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松坂桃李が、ヒロイン役の麻生久美子、いや井浦新と濃厚キス!?
2021年9月24日松坂桃李が、ヒロイン役の麻生久美子、いや井浦新と濃厚キス!? 「転校生」(82)「君の名は。」(16)などの映画をはじめ、他人と心や身体が入れ替わるような作品は、テレビドラマ、小説、漫画などにも数多く存在する。その中でも現代的要素を交えたラブコメディとして描いた最新作が、9月24日にDVD&ブルーレイをリリースする松坂桃李主演の連続ドラマ『あのときキスしておけば』。 愛する女性の魂が乗り移ったのは中年おじさん 2021年4月にテレビ朝日系で放送した同作で入れ替わることになるのは、松坂桃李演じる主人公自身ではなく、彼が愛した女性と見知らぬおじさん。麻生久美子演じるヒロインの魂が、井浦新演じる中年男性に乗り移ってしまうことになる。 主人公は、何をやっても鈍くさくてさえないスーパーの店員・桃地のぞむ(松坂桃李)。夢や目標、ましてや恋愛願望もない彼は、大人気漫画『SEIKAの空』を読むことだけが唯一の楽しみという地味な毎日を送っていた。そんなある日、勤務先でクレーマーに絡まれていたところを、買い物に来ていた唯月巴(麻生久美子)に救われる。実は彼女こそ『SEIKAの空』の作者・蟹釜ジョーであることを知った桃地は、豪邸で暮らす我儘な巴の雑用係を引き受ける。次第に急接近していった二人は沖縄旅行に出かけるが、オーバーラン事故により巴だけが帰らぬ人に。病院で哀しみに暮れる桃地だったが、巴だと名乗る見知らぬ男性(井浦新)に助けを求められる。当初は困惑するも、巴しか知りえない話を聞かされた桃地は、機内で隣の席に座っていた男性に巴の魂が乗り移ってしまったことを信じるようになる。 愛の本質を問われる主人公 本作最大の見所は、もちろん桃地と巴の恋の行方。しかし、美しい女性だった巴は、出会って早々に中年男性となってしまうし、亡くなった巴の身体は失われており、元の身体に戻ることはできない。 桃地は内気で恋愛経験がないため、事故の前に巴からキスを迫られた際も、寸前で躊躇してしまう。それがタイトルにもなっている大きな後悔を生むことになるのだが、桃地は自分が愛していたのは、あくまで作品なのか、女性としての巴なのか、さらには、人間としての巴なのかといったことに悩まされる。 桃地と巴の魂が乗り移ったマサオ(通称:オジ巴)は、ラブラブなデートから喧嘩や葛藤、さらにはキスシーンまで様々な恋模様を見せていく。二人の関係性は、外見的には同性カップルのためBL的にも見えるが、内面的な本質は男女の恋愛。外見や性別が変わっても愛すことができるのか……。もちろん本作はあくまでラブコメであり、松阪と井浦の意外性のあるカップルぶりを楽しむだけでも良いのだが、その奥にはジェンダーを超えた愛がテーマのドラマともいえる。 麻生久美子&井浦新による二人一役の異色ヒロイン 「孤狼の血」シリーズでアウトロー刑事を演じたり、「娼年」(18)で娼夫を演じたりなど、幅広い役柄を演じている松坂が、「自分史上最もポンコツな役」ともいう桃地役を好演。桃地はセンス0の個性的服装センスでも毎回楽しませてくれる。さらに特筆すべきは、二人一役という難しいヒロインの巴役を見事に作り上げた麻生久美子と井浦新。次第に井浦の演じるオジ巴にも麻生に見える瞬間や可愛らしさを感じるようになる。 特典映像では、マサオとオジ巴の一人二役を演じた井浦が、「新しいことへのチャレンジだった」とも述べているとおり、井浦にとって役者としての幅を広げた新境地ともいえるだろう。その他にも巴の元夫役の三浦翔平をはじめ、猫背椿、六角慎司、MEGUMI、岸本加世子ら個性的かつ芸達者な共演者が作品を盛り上げており、三角関係を演じる松坂・井浦・三浦の掛け合いや男同士による不思議な“混浴”ほか、見所となる楽しいシーンが全編に満載だ。 切なさを帯びていく恋の行方の結末は!? 巴はなぜ魂だけが生き残ってしまったのか、マサオの魂はどこにいってしまったのかといった謎が明らかとなっていくにつれ、桃地と巴の恋の行方は切なさを帯びていく。脚本は、恋愛ドラマの名手とも称される大石静のオリジナル。近年も『大恋愛~僕を忘れる君と』(18)『家売るオンナの逆襲』(19)など時代を捉えた話題作を次々と手掛けている。本作も定番の入れ替わりだけでなく、二転三転する巧みな展開が最後まで飽きさせない、笑って泣けるラブコメディとなっている。 また、約2時間にもおよぶ特典映像では、劇中漫画『SEIKAの空』実写版も収録。モヤオ役の松坂をはじめ、井浦、三浦らの本編メインキャストが、劇中漫画のキャラクターを全3話約38分にわたってしっかり演じており、豪華なおまけとなっている。 文=天本伸一郎/制作=キネマ旬報社 『あのときキスしておけば』 ●9月24日(金)Blu-ray BOX&DVD-BOXリリース(全8話)※レンタル同日リリース Blu-ray&DVDの詳細情報はこちら ●Blu-ray BOX:26,400円(税込) DVD-BOX:20,900円(税込) 【映像特典】 ・あのキス撮影の軌跡メイキング ・情報解禁コメント&ティザーPRメイキング ・松坂桃李×井浦新×麻生久美子 放送直前トークイベント ・ほっこり㊙ハプニング集 ・クランクアップ集 ・あのキス特別謎解きダイジェスト ・PRスポット集 ・スピンオフ実写版「SEIKAの空」 【封入特典】 ・Special Booklet ●2021年/日本 ●出演:松坂桃李、井浦 新、三浦翔平、猫背 椿、六角慎司、阿南敦子、うらじぬの、角田貴志、藤枝喜輝、窪塚愛流、川瀬莉子、 板倉武志、MEGUMI、岸本加世子、麻生久美子 ●発売元:株式会社テレビ朝日 販売元:株式会社ハピネット・メディアマーケティング ©2021 テレビ朝日・MMJ -
【あの頃のロマンポルノ】日本映画批評 『狂った果実』
2021年9月24日2021年に、日活ロマンポルノは生誕50年の節目の年をむかえました。それを記念して、「キネマ旬報」に過去掲載された記事の中から、ロマンポルノの魅力を様々な角度から掘り下げていく特別企画「あの頃のロマンポルノ」。キネマ旬報WEBとロマンポルノ公式サイトにて同時連載していきます。 今回は、「キネマ旬報」1981年6月上旬号より、寺脇 研氏による「日本映画批評 『狂った果実』」の記事を転載いたします。 1919年に創刊され100年以上の歴史を持つ「キネマ旬報」の過去の記事を読める貴重なこの機会をお見逃しなく! ■日本映画批評『 狂った果実』 男と女が、互いのからだをいつくしみあう。たとえば、主人公の少年と少女が、むさぼるように相手の躯を求め抱擁する、とか、いかがわしいバーで活計を得ている中年男と内妻が、ようやく迎えた祝言の真似事を喜ぶあまり少年の眼前であることも憚らず愛情を交歓するとか。それらの場面に表わされる彼らの思いのたけは、きわめて濃密だ。あけすけでいるくせに、気高さ、美しさ、さえ感じさせる。 肉体と肉体が、暴力を介してぶつかりあう。たとえば、激怒した少年が少女を殴打する、とか、富をだらしなく享楽している少女の取り巻き連中が、バーで狼籍の限りを尽くし、復讐に押しかけた少年と中年男との間に大乱闘したあげく、殺裁に到る、とか。噴出する憎しみや怒りは、拳と肉の衝突する音、流れる朱の血そのままに、鮮烈だ。 性を通した愛情の描写、暴力を通した激情の表現が、みごとにそれらの真相をとらえている。愛したり憎んだりを、縄のようにあざないながら生きていく人間たちの姿を、等身大で映像化するのだ。恵まれた環境の中を奔放に暮らしている者も、社会の暗部を歯くいしばってさまよっている者も、ひとしなみに、ていねいな描写を施されている。ここでは、性も暴力も、衆目を惹くための具にとどまることなく、情感の媒介物として重要な意味を持つ。 1978年、『オリオンの殺意より 情事の方程式』で根岸吉太郎監督の七本目の映画だ。前々作『朝はダメよ!」(80年)、前作『女教師 汚れた放課後』(81年)と、それぞれすぐと、それぞれすぐれた仕事を重ねてきたが、この『狂った果実』では、まさに、まったき結実を思わせる。軽妙さが、根岸監督の身上だ。『オリオンの殺意より 情事の方程式』でも使われた滞空競技用の超軽量模型飛行機が、画面をふわり漂って見せるけれど、透明な軽みを基調にした演出ぶりを、象徴するかのようだ。 自然主義の小説よろしく、下層でもがく姿の重苦しさを強調していくのは、さほど難しい所業ではあるまい。物質面で充足している側の心の移ろいを的確に語ることこそ、容易ではない。これが軽妙に物語られ、対極にある底辺の人生と交錯するとき、双方が共に豊かな実在感をもって示される。その間に、僕たち誰もが逃れられない人間の業が、立体的に浮かんでくるのだ。愛も憎しみも、自身の内部の感情と、あまりにピッタリ波長が合致して、幕が閉まった後も、しばらく五感が痺れたままでいた。 映像の組立てが、どこからどこまで何ら違和感なく受けとめられる点などは、単に、根岸監督とぼくとが世代や感性の質をほぼ一にしているから、と説明できるかもしれない。しかし、こうまで鋭敏に、生が伴う愛憎を描破してのけている以上、身びいきでなしに、新しい日本映画の担い手の出現であることを、自信をもって広言したい。同世代の意識を持ち続けつつ、根岸吉太郎という作家と一緒に歩を進めてみよう。大げさにいえば、日本映画の新しい展開に僕も参加するつもりで。 文・寺脇 研 『キネマ旬報』1981年6月上旬号より転載 『狂った果実』【Blu-ray】 監督: 根岸吉太郎 脚本:神波史男 価格:4,620円(消費税込み) 発売:日活株式会社 販売元:株式会社ハピネット・メディアマーケティング 日活ロマンポルノ 日活ロマンポルノとは、1971~88年に日活により製作・配給された成人映画で17年間の間に約1,100本もの作品が公開された。一定のルールさえ守れば比較的自由に映画を作ることができたため、クリエイターたちは限られた製作費の中で新しい映画作りを模索。あらゆる知恵と技術で「性」に立ち向い、「女性」を美しく描くことを極めていった。そして、成人映画という枠組みを超え、キネマ旬報ベスト・テンをはじめとする映画賞に選出される作品も多く生み出されていった。 オフィシャルHPはこちらから 日活ロマンポルノ50周年企画「みうらじゅんのグレイト余生映画ショー in 日活ロマンポルノ」の全記事はこちらからご覧いただけます。 日活ロマンポルノ50周年新企画 イラストレーターたなかみさきが、四季折々の感性で描く月刊イラストコラム「ロマンポルノ季候」 -
ロマンポルノ50周年 特集上映企画 「私たちの好きなロマンポルノ」 実施決定!
2021年9月17日今年、50周年を迎える日括ロマンポルノの50周年記念プロジェクトの一環として、特集上映「私たちの好きなロマンポルノ」が決定し、公式サイトにて情報が公開された。 本特集上映は、映画監督・俳優・作家・ミュージシャンなど国内外問わず50名以上の有識者たちが太鼓判を押すロマンポルノのクラシック作品を選び上映するといったもので、50周年を迎える11月20日(土)より、シネマヴェーラ渋谷を皮切りに全国で順次上映されることが発表された。 柄本佑、城定秀夫、ジム・オルーク、渡辺大知らが太鼓判! 作品の選者として柄本佑、城定秀夫、ジム・オルーク、渡辺大知らが参加。「誰よりも楽しみにしているのは私です」(柄本佑)、「自分が映画監督になりたいと思ったきっかけはロマンポルノとの出会い」(城定秀夫)、「肉体を越えた人と人との縁の物語」(渡辺大知)など期待を込めたコメントを寄せている。 上映作品は、ロマンポルノをまだ見たことがない人に向けて、まず見てほしい不朽の傑作群から、1980年以降の作品も多く組みこまれ、選者の思いが込められたラインナップとなっている。 〈日活スウェーデン・ポルノ〉も48年ぶりに蔵出し! さらに、今回の目玉として、ロマンポルノ作品としては超異色となるスウェーデンロケ、セリフはスウェーデン語(日本語字幕付き)、出演者もスウェーデン人という『淫獣の宿』(1973/西村昭五郎監督)、『蜜のしたたり』(1973/加藤彰監督)のデジタル復元版の上映も決定した。これらの作品は、大型作品として当時、性の先進国というイメージのあったスウェーデンに精鋭スタッフを送り、長期ロケを敢行して製作された作品。 また「淫獣の宿」はスウェーデンの代表的映画監督である、イングマール・ベルイマンの作品から登場人物の名前がつけられるなど、映画史的にも本作品が観なおせる貴重な機会となっている。ぜひクラシック映画のファンにはチェックしていただきたい。 上映期間中はトークイベントも実施予定となっており、詳細は追ってロマンポルノ公式HP及びシネマヴェーラ渋谷のHPにて随時掲載予定なので、気になる方はぜひロマンポルノの公式サイトも定期的にチェックしていただきたい。 選者一覧(54名) 相澤虎之助(映画監督)、朝吹真理子(作家)、阿部和重(作家)、荒木啓子(PFFディレクター)、井口奈己(映画監督)、市山尚三(東京国際映画祭プログラミングディレクター)、入江悠(映画監督)、絵沢萠子(俳優)、柄本明(俳優)、柄本佑(俳優)、柄本時生(俳優)、岡田秀則(フィルムアーキビスト)、奥浜レイラ(パーソナリティ)、風祭ゆき(俳優)、片桐はいり(俳優)、片桐夕子(俳優)、上條葉月(字幕翻訳者)、川瀬陽太(俳優)、草野なつか(映画作家)、高良健吾(俳優)、小西康陽(ミュージシャン)、佐々木敦(思考家・作家)、塩田明彦(映画監督)、城定秀夫(映画監督)、白石和彌(映画監督)、白川和子(俳優)、瀬々敬久(映画監督)、園子温(映画監督)、田中真理(俳優)、谷ナオミ(俳優)、月永理絵(映画ライター)、寺島まゆみ(俳優)、富田克也(映画監督)、中田秀夫(映画監督)、中原昌也(ミュージシャン・作家)、濱口竜介(映画監督)、古澤健(映画監督)、松田広子(プロデューサー)、真魚八重子(映画ライター)、宮下順子(俳優)、三宅唱(映画監督)、森岡龍(俳優・映画監督)、行定勲(映画監督)、横浜聡子(映画監督)、ライムスター宇多丸(ラッパー・ラジオパーソナリティ)、渡辺大知(俳優・ミュージシャン)、クレモン・ロジェ(映画批評家)、ジム・オルーク(ミュージシャン)、ディミトリ・イアンニ(キノタヨ現代日本映画祭プログラマー・ロマンポルノ研究家)、パウロ・ブランコ(プロデューサー)、ホセ=ルイス・レボルディノス(サンセバスチャン映画祭ディレクター)、リチャード・ペーニャ(ニューヨーク映画祭名誉ディレクター・コロンビア大学教授)、内藤由美子(シネマヴェーラ渋谷支配人) 上映作品ラインナップ(38作品) 『赫い髪の女』『天使のはらわた 赤い教室』『黒薔薇昇天』『悶絶!! どんでん返し』『天使のはらわた 赤い淫画』『愛欲の罠』『牝猫たちの夜』『妻たちの性体験 夫の眼の前で、今・・・』『ピンクカット 太く愛して深く愛して』『狂った果実』『ラブホテル』『母娘監禁・牝』『セックス・ライダー 濡れたハイウェイ』『生贄夫人』『桃尻娘<ピンク・ヒップ・ガール>』『恋狂い』『㊙女郎市場』『愛に濡れたわたし』『美少女プロレス 失神10秒前』『ベッド・パートナー』『OL日記 濡れた札束』『絶頂姉妹 堕ちる』『ズーム・イン 暴行団地』『レイプハンター 通り魔』『バックが大好き!』『制服肉奴隷』『犯され志願』『闇に浮かぶ白い肌』『女教師は二度犯される』『女教師 汚れた噂』『のけぞる女』『愛欲の日々 エクスタシー』『性愛占星術 SEX味くらべ』『㊙色情めす市場』『未亡人下宿 初のり』『少女暴行事件 赤い靴』『淫獣の宿』『蜜のしたたり』 コメント 【上映にあたり】 内藤由美子(シネマヴェーラ渋谷・支配人) 日活ロマンポルノ誕生から半世紀経った今、映画好きにロマンポルノを観てもらうきっかけになればと、作家、音楽家、若手監督、映画祭キュレーターなどからリクエストを募り、誰もが心の中に大事なロマンポルノ作品を持っていることに改めて意を強くした。「”ポルノ”に抵抗がある人」、「巨匠作品は一応観ているが他は…」という人たちにこの特集を捧げる。世界的傑作に肩を並べる作品はもちろん、いま最も熱心にロマンポルノを観ている女性たちのセレクションを通じて、ニュー・クラシックやシュールでアナーキーな作品を発見して欲しい。「こんな作品があったのか!?」という驚きを劇場で体験してください! ★柄本佑 (俳優) 『未亡人下宿 初のり』 1978年/監督:山本晋也/脚本:山田勉/出演:橘雪子、楠木正通 僕の中では青春映画の金字塔として君臨する『未亡人下宿 初のり』! 上映が決まり、自分が山本晋也監督フリークだった時期に伊地智啓さんと未亡人下宿の話で盛り上がった時「山本晋也は天才だよなっ」とおっしゃられていた事を思い出します。実は劇場で観るのは初めて、、、誰よりも楽しみにしているのは私です。シネマヴェーラに感謝です!ありがとうございます! ★上條葉月(字幕翻訳者) 『㊙色情めす市場』 1974年/監督:田中登/脚本:いどあきお/出演:芹明香、花柳幻舟、宮下順子、萩原朔美 画面全体に充満する性への執着と生命力の乾いた熱気。太陽に晒された白昼の路地には惨めさも美しさもなく、すべてを拒絶する芹明香が一人立つ。むき出しの人間そのものの肯定に何度でも圧倒される。 ★草野なつか (映画作家) 『天使のはらわた 赤い教室』 1979年/監督:曽根中生/脚本:石井隆、曽根中生/出演:水原ゆう紀、蟹江敬三 鑑賞後しばらく立ち上がれなかったことをよく憶えている。ひたすら鋭利で暴力的なのに、妙な軽やかさがざらりと残る。視ることしか出来ない男は<こっち>へ行く勇気もなく女はただ生きていく。生きるためだけに得た強さがあまりにも哀しく美しい。名美の瞳に宿った光だけが唯一の圧倒的な救い。私にとって大切な一本です。 ★クレモン・ロジェ(映画批評家) 『ズーム・イン 暴行団地』 1980年/監督:黒沢直輔/脚本:桂千穂/出演:宮井えりな、梓ようこ ほぼ実験映画であり、ジャッロに影響を受けながら、物語ではなく視覚的構造に全てを賭けている。殺人者のアイデンティティーはもはや問題ではない。軋む革、工具の突き刺さった裸体、画面に侵入する炎。この抽象的傑作は苦悩と喜びの関係を描写すべく現実を歪めている。 ★佐々木敦(思考家/作家) 『母娘監禁・牝』 1987年/監督:斉藤水丸/脚本:荒井晴彦/出演:前川麻子、加藤善博 『母娘監禁・牝』をはじめて観たときの驚きとときめきは今も忘れられない。 少女の自殺。ひこうき雲。薄暗い部屋。そして冷蔵庫。前川麻子の儚くも凛とした存在感は奇跡的とさえ言っていい。ロマンポルノに留まらず、私の生涯ベスト映画の一本です。 ★ジム・オルーク(ミュージシャン) 『愛欲の罠』 1973年/監督:大和屋竺/脚本:田中陽造/出演:荒戸源次郎、絵沢萠子 まるでヘビが自分の尻尾を噛むように、愛欲の罠がそれ自体を包み込んで蛇皮に変えて、人生を絞り出すまでその皮膚を脱がせ続けるのだ。 ★城定秀夫 (映画監督) 『狂った果実』 1981年/監督:根岸吉太郎/脚本:神波史男/出演:本間優二、蜷川有紀 自分が映画監督になりたいと思ったきっかけはロマンポルノとの出会いであり、その中で一番好きな監督が根岸吉太郎監督です。煙草の煙に包まれた場末の名画座で「狂った果実」を観たときの衝撃は忘れられません。 ★ディミトリ・イアンニ (キノタヨ現代日本映画祭プログラマー/ロマンポルノ研究者) 『生贄夫人』 1974年/監督:小沼勝/脚本:田中陽造/出演:谷ナオミ、坂本長利 この映画には‶小沼美学‶の極みがある。日本家屋において背徳と道徳がきしみ合い、窓の外の眩い緑が目を射る。森勝によって撮られたこの映画は、加藤泰の『陰獣』とならんでフジフィルムによるもっとも美しい達成だ。 ★中原昌也 (ミュージシャン/作家) 『悶絶!!どんでん返し』 1977年/監督:神代辰巳/脚本:熊谷禄朗/出演:谷ナオミ、鶴岡修 映画よりも現実の方がよっぽど場当たりだ!という怒りが爆発の連続。ここまで緻密にいい加減な作品を他に知らない。神代の代表作と決して断言できないところがお気に入り。 ★真魚八重子(映画ライター) 『愛に濡れたわたし』 1973年/監督:加藤彰/脚本:吉原幸夫/出演:宮下順子、青木リナ とことん女に翻弄されるという遊戯がしたい男性にとって究極の理想。女にとってもこんな奇行に付き合ってくれる男性ほど信頼できる存在はない。この愛は確かで深い。 ★渡辺大知(俳優/ミュージシャン) 『ラブホテル』 1985年/監督:相米慎二/脚本:石井隆/出演:速水典子、寺田農 エキセントリックな画面構成に興奮しました。その中で登場人物たちは切なく湿っぽく輝き、泥臭くも劇的な物語が展開されていきます。肉体を越えた人と人との縁の物語だと思います。 【日活ロマンポルノ】 日活ロマンポルノとは、1971~88年に日活により製作・配給された成人映画で17年間の間に約1,100本もの作品が公開された。一定のルールさえ守れば比較的自由に映画を作ることができたため、クリエイターたちは限られた製作費の中で新しい映画作りを模索。あらゆる知恵と技術で「性」に立ち向い、「女性」を美しく描くことを極めていった。そして、成人映画という枠組みを超え、キネマ旬報ベスト・テンをはじめとする映画賞に選出される作品も多く生み出されていった。 日活ロマンポルノ公式ページはこちらから 当『キネマ旬報WEB』にて好評連載中『あの頃のロマンポルノ』の全記事はこちらからお読み頂けます。(日活ロマンポルノ50周年記念×『キネマ旬報』創刊100年 特別コラボレーション連載企画)。 日活ロマンポルノ50周年企画「みうらじゅんのグレイト余生映画ショー in 日活ロマンポルノ」の全記事はこちらからご覧いただけます。 日活ロマンポルノ50周年新企画 イラストレーターたなかみさきが、四季折々の感性で描く月刊イラストコラム「ロマンポルノ季候」 -
【第19回】「みうらじゅんのグレイト余生映画ショー in 日活ロマンポルノ」
2021年9月17日2021年に、日活ロマンポルノは生誕50年の節目の年をむかえました。それを記念して、ロマンポルノの魅力を様々な角度から掘り下げる定期連載記事を、本キネマ旬報WEBとロマンポルノ公式サイトにて同時配信いたします。 衛星劇場の協力の下、みうらじゅんがロマンポルノ作品を毎回テーマごとに紹介する番組「グレイト余生映画ショー in 日活ロマンポルノ」の過去の貴重なアーカイブから、公式書き起こしをお届けしたします。(隔週更新予定) ■2013年8月放送 オカルト・ホラー どうも、みうらじゅんと申します。「グレイト余生映画ショー In 日活ロマンポルノ-民俗学入門−」。今回は、とても勉強になる回だと思います。「オカルトSEX」ということについて、講義したいと思います。 その時、股間がうずいた…。今宵の教材は、摩訶不思議な官能の世界。『セミドキュメント オカルトSEX』。神秘と隠微が入り交じる超常現象。未だ解き明かされない謎のSEX FILE。パンドラの箱を開けた時…。男の秘境がそそり立つ…。その瞬間新たな歴史がはじまる。 今回、紹介する作品は『セミドキュメント オカルトSEX』、いったいどんな作品なのでしょう。1974年製作ということで、ピンと来た方も多かったと思います。当然、あの方のことでしょうね。この頃に、ウィリアム・フリードキン監督の『エクソシスト』(1973年製作 第46回アカデミー賞の脚色賞と音響賞を受賞)が公開されて、世界的にオカルトブームが来ました。その時に撮られた作品が本作ですね。監督は当然、山本晋也監督(笑)!当然ですよね!脚本も山本晋也監督!当然ですよね! 「セミ」っていう言葉も当時流行りましたね。「セミ・ヌード」と言って、ちょっとだけ脱いでるとか、そういうことす。ミーンミーンって鳴く方じゃないですよ。ちょっとだけドキュメント要素が入っているということで、本編見てもらうとわかると思いますけども、ちっともドキュメントじゃありません。(笑) オカルトSEXとはなんでしょう?まず、講義する前に知らなくては、ならないのは1973年頃にユリ・ゲラーが来日したことです。 お茶の間が沸いたユリ・ゲラーとテレパシーブーム 当時ですね、日本テレビの「11PM」にも出演されて、大ブームとなりました。その、ユリ・ゲラーさんがスプーンをバンバン曲げていかれて、とても調理関係の人が困るという事件が起こりました。曲げるのは良いけれど、最終的に先まで折るということで、「この人、一体何しているんだろう」と当時、僕は思いましたね(笑)。曲げるだけではなく、折っていくということで、「テレビの前のみなさんもできますよ」って伝えて、視聴者の方が「曲がった」なんて言って、テレビ局に反響がバンバン入ったり。ユリ・ゲラーが念力を送って、止まった時計が動き出したなんていうこともありましたけど、真偽のほどはどうだったんでしょう?僕も当時見てましたけど、ちっとも不思議なことは起こりませんでした。世の中には不思議なことが起こる人と、起こらない人がいるっていうことです。それをユリ・ゲラーさんが教えてくれました。 その後に、ユリ・ゲラーさんはルームランナーという健康器具の宣伝に出らたりして、なかなかの商売人でした。その大ブームを受けて、『セミドキュメント オカルトSEX』が撮られたということですよね。 自然に右手が動き出す世にも淫らなオカルトの世界 ユリ・ゲラーは「テレパシー」なんですけど、この作品では「ポルノパシー」という言葉がでてきます。映画見ながら書き起こしてみたんですけど 「性波を送る超能力現象。通常、ポルノパシーは性器内で、その不思議な現象が起こり、現代の科学が探り得ない未知の能力」だそうです。 この作品、オープニングで驚かされるシーンがでてきます。プッシー・トークのシーンでございます。このシーン、驚きました。「私のこと無視して、お尻のほうへ進もうとしたわ。」とか言ってこれが抗議していくっていうことから、物語が始まるんですよね。うーん、よく分んないでしょ(笑)。 この映画の中で何シーンも、何ていうんですかね、シュールなシーンがでてきます。このイラストを映画を観ながら描いたんですけど、現代美術だということが、よくわかりますよね。こういう不思議なトリップしたような世界観が何回もでてきます。 それと、この映画で最も重要なのは、ホテル目黒エンペラーが出てくるってことです。これ民俗学的には重要で、お城のような外観のラブホテルが映ります。内装も映りますよ。これ民俗学的には、とても貴重です! そして、この映画で一番の名言は「ボール・キック たまける」ってことです…。まっこんな事ですよね。『セミドキュメント オカルトSEX』十分にお楽しみくださいませ。 今月の4作品を紹介したいと思います。 『セミドキュメント オカルトSEX』 当然、山本晋也監督ということで、ワクワクして観てください。 『色情妻 肉の誘惑』 1976年製作。SM好きの方はぜひとも、御覧くださいませ。 『処女のはらわた』 1986年製作、監督はガイラさん。この頃はイラストチックのポスターで、スプラッターチックな作品でございます。 『美女のはらわた』 1986年製作、またもガイラさんの監督作でございます。すごい作品でございますけども、「はらわた」ということは『死霊のはらわた』などが公開された頃なんでしょうか?しっかりした映像美をお楽しみ下さい。 ※各作品はamazon、FANZAをはじめする動画配信サービスにて配信中です。 それではあなたもグレイト余生を! 出演・構成:みうらじゅん/プロデューサー:今井亮一/ディレクター:本多克幸/製作協力:みうらじゅん事務所・日活 ■2021年09月 TV放送情報 【衛星劇場】(スカパー!219ch以外でご視聴の方)・『(本)噂のストリッパー』(【森田芳光70祭】監督・森田芳光特集) ・『昼下りの情事 噂の看護婦』 ・『女教師 汚れた噂』 ・『噂の女 朝まで抱いて』 ・『大奥秘話 晴姿姫ごと絵巻』 ・『色暦大奥秘話』 ・『色暦大奥秘話 刺青百人競べ』 ・『続・色暦大奥秘話 淫の舞』 【衛星劇場】(スカパー!219chでご視聴の方) ・『(本)噂のストリッパー』(R-15版) ・『大奥秘話 晴姿姫ごと絵巻』(R-15版) ・『OL日記 密猟』(R-15版) ■2021年 10月 TV放送情報 【衛星劇場】(スカパー!219ch以外でご視聴の方) ・『ピンクカット 太く愛して深く愛して』(【森田芳光70祭】監督・森田芳光特集) ・『(本)噂のストリッパー』(【森田芳光70祭】監督・森田芳光特集) ・『痴漢通勤バス』 ・『好色美容師 肉体の報酬』 ・『(秘)肉体調教師』 ・『昼下りの情事 噂の看護婦』 ・『女教師 汚れた噂』 ・『噂の女 朝まで抱いて』 【衛星劇場】(スカパー!219chでご視聴の方) ・『(本)噂のストリッパー』(R-15版) ・『ピンクカット 太く愛して深く愛して』(R-15版) ・『大奥秘話 晴姿姫ごと絵巻』(R-15版) あわせて、衛星劇場では、サブカルの帝王みうらじゅんが、お勧めのロマンポルノ作品を紹介するオリジナル番組「みうらじゅんのグレイト余生映画ショー in 日活ロマンポルノ♯99」、「みうらじゅんのグレイト余生映画ショー in 日活ロマンポルノ♯100」を放送! ※人気コーナー「みうらじゅんのグレイト余性相談室」では、皆様から性のお悩みや、疑問を大募集! 【日活ロマンポルノ】 日活ロマンポルノとは、1971~88年に日活により製作・配給された成人映画で17年間の間に約1,100本もの作品が公開された。一定のルールさえ守れば比較的自由に映画を作ることができたため、クリエイターたちは限られた製作費の中で新しい映画作りを模索。あらゆる知恵と技術で「性」に立ち向い、「女性」を美しく描くことを極めていった。そして、成人映画という枠組みを超え、キネマ旬報ベスト・テンをはじめとする映画賞に選出される作品も多く生み出されていった。 日活ロマンポルノ公式ページはこちらから 日活ロマンポルノ50周年企画「みうらじゅんのグレイト余生映画ショー in 日活ロマンポルノ」の全記事はこちらからご覧いただけます。 日活ロマンポルノ50周年新企画 イラストレーターたなかみさきが、四季折々の感性で描く月刊イラストコラム「ロマンポルノ季候」 -
【あの頃のロマンポルノ】女優片桐夕子による追悼 追悼映画監督 曽根中生
2021年9月10日2021年に、日活ロマンポルノは生誕50年の節目の年をむかえました。それを記念して、「キネマ旬報」に過去掲載された記事の中から、ロマンポルノの魅力を様々な角度から掘り下げていく特別企画「あの頃のロマンポルノ」。キネマ旬報WEBとロマンポルノ公式サイトにて同時連載していきます。(これまでの掲載記事はコチラから) 今回は、「キネマ旬報」2014年10月下旬号より、女優・片桐夕子による「追悼・曽根中生」の記事を転載いたします。 1919年に創刊され100年以上の歴史を持つ「キネマ旬報」の過去の記事を読める貴重なこの機会をお見逃しなく! 「お新と呼んでくれないなら返事しないからね」 片桐夕子。曽根中生作品に最もたくさん出演した女優だ。曽根監督が『ギャグの馬鹿馬鹿しさを、スラップスティックを撮ろう』と狙った『㊙女郎市場』を皮切りに、『不良少女 野良猫の青春』『㊙極楽紅弁天』の三作で「破壊的なまでに純粋無垢な女の子」という同じキャラクターを演じた。その片桐裕子が、曽根監督への想いをつづった。 「僕の周りには、こんな美人はいない」その時、曽根監督は私の顔を睨む様にして言いました。 2012年5月。渋谷のユーロスペースで曽根監督と映画評論家の山根貞男さんとトークイベントの後の打ち上げの店で私が「監督、私の顔覚えてる?」35年振りの再会でした。その言葉は又しても私を殺したのです。結局、私が自分の名前を言うまでおわかりになりませんでした(笑)。 監督が長い間消息不明だった事も全く知りませんでした。と言うのも私も長年日本に居なかったからです。昔私が20才の頃にタイムスリップします。監督と映画で仕事をしたのは確か6本位だったでしょうか。何と言っても『㊙女郎市場』は私にとって格別思い出深い作品。冒頭のシーンでおつむの弱い女郎の”お新”に扮する私は撮影現場で行き成り裸牛に乗せられ撮影所裏の川原の道を嬉しそうに進むのですが、牛に乗ろうとすればするほど牛が暴れるんです。嫌がる牛の悲鳴に近い声を無視してスタッフ達が必死に牛を押さえつけ「さあ夕子今だよ。早く乗れ!」拒み続ける牛に私は殺される、と思いました。馬でも をつけて本番に備えて練習するのに低予算のためか練習無し。やっと死ぬ思いで乗れたと思ったら、直ぐ本番。若冠20歳の女優は決して文句は言った事はありませんでしたが恐さでずっと震えていました。 ▲『㊙女郎市場』より 演技について監督は何も言いませんでした。いつも下手で他の監督達を手こずらせる定評のある私には驚きでした。何か演技に対する呪縛みたいなのが解けて自由にセットを駆け巡る事が出来たんです。嬉しくって楽しくって朝から全開の毎日でした。 皮肉にもあの牛をすき焼きにして食べてしまうシーンは辛かったです。私は肉が大嫌いでしかもこれ又嬉しそうに肉を頬張らなきゃあならないんです。本番が終わってセットの隅で吐き気と涙を堪えていましたっけ。 ▲『㊙女郎市場』撮影風景 一笑に付されて当然ですが今思えば私は何て幸せ者だったんでしょうか。撮影中からこの映画の出来栄えはわかっていました。撮影が終わりに近づくと監督、スタッフ、そして役のお新と別れるのが辛いものでした。よっぽど名残惜しかったのでしょう。周りの人々に強制的に”お新”と呼ばさせ「お新と呼んでくれないなら返事しないからね」って。他の曽根組に入ってもいつも身体ごとズボッと漬かってしまい撮影休日は私には必要ありませんでした。ある日伊勢丹に日活の衣装部の鎌さんが他の組で使う衣装を買いに行くと言うのでついていきました。オシャレと言うものに全く興味が無かった私は伊勢丹で少し割り引いてもらって帰ると言う利点もあったので早速二着も買いました。高校を卒業して以来初めて服を買ったんです。未だ覚えています。サーモンピンクのスタジオVの体にピッタリフィットのワンピースとブルーのフリフリのルーズなワンピースです。監督の心を射止めたかったのです。撮影が終わって日活の食堂で監督とすれ違っても私のピンクやブルーの鮮やかな色は監督の目の中には、まるで映っていなかったんですね。 それ以来、最も簡単に私は監督の事を忘れてしまいました。35年後の再会まで。 日活100周年パーティでお会いしたのは再会4回目かな?長い間苦労なさった監督のお顔を正視することが出来ず隣りに座って横から眺めていました。それと20代の頃とは明らかに変貌している私自身を監督の前で曝け出す勇気を持ち合わせていませんでしたので。 最後にお会いしたのは今年の6月。監督が住み慣れた東京と監督業を離れ最後まで住んでいた大分の臼杵。その日女優の白川和子、宮下順子と私の三人は臼杵の映画のイベントに招待されました。傍に作られたステージに上って監督を含め4人でトークしましたね。臼杵の人々が知っているのでは監督の曽根さんではなく、ひらめの養殖や何やらゴミの焼却炉の発明で一躍有名になった我等のチュウちゃんです。そば屋のおかみさんたちがそう呼んでいました。打ち上げの途中、よほど監督は辛かったと見えて青白い顔をして車イスで帰られました。それが私が見た最後のお姿でした。 先日監督の出版された本について座談会がありました。ほとんど私の知らなかった監督のネガティブな事でした。本が売れなくなるよ・・・。それが影響したのか私自身少しずつ軌道修正している自分に驚いています。62才の女の想いなんていい加減なものなんですね。でも一つ言える事は女優冥利に尽きると言う言葉なんかに当てはまらない。もっとはるかに女優として私は心の底から曽根監督、貴男に感謝している事だけは永遠に不滅です。あちらでは何か他の仕事でも思案中でしょうか?いやいや監督、貴男は映画一本でやって下さい。もしもでるよ。主演女優が未だに決まりそうにないなら私も候補の一人に考えて頂けませんか?但し期間だけは待って頂けると言う条件で。楽しみです。 2014年10月下旬号「キネマ旬報」より転載 文・片桐夕子 片桐夕子 1952年生東京都昭島市生まれ。70年、日活入社。曽根中生監督作品では72年の『㊙女郎市場』のお新役を皮切りに、『不良少女 野良猫の性春』『㊙極楽紅弁天』(73)に主演。『くノ一淫法 百花卍がらみ』(74)、『嗚呼!!花の応援団 役者やのォー』(76)、『太陽のきずあと』(81)に助演。 「私、片桐夕子は33歳の時父親の死をきっかけに10年程日本に居ませんでした。その間、結婚、出産、離婚もしました。決して女優業を辞めた訳ではありませんが今では「名前は聞いた事があるけど顔がどうもねェ?」なんて言われているんじゃないかと思います。マア勝手に帰って来ているのです。それに「仕事」と言う私にとってチョット皮肉っぽい名前の事務所に所属しています。」 日活ロマンポルノ 日活ロマンポルノとは、1971~88年に日活により製作・配給された成人映画で17年間の間に約1,100本もの作品が公開された。一定のルールさえ守れば比較的自由に映画を作ることができたため、クリエイターたちは限られた製作費の中で新しい映画作りを模索。あらゆる知恵と技術で「性」に立ち向い、「女性」を美しく描くことを極めていった。そして、成人映画という枠組みを超え、キネマ旬報ベスト・テンをはじめとする映画賞に選出される作品も多く生み出されていった。 オフィシャルHPはこちらから 日活ロマンポルノ50周年新企画 イラストレーターたなかみさきが、四季折々の感性で描く月刊イラストコラム「ロマンポルノ季候」