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エクトール・バベンコ
ユダヤ系東欧人の血を引いている。少年時代は、週に５～６本も見るほど映画漬けの毎日で、イングマル・ベルイマン、ルキノ・ヴィスコンティ、溝口健二らの影響を受けて、14歳の頃には早くも監督を志していた。18歳で家出してヨーロッパを転々とし、イタリアで映画のエキストラをしたりした後、72年にブラジルの市民権を得てサン・パウロに落ち着く。グラウベル・ローシャをリーダーとする若手映画作家の運動〈シネマ・ノーヴォ〉に加わり数本のドキュメンタリー短編を撮った後、76年に初の長編“O Rei Da Notte”を完成。そして、サンパウロのストリートで逞しく生きていく浮浪児を追いかけた第３作「ピショット」が、ブラジル国外でも上映され、80年ロカルノ映画祭グランプリ、ニューヨーク映画批評家賞の外国語映画賞等を受賞、国際舞台への道が開けた。85年には初の英語映画「蜘蛛女のキス」でアカデミー監督賞にノミネート。一貫して社会の枠からはみ出した人間に関心を抱き続けるバベンコは、30年代アメリカの浮浪者たちの魂のさすらいを描いた「黄昏に燃えて」（87）を執念で完成。高貴な精神のみが持つ悲しみを画面に定着させた。
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