とから始まるものでの検索結果

作品情報
条件「とから始まるもの」の作品 3145件)

人物
「とから始まるもの」を人物名に含む検索結果 5645件)

記事
「とから始まるもの」の検索結果 50件)

  • たった一音。否、わずか半音ズレただけでも曲の印象は変わる。その不協和音がかえって効果的に鳴る場合もあれば、演奏を台無しにしてしまうことも。どっちへ転ぶかは、その日のハコ=会場の客層や雰囲気、奏者の調子など……さまざまな要素に作用されるものゆえ、何とも言い難い。そこが演(や)り直しのきかない“生きもの”たるライブの怖さであると同時に、何が起こるか分からない──スリリングな面白さと捉えることもできる。そんなジャズの危うくも繊細な演奏と共に、昭和末期の銀座で繰り広げられる一夜を描いた「白鍵と黒鍵の間に」が、10月6日(金)からテアトル新宿ほか全国公開される。本作の魅力の一端をご紹介したい。    人生もまた、ライブのごとし。 何気なくリクエストに応えて弾いた1曲が、はからずもその後の運命を分けるといった、思いがけないことが人生でも往々にして起きたりする。映画『白鍵と黒鍵の間に』は、まさしく2人のジャズピアニスト=博と南にとってターニングポイントとなる一夜を描いた、夢うつつな一編。昭和60年代と明確な時代設定ながら、どこかパラレルワールドのようにも見える往時の東京・銀座で、夜の街に生きる者たちがセッションのごとく織りなす人間模様を、ユーモアとペーソスを絡ませながら紡いでいく。  主人公の対照的なピアニスト=博と南を演じるは、今や日本映画に欠かせぬ存在である池松壮亮。大志と夢を抱く前者とドライに日々をやり過ごす後者の1人2役に挑み、そのコントラストを見事なまでに体現せしめた。 なお、原作はジャズミュージシャン/エッセイスト・南博の“銀座時代”を振り返った回顧録ながら、冨永昌敬監督と共同脚本を手がけた髙橋知由によって、2人の異なるキャラクターにリアレンジされている。両者の対比と時系列を行き来させることで変則的なスウィング感を生み出しているのも、妙味と言っていい。冨永監督にとっては「素敵なダイナマイトスキャンダル」(18)に続いての昭和期にフォーカスした映画ではあるものの、まったく異なる味わいに。見方によってはフェアリーテイルのようでもあり、シビアな人生訓のようにも受け取れる──さしずめ“音域の広い”作品と定義して差し支えないだろう。  見せ場として挙げられるシークエンスは数あれど、やはり博と南を取り巻く……あやしくもどこか憎めない人たちとのインプロビゼーション(即興演奏)的なやりとりに、目を奪われずにはいられない。とりわけ、銀座の街にふらりと姿を現し、博に「ゴッドファーザー 愛のテーマ」をリクエストする謎多き“あいつ”を演じる森田剛のケレン味は、特筆に値する。知ってか知らずか、その曲をリクエストしていい者と演奏していい者がそれぞれ決まっているにも関わらず、下世話な物言いで博にせがむ姿に漂う哀愁といかがわしさは、森田の力量による賜物。彼の登場によって曲が転調、もしくは変拍子になったかのごとく映画に変化をもたらすという意味でも、注目すべき1人と言える。        スタッフ・キャスト陣が生み出す圧巻のジャズシーン また、ジャズを題材にした映画の真骨頂という点で、演奏シーンの数々も見逃せない。池松演じる博と南のピアノはもちろん、圧巻はクリスタル・ケイやサックス奏者である松丸契らが音と歌声を重ねていく、ヤマ場でのアンサンブル。ジャズをこよなく愛する冨永監督が、映像表現によって音楽本来の魅力と魔力とエナジーを視覚化した、まさしく珠玉のワンシーンかと。それでいて、ミュージシャンの性(さが)と矜持も浮き立たせるという、名人芸の域にまで昇華させている。言わずもがな、キャスト陣の名演あっての名シーンではあるが、撮影部や録音部、照明部に美術部といったスタッフ陣ともども息を合わせて完成度を高めたことは、想像に難くない。   そのシーンをはじめ、南がレギュラーで出演するクラブ内のロケ地に選ばれた横浜元町「クリフサイド」についても触れておく。昭和21年に「山手舞踏場」としてオープンして以来、今なお昭和の香りを漂わせる文化的レガシーが、この作品で担った役割は極めて大きかったからだ。和と洋をブレンドさせた建築様式がつくりだす独特の空間で、人の夢や欲が夜ごと渦巻いては消えていく悲喜こもごもの物語は、昭和の戦後間もない頃から、平成〜令和と時代の移り変わりを見守ってきた当地だからこそ説得力を持ったことは言うまでもない。         しかしながら、何よりもこの映画にとって重要だったのは、主演に池松壮亮という屈指の力量を誇る名手を据えたことにほかならない。時代背景やジャズピアニストというキャラクター性を適確に捉えながらも、枠組みからはみ出していきそうな熱量とパッションを、気配で表現することができる希有なアクターだからこそなし得た1人2役だったことは、改めて言うのも野暮というもの。何にしても、博と南の間をたゆたうように両者の人格を確立させた池松の真髄に触れずして、彼の芝居は語れない。願わくは、その“静かなる熱演”に心も体もスウィングさせて観てほしいものだ。 文=平田真人 制作=キネマ旬報社   https://www.youtube.com/watch?v=P4Mga-c6pJk   「白鍵と黒鍵の間に」 10月6日(金)よりテアトル新宿ほか全国公開 原作:南博「白鍵と黒鍵の間に」(小学館文庫刊) 監督・脚本:冨永昌敬 音楽:魚返明未 出演:池松壮亮、仲里依紗、森田剛、クリスタル・ケイ、松丸契、川瀬陽太、佐野史郎、洞口依子、松尾貴史、高橋和也 配給:東京テアトル 2023/日本/94分 ©2023 南博/小学館/「白鍵と黒鍵の間に」製作委員会 公式HP:hakkentokokken.com
  • 大人から子供まで誰もが知るヒーローの“スパイダーマン”。最新作「スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース」のBlu-ray&DVDが10月4日にリリース(レンタル同日)されたのに合わせ、どのような歴史を経て今の人気まで辿りついたのか。その歴史と最新作の魅力を探る【後編】をお届けする。 ▶【前編】:「コミック、実写、アニメ、それぞれの特性を生かしたスパイダーマンたち」はこちら 貪欲に、“スパイダーマン”と呼べるものはすべて取り込む! スパイダーマン史上初めての劇場長篇アニメーション・シリーズの第2作となる「スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース」。今やマーベルの実写映画でも当たり前となったマルチバースというアイデアを本格的に導入した前作に続き、さらに拡張した世界を見せてくれる。ライバルのDC「ザ・フラッシュ」でも導入されたアイデアだが、「スパイダーバース」シリーズが突出しているのは、その世界観の映像表現の凄さである。 アニメーションということも関係しているだろうが、そのヴィジュアルはまさにアート。実写映画「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」でトビー・マグワイア、アンドリュー・ガーフィールド、トム・ホランドが奇跡のスパイダーマン共演を果たしたときにも感動を覚えたが、ぶっちゃけその比ではない。「スパイダーバース」の世界においては、それぞれのスパイダーマンのキャラクターごとにそれぞれの色彩・デザインをベースにし、世界観ごとに映像が細かく変貌する。まるでさまざまなスタイルのアニメーション表現が同時に存在しているかのような目まぐるしさ。そのワンカット、ワンカットがとても美しく、アートとしての見応えを備えている。アメリカン・コミックスではひとつのキャラクターをいろんなアーティストが手がけているように、タッチもカラーも違うスパイダーマンたちがひとつの画面の中で同時に活躍する。 特に、本作ではマルチバースの世界を守るための“スパイダー・ソサエティ”なるスパイダーマンたちによる組織が登場する。だから、顔を見せるスパイダーマンの数もただごとではない。スパイダー・グウェンやスパイダーマン・インディア、スパイダー・パンクといったメイン・キャラクターはもちろん、猫、馬、恐竜までスパイダーマン化させているだけでなく、おもちゃのブロック、あのレゴのスパイダーマンまで顔を見せる。スパイダーマンと呼べるものはすべて作品に取り込んでしまおうという貪欲さ。しかも、そのすべてが個性的な絵柄なのだ。 次回作への期待が高まる衝撃のラスト そして何より素晴らしいのは、本作で展開されるのが、そんなスパイダーマンだらけの“スパイダー・ソサエティ”を敵に回して戦う決意の物語になっているところ。前作はスパイダーマンになる運命を背負った少年マイルス・モラレスの成長ストーリーだった。今回のオープニングは、前作でマイルスと友人になったグウェン・ステイシーの孤独な心情の描写からスタート。まるで主人公がマイルスからグウェンへと移ったかのような感覚。そんなグウェンが引き込まれたのが“スパイダー・ソサエティ”なのだ。 マイルスはグウェンを追うように“スパイダー・ソサエティ”を訪れるが、そこに待ち受けていたのはマルチバースの世界を維持するための必須条件、これから観る人のためにあえてネタバレは伏せるが、ある人物の死だったのだ。マイルスは、そんな勝手に決められた運命に反発しつつ、すべての世界を守るために“スパイダー・ソサエティ”に反旗を翻す。僕らに馴染みのあるスパイダーマンことピーター・パーカーは自分の力に責任を持つために運命を受け入れていた。前述の「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」でもトム・ホランド扮するピーターはマルチバースを守るために自分を犠牲にしたが、本作のマイルスはスパイダーマン軍団を敵に回してまでも、そのすべてを守ろうとするのである。  そんなドラマが極上のアニメーションで描かれる本作は、今さら言うまでもなく2部作の前篇。かつてハン・ソロが囚われて終わった「スター・ウォーズ/帝国の逆襲」のように、最近の、とんでもない敵の居場所を開けるのに必要な鍵だけ手に入れて何も解決しなかった「ミッション:インポッシブル/デッドレコニングPART ONE」のように、衝撃とともに、次回作「スパイダーマン:ビヨンド・ザ・スパイダーバース」へのワクワク感に繋がるラストを迎える。次回作ではどんな冒険と戦いが繰り広げられるのか。 なにしろ、本作には実写「アメイジング・スパイダーマン」のアンドリュー・ガーフィールドや、実写「ヴェノム」のコンビニエンスストアのおばさんが出ていたり、「スパイダーマン:ホームカミング」のコソ泥役のドナルド・グローヴァーがプロウラー(マイルスの叔父に当たる)姿になっていたりと実写映画の世界までもが本作に登場してきた。次回作でどこまで世界を引っ掻き回すのか。東映の特撮シリーズの『スパイダーマン』、そしてレオパルドンもついに活躍を見せるかも。本作を何度も繰り返し観て、完結となる後篇に備えてもらいたい。 文=永野寿彦 制作=キネマ旬報社(キネマ旬報10月号より転載)   https://youtu.be/s1xcKTJioH8   『スパイダーマン アクロス・ザ・スパイダーバース』 ※写真はプレミアム・スチールブック・エディションのものです ●10月4日(水)Blu-ray&DVDリリース(レンタル同日リリース)   ▶Blu-ray&DVDの詳細情報はこちら ●プレミアム・スチールブック・エディション 4K ULTRA HD & ブルーレイセット【完全数量限定】 ブルーレイ2枚組(4K ULTRA HD本編ディスク/2Dブルーレイ本編ディスク)  価格:10,120円(税込) 【封入特典】・特製アウターケース、オリジナルデザイン・スチールブック、プレミアム・エディション限定デザインディスクレーベル(2種)、スパイダーマン・キャラクターポストカード(10種)、オリジナルブックレット(44P) ●4K ULTRA HD &ブルーレイセット ブルーレイ2枚組(4K ULTRA HD本編ディスク/2Dブルーレイ本編ディスク) 価格:7,480円(税込) ●ブルーレイ&DVDセット ブルーレイ+DVD (2Dブルーレイ本編ディスク/DVD本編ディスク) 価格:5,280円(税込) 各仕様共通【映像特典】 ・ファン必見! ブルーレイディスクには貴重なメイキング映像や、監督と製作スタッフによる音声解説など、約100分を超える大ボリュームの豪華特典映像を収録! 2023年/アメリカ/本篇140分 監督:ホアキン・ドス・サントス、ケンプ・パワーズ、ジャスティン・K・トンプソン 製作:アヴィ・アラド  製作・脚本:フィル・ロード、クリストファー・ミラー  声:シャメイク・ムーア(小野賢章)、ヘイリー・スタインフェルド(悠木碧)、ジェイク・ジョンソン(宮野真守)、オスカー・アイザック(関智一)、イッサ・レイ(田村睦心)ほか  発売・販売元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント © 2023 Sony Pictures Animation Inc. All Rights Reserved. MARVEL and all related character names: © & ™ 2023 MARVEL
  •   前代未聞の分離手術から35年。元結合双生児のベトちゃんドクちゃんとして知られるグエン・ドクさんの人生を描くドキュメンタリー「ドクちゃん」(仮)の撮影が完了し、ポストプロダクション段階に入った。制作・広報費などを募るクラウドファンディングが、〈CAMPFIRE〉で10月4日(水)~11月18日(土)に行われる。   [caption id="attachment_31108" align="aligncenter" width="850"] @Kingyo Films 2023[/caption]   ベトナム戦争で使われた枯葉剤の影響で、結合双生児として生まれたドクさんは今年42歳を迎える。家族は結婚17年目の妻トゥエンさんと、双子の子どもであるサクラちゃんとフジくん。ステージ4の癌を患う義母を介護し、ドクさん自身も体調を崩して入退院を繰り返しながら、一家の唯一の稼ぎ手として暮らしている。 日越外交関係樹立50周年記念事業に認定された本作は、平和のアンバサダーという使命とともに生きるドクさんの姿を捉えていく。プロデューサーはドクさんと長く平和活動を続けるリントン貴絵ルース(Kingyo Films Pte. Ltd./シンガポール)、監督はドキュメンタリー作家の川畑耕平(Ruff Films LLC/日本)、そしてドクさん自身が完全監修。年内に完成発表、2024年春以降に一般劇場公開を予定している。 ※クラウドファンディングサイトはこちら   [caption id="attachment_31109" align="aligncenter" width="850"] @Kingyo Films 2023[/caption]   〈コメント〉 グエン・ドクさん この映画では、幼少期から現在までの私の人生と本質を皆さんにお見せし、語るつもりです。 これは私にとって非常に大切な財産であり、人生の軌跡となるでしょう。 私の双子の子供たちや、これからの世代を担う多くの若者に、 前向きに生きる力を与えられることを願っています。 それがこの映画を通じて伝われば幸いです。映画の完成を楽しみにしています。 リントン貴絵ルース(プロデューサー) 10年以上前、音楽を通じた平和活動の場でグエン・ドクさんに出会った際に、思い切って彼に聞いた質問があります。 「(枯葉剤を撒いた)アメリカのことは嫌いですか?」 彼の答えは、 「アメリカ人も、僕と同じように平和を愛してる」 でした。 それ以来、彼から「生きる」ことの困難さと逆境に立ち向かう人間の本質的な強さを学びました。 彼は分離手術を受けた結合双生児として広く知られています。 しかし、その存在が多くの人にとって「過去の人」として捉えられ、 一見、終わったドラマのように見えてしまっていることに私は危機感を感じています。 それではまた残念なことにも悲惨な歴史は時を超え場所を変え、 繰り返されてしまうのではないでしょうか。 SDGs(持続可能な開発目標)が掲げる「持続可能な」平和の必要性を、ドクさんはよく知っていて、 「これまで戦争の犠牲になった人の命が無駄になっている。」と言っています。 この混沌とした時代において、彼だからこそ伝えられる「平和」のメッセージがあります。 日本人とベトナム人が、あらゆる知識と技術を結集しヒューマニズムに溢れた協力で ベトちゃんドクちゃんを救った経緯からも、日本とベトナムが外交関係樹立50周年を迎えるこの年に、 彼の現在の姿を映画にすることは必然でした。 彼の体調は極めて悪いです。足は一本、骨盤は一つ、そして一つしかない腎臓は悲鳴をあげています。 42年前から人々を引き寄せ続ける彼の明るい性格のおかげで、 その事実を忘れそうにもなりますが、彼は重度の障がい者です。 彼は「あと5年生きれるかわからない」と言っていましたが、映画制作が進むにつれて、 「この映画が完成したら、何十年も健康でいて、 映画と一緒に平和活動に引き続き励もう」という気持ちで溢れています。 このドクさんの命をかけた真実のストーリーこそが 人類に「平和」の意味を説き、「平和」への思いを呼び覚ますきっかけを生み出すと信じ、 映画の制作に全身全霊で取り組んでいます。 この映画の使命を支えるためには皆様の協力が不可欠です。 どうぞご支援をよろしくお願い申し上げます。   @Kingyo Films 2023
  •   父を殺され、全てを失った砂漠の王子ポール。その運命の恋と復讐、そして宇宙の命運をかけた決戦が始まる──。フランク・ハーバートのSF小説を原作とするシリーズの第2弾「デューン 砂の惑星PART2」が、2024年3月20日(水・祝)より公開。場面写真が到着した。     主演はティモシー・シャラメ、共演はゼンデイヤ、レベッカ・ファーガソン、ハビエル・バルデム、ジョシュ・ブローリンなど。さらにPART2から、「エルヴィス」のオースティン・バトラー、「ミッド・サマー」のフローレンス・ピュー、「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」のレア・セドゥも参戦。監督は「ブレードランナー2049」のドゥニ・ヴィルヌーヴ、音楽は巨匠ハンス・ジマーが続投する。 オールスターキャストによる壮大なドラマに期待したい。     「デューン 砂の惑星PART2」 監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ 撮影:グリーグ・フレイザー 脚本:ドゥニ・ヴィルヌーヴ、ジョン・スペイツ、クレイグ・メイジン 出演:ティモシー・シャラメ、ゼンデイヤ、レベッカ・ファーガソン、ジョシュ・ブローリン、オースティン・バトラー、フローレンス・ピュー、デイヴ・バウティスタ、ロバート・ロドリゲス、クリストファー・ウォーケン、スティーブン・ヘンダーソン、レア・セドゥ、ステラン・スカルスガルド、シャーロット・ランプリング、ハビエル・バルデム © 2023 Legendary and Warner Bros. Ent. All Rights Reserved 公式サイト:dune-movie.jp
  • 大人から子供まで誰もが知るヒーローの“スパイダーマン”。最新作「スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース」のBlu-ray&DVDが10月4日にリリース(レンタル同日)されたのに合わせ、どのような歴史を経て今の人気まで辿りついたのか。その歴史と最新作の魅力を探る。 廃刊間近のコミック誌にスパイダーマン初登場 『スパイダーマン』は、マーベルの中でも特別な作品と言える。それはこれまでに実写映画化だけで8回、長篇アニメーション映画で2回、「スパイダーマン:ビヨンド・ザ・スパイダーバース」が無事来年公開されれば、映画だけで11本の作品が作られることからも明らかだろう。その他にテレビでも1977〜79年に全米で実写化。日本でも東映が特撮テレビドラマシリーズで78〜79年にかけて放映。さらにテレビアニメはミニアニメ版を含めると12作品が制作されている。  そもそも『スパイダーマン』がコミックスで産声をあげたのは、62年『アメイジング・ファンタジー♯15』という、すでに廃刊が決まっていたコミック・ブックだった。描いたのは故スタン・リー。41年、スタン・リーは18歳にして編集長に異例の抜擢をされた。だが、第二次世界大戦終結後、コミックスは表現の自由を奪われていた。54年にコミックス・コード(コミックス倫理規定)委員会が設定されるなどして、ホラーものや戦争ものなど、表現の規制が始まったからだ。描きたいことを奪われて、辞めるつもりだったスタン・リーは、廃刊が決まっているコミックスで最後に好きなことを描いてしまおうと決意。その中のひとつが『スパイダーマン』だったのだ。  以前からスパイダーマンの発想だけは頭の中にあったというスタン。そもそもは壁に張り付いたり、歩いたりする超人のイメージがあり、そこからモスキートマンという名前を最初は考えたものの、後にスパイダーマンという名前を思いつき改名したのだそう。  突出すべきは、スパイダーマンにはもとから特殊能力があったのではなく、あくまでも蜘蛛に嚙まれたのが要因で、蜘蛛の力を授かったとした点だ。どこから見ても筋肉隆々のヒーロータイプであるのと違い、華奢な体で縦横無尽に摩天楼を飛び回って活躍するスパイダーマンは、ティーンの支持を集めた。しかも決して裕福な育ちではないところも魅力的だった。つまりスタン・リーはヒーロー物としての面白さに人間味をプラス。たまたま超人的能力を得た十代の若者の物語として『スパイダーマン』を生み出し、人気を獲得した。63年3月からソロのシリーズが刊行されることになり、大人気コミックスへと成長していった。 実写「スパイダーマン」は米社会の象徴的なヒーローに かくして最初に実写化された、サム・ライミ監督版シリーズの3作は、あくまでも平凡な、決して裕福ではない男が主人公……という原作の一面を大切にして作られている。その証拠がライミ版「スパイダーマン」はウェブ・シューター(糸を出す装置)ではなく、自分の手から蜘蛛の糸が出てくるという仕掛けにしたところだ。ライミ監督はこれについて「ウェブ・シューターが作れる技術があったら、それだけで裕福になれるよ……」と語っていた記憶がある。  とにかく02年公開の映画「スパイダーマン」は、どこにでもいるような青年がヒーローとなった作品で、9・11のアメリカ同時多発テロ事件で揺れる米社会で象徴的な大ヒットとなった。それは殺伐とした時代に、誰もがヒーローを求めている……という気持ちに即していたからに違いない。  面白いのは、このライミ版のヒットで、マーベル側が今ならスパイダーマンに新しい読者を呼び込めると見たのであろう、すべてリセットしてゼロから新しい『スパイダーマン』である『アルティメット・スパイダーマン』を作りあげたことだ。結果的にはそれがパラレルワールドに近い状況を作り出し、さらには映画「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」やアニメーション版「スパイダーマン:スパイダーバース」などで描かれることとなる多元宇宙(マルチバース)の概念が入り込んでいくことになったのだ。  コミックスも実写映画もアニメーションも、どの媒体でもそれぞれの持ち味を活かしながら、時に影響しあいながら魅力的にスパイダーマンというキャラクターが語られてきた。それらを見事に融合させたのが本作「スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース」ではないだろうか。 【後編へ続く】 文=横森文 制作=キネマ旬報社(キネマ旬報10月号より転載) https://youtu.be/s1xcKTJioH8   『スパイダーマン アクロス・ザ・スパイダーバース』 ※写真はプレミアム・スチールブック・エディションのものです ●10月4日(水)Blu-ray&DVDリリース(レンタル同日リリース)   ▶Blu-ray&DVDの詳細情報はこちら ●プレミアム・スチールブック・エディション 4K ULTRA HD & ブルーレイセット【完全数量限定】 ブルーレイ2枚組(4K ULTRA HD本編ディスク/2Dブルーレイ本編ディスク)  価格:10,120円(税込) 【封入特典】・特製アウターケース、オリジナルデザイン・スチールブック、プレミアム・エディション限定デザインディスクレーベル(2種)、スパイダーマン・キャラクターポストカード(10種)、オリジナルブックレット(44P) ●4K ULTRA HD &ブルーレイセット ブルーレイ2枚組(4K ULTRA HD本編ディスク/2Dブルーレイ本編ディスク) 価格:7,480円(税込) ●ブルーレイ&DVDセット ブルーレイ+DVD (2Dブルーレイ本編ディスク/DVD本編ディスク) 価格:5,280円(税込) 各仕様共通【映像特典】 ・ファン必見! ブルーレイディスクには貴重なメイキング映像や、監督と製作スタッフによる音声解説など、約100分を超える大ボリュームの豪華特典映像を収録! 2023年/アメリカ/本篇140分 監督:ホアキン・ドス・サントス、ケンプ・パワーズ、ジャスティン・K・トンプソン 製作:アヴィ・アラド  製作・脚本:フィル・ロード、クリストファー・ミラー  声:シャメイク・ムーア(小野賢章)、ヘイリー・スタインフェルド(悠木碧)、ジェイク・ジョンソン(宮野真守)、オスカー・アイザック(関智一)、イッサ・レイ(田村睦心)ほか  発売・販売元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント © 2023 Sony Pictures Animation Inc. All Rights Reserved. MARVEL and all related character names: © & ™ 2023 MARVEL