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  • 2025年1月14日に生誕100年を迎える、日本だけでなく海外でも今なお評価が高い作家・三島由紀夫。これを記念して、彼の小説を映画化した「美徳のよろめき」(1957年)、「愛の渇き」(1966年)、「春の雪」(2005年)と、三島と東大全共闘の学生たちとの討論会の模様を収めたドキュメンタリー「三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実」(2020年)がチャンネルNECOにて1月6日より放送される。 情事に走る女性を、月丘夢路が演じた「美徳のよろめき」 三島由紀夫と映画のつながりは深く、自作を映画化した「純白の夜」(1951年)や「不道徳教育講座」(1959年)に端役で出演した後、増村保造監督の「からっ風野郎」(1960年)には主演している。さらに「憂国」(1965年)では製作・監督・原作・脚本・主演を務めるなど、彼にとって映画はもうひとつの表現メディアであった。それだけに映画化作品も多く、『潮騒』だけでも5回映画化されている。 今回放送される「美徳のよろめき」は、彼が書いた風俗小説を中平康監督、新藤兼人脚本で映画化したもの。良家から嫁いだ気品のある結婚3年目の主婦が、結婚前にキスを交わした男性と再会して、彼との情事を夢見るようになっていく。夫との夜の営みも少なくなって、性的な欲求を抱えるヒロインを、当時30代半ばの女盛りにあった月丘夢路がはまり役で演じ、“よろめき夫人”として脚光を浴びた。夫役に三國連太郎、彼女の情事の相手に葉山良二というキャスティング。情事を象徴するのがキスというのは時代性を感じるが、鬼才・中平監督が揺れる女性心を手堅く映し出した作品になっている。 エロティックな浅丘ルリ子に酔う、三島も絶賛した「愛の渇き」 「愛の渇き」は、三島由紀夫も絶賛した1本。富豪の長男に嫁いだ悦子は、夫が若くして亡くなり、今は義父の愛撫の対象になっている。彼女は下男の三郎の若い肉体に魅せられ、精神と肉体のバランスを崩していく。 蔵原惟繕監督と主演の浅丘ルリ子は、これが6度目のコンビ作だったが、女性のエロティシズムを描くという意味では、本作が頂点だろう。終始和服姿の浅丘ルリ子は、衣の中に性的欲求を封じ込めているように見えながら、冒頭の中村伸郎演じる義父の髭を剃っているときに一瞬きらめく殺気や、三郎を演じた石立鉄男の白いシャツの背中に爪を立てて傷つけるときの狂気など、瞬間にほとばしる“性”に根ざした感情の高ぶりが印象的。その悶々とした想いが最後に惨劇を生んでいくのだが、彼女の和服が乱れたとき、内なるフェロモンが解き放たれて、強烈なエロティシズムが漂う。当時、製作した日活はその観念的な愛の表現ゆえか、1年間映画をお蔵入りにしたが、1967年に公開された本作はキネマ旬報ベスト・テン日本映画第7位にランクインしている。 妻夫木聡、竹内結子のコンビが、華族の愛を演じた「春の雪」 「春の雪」は三島の長編『豊饒の海』4部作の第1部を、行定勲監督が妻夫木聡と竹内結子主演で映画化したもの。大正初期。侯爵家の松枝清顕と伯爵家の綾倉聡子は、両思いだがうまく愛情を表現できない。そのうち聡子は宮家の洞院宮治典王に求婚され、彼女は清顕の愛を確かめようとするが不発に終わり、縁談を受け入れる決意をする。一度離れたことで彼女への愛を自覚した清顕は、聡子との禁断の愛へと足を踏み入れていく。 大正時代の華族の世界を、ホウ・シャオシェン監督の映画でも知られる台湾のカメラマン、リー・ピンビンが映し撮った美しい映像が素晴らしい。妻夫木と竹内は、硬質な装いの中に狂おしいまでの愛を秘めたカップルを、絶妙のバランスで表現している。またこの映画を企画した藤井浩明は、1950年代から三島の作品に携わってきた元大映のプロデューサー。彼の人脈もあって、大楠道代、岸田今日子、18年ぶりに映画出演した若尾文子など、かつて大映映画を彩ったスターたちが脇を固めていることでも見逃せない文芸大作だ。 東大のエリートたちの攻撃に立ち向かう、三島が見もの! 「三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実」は1969年5月13日に東大駒場キャンパスで行われた、三島と東大全共闘との討論会の全貌を収めたドキュメンタリー。会場の900番教室には1000人を超える学生が集まり、天才作家・三島由紀夫を論理で攻撃しようと血気盛んな全共闘の面々が責め立てる。体制に反逆する東大のエリートたちの、熱い論戦も見ものだが、注目したいのは三島の反応だ。冷静を装いながら終始タバコを吸い、その煙草をどこに置くかまでが、自分を表現するパフォーマンスになっている。学生の攻撃を三島由紀夫という存在感で受け止めて、跳ね返していく緊迫したやり取りが面白い。 三島はこの討論会から一年半後の1970年11月25日に自ら割腹して果てるのだが、そのときは彼が市ヶ谷駐屯地で自衛隊の隊員たちに、決起を促す演説をした。彼の演説は隊員たちの心を動かすことはなかったが、もしかしたら彼は、論戦が生む熱気の手ごたえを、この討論会で感じたのかもしれない。 またこの作品には平野啓一郎や内田樹、瀬戸内寂聴などが登場して、三島について語っているので、彼の人となりを知る上でも貴重な作品である。 三島由紀夫は子供の頃には虚弱体質で、激しい運動を止められていた。その反動からか、1955年頃からボディビルで体を鍛え、自らの肉体をオブジェとして写真集や映画の出演などで、人に見せつけていった。言わばビジュアルイメージをセルフプロデュースした最初の作家で、その行動や言動は常に刺激的だった。そんな時代の先端を走り続け、晩年にはノーベル賞に最も近いと言われた作家が生み出した愛と性の世界を、今回の放送作品で味わってほしい。   文=金澤誠 制作=キネマ旬報社 放送作品 「美徳のよろめき」放送日:1月6日、14日 ●1957年/日本/99分 監督:中平康 原作:三島由紀夫  出演:月丘夢路、三國連太郎、葉山良二、南田洋子 ほか “よろめき“という流行語が生まれたほど話題を呼んだ三島由紀夫のベストセラーを、新藤兼人の脚本で中平康が映画化。情事を夢見る若き人妻に月丘夢路が扮した文芸作品。 躾が厳しく門地の高い家に育った節子は親の決めた相手と結婚し、結婚によって男性の二字を知ったが、3年目ごろから夫婦のいとなみも間遠になっていた。そんなある日、節子は結婚前に避暑地で知り合った青年・土屋と再会する…。 ©日活   「愛の渇き」放送日:1月14日、31日 ●1966年/日本/本編101分 監督:蔵原惟繕 原作:三島由紀夫 出演: 浅丘ルリ子、山内明、中村伸郎、石立鉄男、小高雄二 ほか 蔵原惟繕が『執炎』、『夜明けのうた』に続いて監督した、浅丘ルリ子の主演作。三島由紀夫原作の映画化。浅丘ルリ子が着物姿の未亡人を妖艶に演じて魅惑的。 阪神間に広大な土地や農園を所有する富豪・杉本家の長男に嫁いだ悦子は、夫が若くして死んだ後も杉本家に留まり、義父でやもめの弥吉の妾のような生活を送っていた。悦子が唯一心を動かされるのは下男の三郎だった。しかし、女中の美代が三郎の子を妊娠しているとわかり、悦子の心は乱れ、三郎が帰郷している間に美代のお腹の子を堕ろさせてしまう…。 ©日活   「春の雪」放送日:1月14日、26日 ●2005年/日本/154分 監督:行定勲 原作:三島由紀夫 出演:妻夫木聡、竹内結子、高岡蒼佑、及川光博、田口トモロヲ、高畑淳子、石丸謙二郎、宮崎美子 ほか 三島由紀夫の同名小説を、妻夫木聡×竹内結子で映像化した、儚くも美しい悲恋の物語。 侯爵家の子息・松枝清顕と伯爵家の令嬢・綾倉聡子は、幼なじみであり、互いに想い合う関係だった。しかし、政略結婚により聡子の縁談が決定してしまう。一度はすれ違った二人だったが、一度離れたことで互いの愛情を再認識し、人目を忍んで密会を重ね始める。しかし、それは悲劇の幕開けであった。 ©2005「春の雪」製作委員会   「三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実」放送日:1月14日 ●2020年/日本/111分 監督:豊島圭介 出演:三島由紀夫、芥正彦、木村修、橋爪大三郎、篠原裕、宮澤章友、原昭弘、椎根和、清水寛、小川邦雄、平野啓一郎、内田樹、小熊英二、瀬戸内寂聴 ほか ナビゲーター:東出昌大 稀代の天才作家・三島由紀夫と、血気盛んな反逆のエリート・東大全共闘の討論会の全貌を描いた衝撃のドキュメンタリー。時は1969年5月13日。東大駒場キャンパスの900番教室に1000人を超える学生が集まり、三島を今か今かと待ち受けていた。どこを切っても正反対、ベクトルは真逆の三島と東大全共闘。果たして、言葉の銃で撃ち合い、論理の剣で斬り合う、スリリングな討論アクションによる死闘の行方はー。 ©2020 映画『三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』製作委員会 ▶映画・チャンネルNECOの公式HPはこちら    
  • [caption id="attachment_45460" align="aligncenter" width="1024"] 「喜劇 急行列車」[/caption] 1月はレジェンドと呼ばれる俳優、監督、人気シリーズの作品が登場。俳優では第1作の公開から55周年を迎えた「男はつらいよ」シリーズの主演スター、渥美清が〝寅さん〞を演じる前に主演した喜劇映画を放送する。1967〜68年に3本が作られた瀬川昌治監督による喜劇「列車」シリーズは、毎回、渥美清演じる当時の国鉄の職員が、ユニークな乗客たちと繰り広げる騒動を描いた鉄道コメディ。第1作「喜劇 急行列車」(67)では、渥美は奥さんがいるのに佐久間良子扮する女性に惚れ、楠トシエ演じる奥さんから浮気を疑われて四苦八苦する。この作品では東京̶長崎間を走る特別急行列車『さくら』や東京発西鹿児島行の『富士』が物語の舞台になるが、国鉄が全面協力した車内での撮影は鉄道ファンには興味深いだろう。3作通して佐久間がマドンナ的な役柄で登場。彼女との恋が実らないところは、「男はつらいよ」の〝寅さん〞を思わせる。また他にも渥美清が野村芳太郎監督と組んだ「拝啓天皇陛下様」(63)、「続 拝啓天皇陛下様」64)、「拝啓総理大臣様」(64)と続いた、「拝啓」シリーズ3本を併せて放送する。   [caption id="attachment_45463" align="aligncenter" width="1024"] 「吉原炎上」[/caption] 五社英雄監督はフジテレビのディレクターから映画監督になった、テレビ界から映画業界に進出したパイオニア的存在。60 年代からスタイリッシュな映像と、豪快な殺陣による男性主体のアクションを得意としたが、その五社監督が〝女の情念〞にスポットを当てた大作映画を連発し、第2の黄金期を作った80年代の東映作品5本が登場する。その皮切りとなったのが、夏目雅子が俠客の娘を演じて注目された宮尾登美子原作の「鬼龍院花子の生涯」(82)で、今回は同じく宮尾登美子原作による「陽暉楼」(83)、「櫂」(85)と続いた〝高知三部作〞を一挙に放送。他にも明治初期の北海道・樺戸集治監を舞台にした「北の螢」(84)は、今だと『ゴールデンカムイ』のファンにもお薦めしたい一本である。中でも注目は、明治時代後期の吉原遊郭を舞台に、名取裕子など5人の俳優が演じる花魁の愛憎を描いた「吉原炎上」(87)。この作品では明治44年に焼失した吉原を、琵琶湖畔に建てたオープンセットで再現。150人の群衆が逃げ惑う迫力ある炎上シーンを含め、見どころ満載のスペクタクル大作だ。   [caption id="attachment_45462" align="aligncenter" width="720"] 『必殺シリーズ10周年記念スペシャル 仕事人大集合』[/caption] 一昨年、シリーズ開始から50年を迎えた『必殺』は、長い人気を保ち続ける時代劇のレジェンド作品。金を貰って許せぬ悪を倒す殺し屋たちを描いたこのシリーズからは、藤田まこと扮する中村主水という名物キャラクターも誕生した。その中村主水を中心とする「必殺仕事人」のメンバーが活躍する、『必殺スペシャル』が集中放送される。スペシャルでは通常の作品よりも物語のスケールが大きく、倒す悪も強大。また時代設定も忠臣蔵から桜田門外の変、果ては主水たちが西部開拓時代のアメリカへタイムスリップしてカスター将軍率いる第七騎兵隊と戦うものまであり、面白ければ何でもありの自由な発想で作品が作られている。中でも『必殺シリーズ10周年記念スペシャル 仕事人大集合』(82)は、棺桶の錠や知らぬ顔の半兵衛、仕掛の天平、寅の会の元締・虎など、シリーズを彩った人気キャラが再び登場する、ファン必見の作品だ。 文=金澤誠 制作=キネマ旬報社(「キネマ旬報」2025年1月号より転載)   BS松竹東急 BS260ch/全国無料放送のBSチャンネル ※よる8銀座シネマは『一番身近な映画館』、土曜ゴールデンシアターは『魂をゆさぶる映画』をコンセプトにノーカット、完全無料で年間300本以上の映画を放送。 ■1/6[月] 夜8時 「喜劇 急行列車」 監督:瀬川昌治 出演:渥美清、西村晃、小沢昭一、大原麗子、江原真二郎、佐久間良子 ほか © 東映 ■1/14[火] 夜8時 『必殺シリーズ10周年記念スペシャル 仕事人大集合』 監督:工藤栄一 出演:藤田まこと、三田村邦彦、鮎川いずみ ほか © ABCTV/松竹 ■1/30[木] 夜8時 「吉原炎上」  監督:五社英雄 出演:名取裕子、二宮さよ子、藤真利子、西川峰子、かたせ梨乃 ほか © 東映 詳細はこちら:https://www.shochiku-tokyu.co.jp/special/eiga/  
  •   障がい児を通して親子の絆を綴った打海文三の同名小説を、「告白」の中島哲也が監督を務め、キャストに西島秀俊、満島ひかり、黒木華、宮藤官九郎、柴咲コウ、塚本晋也、片岡鶴太郎、佐藤二朗、役所広司を迎えて映画化した「時には懺悔を」が、6月より全国公開される。ティザービジュアルが到着した。     中島監督が構想15年を費やし、7年ぶりにメガホンを執った本作。家族から目を背けた佐竹(西島秀俊)、子を生きる糧にした明野(宮藤官九郎)、娘に捨てられた聡子(満島ひかり)、産んだ子を愛せなかった民恵(黒木華)、他者に関心を持てなかった米本(佐藤二朗)、子にすべてを捧げた由紀(柴咲コウ)。事情を抱えた人々のドラマが観る者の心に迫る。 中島哲也監督コメント  「この子は生まれてこないほうが幸せでした」。劇中のセリフですが、そう言われた子どもがそれでも生まれ、多くの人々の心を動かし、その人の人生に影響を与える。望まれなかった命が誕生し誰かの救いになって、この世界に生まれてきた価値があると証明する。そのことと正面から向き合った映画だと思います。  過剰に人を攻撃してしまったり、心に傷を負ったまま立ち上がれなかったり、あるいは自ら壁を作りその中に閉じこもっている…そんな欠点だらけの大人達が、重い障がいを持ち生まれてきた幼い命に出会い、どう変わっていくのか。  原作小説を読んでから約20年。ずっと映画化を切望しましたが難しいと言われ続け、中止になってもおかしくない事態に何度もぶつかりながら、障がい児関連の人々など多くの人の協力と努力に支えられ、やっと完成しました。この20年間に世の中の価値観が少しずつ変わり、こういう映画が人々に受け入れられる土壌がようやく整ったことを強く実感しますし、嬉しい限りです。  主人公である佐竹同様、極度のヘソ曲がりの私ですが、この映画にはかつてなく自分の気持ちが素直に出ている気がします。伝えようとしていることの大切さや重さを考えれば気取った演出などしている場合じゃなかった。そこに監督としてのエゴを入れる余地は全くありませんでしたし、スタッフ・キャストを含め全員で作ったという実感を強く抱いています。  だからこそ、観てくれた人がこの映画をどう感じどう受け止めてくれるか、ものすごく楽しみです。どうか是非、劇場に足をお運び下さい。   「時には懺悔を」 監督;中島哲也 出演:西島秀俊、満島ひかり、黒木華、宮藤官九郎、毎熊克哉、鈴木仁、烏森まど、山﨑七海、唯野未歩子、野呂佳代、長井短、しんすけ、山下舜太、諸角優空、柴咲コウ、塚本晋也、片岡鶴太郎、佐藤二朗、役所広司 原作:打海文三「時には懺悔を」(角川文庫/KADOKAWA) 脚本:中島哲也、門間宣裕 制作:TIME、さざなみ 配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント ©︎2025映画『時には懺悔を』製作委員会 公式サイト:https://www.tokizan.jp
  • 錚々たる韓国映画の監督陣が、ドラマで演出するようになり、今や映画とドラマの垣根はあいまいに。そんな過渡期ともいえる韓国エンタテインメント業界に行定勲監督が参入。韓国では老舗の地上波放送局KBSで放送され、日本ではLeminoで独占配信中の韓国ドラマ『完璧な家族』の演出を担った。『韓国テレビドラマコレクション2025』(キネマ旬報社)に掲載するインタビューに収まりきらなかった、驚きのエピソードをいち早くお届けします。 韓国の地上派放送局KBSで演出することになった経緯 ― 行定監督は、映画や映画祭を通じて韓国との関係性を築き上げてきました。今回の連続ドラマのオファーはやはり、その関係性の延長線上にあるものでしょうか? 韓国側が僕を推薦してくれたみたいで、僕の名前を企画書に載せてキャストに回してみたら反応が良かったらしく。そうやって集まってくれたキャストやスタッフは、僕のことを知ってくれていましたね。助監督、撮影技師、照明技師ら映画もドラマもやりたいスタッフたちは、僕の作品はもちろん、釜山国際映画祭で見た日本映画の話をしていて、ある種のリスペクトを感じさせてくれました。ただ、韓国では、映画の人たちは僕の事をよく知ってくれているけれど、テレビ界の人には全く知られていない事がわかりました(笑)」 ソニの家は撮影所に建てたもの。天気に左右されず撮影時間を短縮化 ―予算は潤沢でしたか? 「潤沢です。日本では到底無理なことをやらせてくれました。例えば主人公のソニが両親と暮らす2階建ての一軒家と庭は、坡州(パジュ)にあるCJ ENM スタジオセンターの巨大な倉庫に作った総建築です。僕はこのドラマを“家族とは何なのか?”という物語にしたかったので、ソニの家は登場人物のひとつですし、家をどう表現するかがとても重要だったんです。オープンセットも検討しましたが、どうしても天気に左右されるので、合成できる環境をスタジオの中に作った方がいいという技術的なアイデアを採用して、背景をグリーンバックで囲みました。日本ではあまり合成をやりたがらないんですけど、今回はこの合成が逆に新鮮で良かった。家のシーンをグリーンバックで撮って、ロケで撮ってきた庭の映像にセットの家をはめ込んでいるんです。合成の映像が持ついい意味で不自然な、妙な空気感が結構気に入っています」 ―日本ではこのやり方はしないものですか? 「予算がかかるから、日本では『ロケにしよう』となっちゃうんですよね。ロケはさっきも言ったように天気に左右されるから、余計に時間がかかる分、撮影で粘れないということが起きてしまう。韓国はセットにお金を大きく使う。今回もおかげ様で、100日で撮る予定だったものを70日で撮れました。廊下から台所へ、そこから2階まで行くショットをワンカットで撮れるのでだいぶ時間を節約できる。人物を大きく動かせるというメリットもあります。このドラマにはそういうショットがいくつもあります」 ―流れるようなカメラワークに合わせて、クラシック音楽をチョイスしたのでしょうか? 「それは韓国の制作会社の意向です。僕はもっと現代的な、打ち込みのアンビエント・ミュージックにしたかったんですけど、韓国の地上波ドラマはもっとドラマチックな音楽で、芝居よりも先に盛り上げる。僕が『このあたりから』と指定している箇所よりもだいぶ前から流し始めちゃうんですよ。先に音楽が鳴ってしまうと芝居の入口が台無しになるからやめてほしいと言っても、KBSさんの判断で最終的にそうなっていました。それが韓国ドラマの歴史と文化ですし、韓国ドラマの人気の理由のひとつですよね。僕が今回韓国に来たのは“韓国ドラマ”をつくるため。そこに入り込んだ僕が、作品づくりの邪魔をしてしまったら、本末転倒になってしまうからね」 第一話の冒頭のネタバレには、理由がある! ―最終的なジャッジはKBSがして、それを受け入れるというやり方でしたか? 「そうですね。全話の編集を終えて、納品して日本に帰ってきてから、KBSさんが何箇所か内容を作り変えました。もちろん基本ラインは僕が演出したものですし、追加撮影もしていません。一番わかりやすいのは、第1話の冒頭です。主人公ソニの友人であるギョンホ(キム・ヨンデ)がいきなり死ぬシーンは、僕の意向ではありません」 ―え!? 監督に断りもなく? 「KBSさんからあらかじめ『キム・ヨンデのシーンから始めたい』と言われていたら、僕はあんな風には撮らないかな。僕の編集は、最初に血まみれで歩くソニが家に帰ってくるところ以降です。だから、最初の5分を切ったものが、音楽の入り方などは違いますが、僕のオリジナルバージョンに近いです。冒頭のそのシーンはネットで「謎のネタバレ」と言われていましたが、僕に対して評論的な視点で意見を言う友達も、第1話を見終わった後に「あの始まり方は効果的じゃないよね」と言ってきて。それが2話を見終えて『え? ギョンホを殺したのは誰だ? という話だったんじゃないの? 12 話あるのにどうなるの?』となり。そこから徐々に想像と全然違う家族の話になっていくので、彼は『逆にあの冒頭はあれでもよかった』と言っていました。僕が『冒頭5分はやっぱりない方がいいと思ってる』と言ったら、『第1話の冒頭なんてどうせみんな忘れるよ』と言われました。確かに僕も、ちょうど『涙の女王』を8話ぐらいまで見ていたんですけど、1話をすっかり忘れていました。周りで見ている人に聞いても、みんなすぐに答えられない。なんてこともあるよね(笑)」 ―日本より話数が多い作品もありますし、展開が早いから最初の方を忘れてしまいがちですよね(笑)。 「でもなんとなく身体的に『面白かったね』という印象が残る。それが韓国ドラマのパワーだと思います」 韓国とのコラボレーションは今後も続く? ―行定監督の韓国とのコラボレーションは今後も続くのでしょうか。 「韓国と日本の合作を企画中です。昭和の名作小説を原作に、日本でつくろうとしていたんですけど、今回韓国で撮影中に、登場人物を韓国人と日本人にして、舞台を現代の韓国と日本にした方が、原作小説が言わんとしている本質が明確になるし、広がりが出ると思ったんです。韓国のKBSで流れるドラマを撮ったことのある監督が、また韓国で撮ることになれば、今回とはまたちょっと違う角度で韓国の人たちと向き合えるかなという期待もあります。新たな出会いを重ねながら、韓国の俳優やスタッフたちと、また一緒に作品をつくりたいですね」   文=須永貴子 制作=キネマ旬報社 https://www.youtube.com/watch?v=OGMmAgAvhew 『完璧な家族』 【あらすじ】 誰が見ても幸せで完璧に見えた家族だったが、娘のソニが巻き込まれた殺人事件をきっかけに、家族の秘密が次々と明らかになっていく。事件に関わるそれぞれの証言が食い違い、誰も信じられない。真実の相対性に迫る、緊張感たっぷりのミステリーであり、事件に巻き込まれた家族の物語が、今、幕を開ける! 【作品データ】 完璧な家族(완벽한 가족) KBS/全12話 演出・脚色:行定勲 脚本:チェ・ソンゴル 出演:キム・ビョンチョル、ユン・セア、キム・ヨンデ、パク・ジュヒョン、ユン・サンヒョン、チェ・イェビン、イ・シウ、キム・ドヒョン、キム・チャンワン、キム・ミョンス © Victory Contents Co., Ltd. Leminoにて全話独占配信中 「完璧な家族」公式サイト | Lemino 『韓国テレビドラマコレクション2025』 2002年よりキネマ旬報社が毎年発行してきた‟元祖”韓国テレビドラマムック、韓国テレビドラマコレクション。2025年1月15日発売する、2025年版の表紙は、キム・ヨンデ。若手俳優のなかでも出色の存在で、『損するのは嫌だから』『昼に昇る月』『完璧な家族』と、出演作が軒並み話題に。2025年も注目ドラマの放送が控えるネクストスターが、本誌だけに今の気持ちを語ってくれました。巻頭特集は、『2024韓国ドラマ徹底解剖』。旬の俳優や、精鋭執筆陣による2024年の推しドラマをピックアップ。韓国の地上波KBSドラマを初めて演出した、行定勲監督のインタビューを掲載。制作サイドから韓国ドラマの魅力に迫ります。OST、オーディオブック、ドラマの原作本と、韓国ドラマを多角的に楽しむ方法をご案内。さらに、2024年の韓国映画事情からおすすめ映画レビューまで。2024年に話題になった韓国のエンタテインメントを、各専門のエキスパートと共にひもときます。   全国書店・ECストアにて2025年1月15日発売 2,530円(税込)※電子ブック版は2,500円(税込) A5版/カバー・並製/608頁/キネマ旬報社刊 予約購入はこちらまで ⇒KINEJUN ONLINE
  •   デビュー5周年を迎えたYOASOBIによる初のドームライブより、東京ドームでのファイナル公演を捉えた「劇場版 YOASOBI 5th ANNIVERSARY DOME LIVE 2024 “超現実”」が、2月21日(金)より全国公開される。ポスタービジュアルと予告編が到着した。     当日披露した全楽曲に、ドキュメンタリー映像を加えて構成。YOASOBIの“超現実”の世界を、劇場の大スクリーンと5.1chサラウンドで体感したい。 なお公開前日の2月21日(木)には、全国30館で先行上映を実施。当日は〈“超現実” CREW PASS Key Chain〉が配布され、YOASOBIのメッセージ映像が流れる。詳細は公式サイトでチェックを。   https://www.youtube.com/watch?v=BpSSAK5tyPg   「劇場版 YOASOBI 5th ANNIVERSARY DOME LIVE 2024 “超現実”」 出演:YOASOBI 配給:WOWOW 上映尺:158分 特設サイト:https://www.wowow.co.jp/film/yoasobi/ ©︎2025 WOWOW

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