬ」
2025年2月14日30歳の誕生日を迎えたジョンユンは、未来が見えるジュヌに「6時間後に君は死ぬ」と告げられる。それまでに殺人鬼を見つけ、運命を変えられるか──。高野和明の同名小説を、舞台を韓国に移し、K-POPグループ・NCTのジェヒョンを主演に迎えて映画化したサスペンス「6時間後に君は死ぬ」が、5月16日(金)よりシネマート新宿ほか全国で公開される。ティザー予告編が到着した。 ジュヌを演じるジェヒョンは映画初挑戦。ジョンユン役はパク・ジュヒョン、殺人鬼を追う刑事ギフン役はクァク・シヤンが務める。 第28回富川国際ファンタスティック映画祭で観客賞を受賞し、第20回大阪アジアン映画祭への出品も決定。緊迫の物語から目が離せない。 https://www.youtube.com/watch?v=etWXifHUQcE 「6時間後に君は死ぬ」 原作:高野和明『6時間後に君は死ぬ』(講談社文庫) 監督:イ・ユンソク 出演:チョン・ジェヒョン(NCT)、パク・ジュヒョン、クァク・シヤン 2024年/韓国・日本/90分/ビスタ/5.1ch 原題:6시간 후 너는 죽는다 英題:YOU WILL DIE IN 6 HOURS 字幕翻訳:石井絹香 配給:クロックワークス 映倫:G ©2024, Mystery Pictures, ALL RIGHTS RESERVED 公式サイト:https://klockworx.com/die6hours -
カンヌ映画祭パルム・ドッグ賞獲得。前代未聞の法廷コメディ「犬の裁判」
2025年2月14日被告人ならぬ被告犬の裁判を描き、第77回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に出品されてパルム・ドッグ賞に輝いた法廷コメディ「犬の裁判」が、初夏よりシネスイッチ銀座、アップリンク吉祥寺ほか全国で順次公開される。ポスタービジュアルが到着した。 負け裁判ばかりで解雇寸前の弁護士アヴリル。視覚障がいを持つダリウシュより、3人に噛みついたという飼い犬コスモスの弁護を依頼され、仕方なく引き受ける。そして、法律で犬が“物”と見なされることを根拠に、飼い主への罰金1万フランとコスモスの安楽死を言い渡されるが、アヴリルは「犬は物ではない」と主張。それが認められ、前代未聞の裁判が始まる──。 監督と主演を務めたのは、「若い女」(2017)でリュミエール賞最有望女優賞に輝き、ダンサー・作家・演劇監督の顔も持つレティシア・ドッシュ。そしてコスモスを表情豊かに演じたのは、サーカス犬のコディだ。 公開に先駆け、3月に開催される横浜フランス映画祭2025での上映も決定。果たして無罪を勝ち取れるのか? 実話にインスパイアされた、社会の不条理を問うコミカルな物語に注目だ。 「犬の裁判」 監督:レティシア・ドッシュ 脚本:レティシア・ドッシュ、アン=ソフィー・バイリー 出演:レティシア・ドッシュ、フランソワ・ダミアン、ジャン・パスカル・ザディ、アンヌ・ドルヴァル、コディ(犬)、マチュー・ドゥミ、アナベラ・モレイラ、ピエール・ドラドンシャン 2024年/スイス・フランス/フランス語/81分/1.85:1 原題:LE PROCÈS DU CHIEN 字幕:東郷佑衣 配給:オンリー・ハーツ 後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ、在日スイス大使館 ©BANDE À PART - ATELIER DE PRODUCTION - FRANCE 2 CINÉMA - RTS RADIO TÉLÉVISION SUISSE - SRG SSR - 2024