「半落ち」のストーリー

3日前、アルツハイマー病を患う妻・啓子を自宅で殺害したとして、現役の警部である梶聡一郎が川城中央警察署に自首して来た。“落としの志木”の異名を持つ捜査一課強行犯指導官・志木和正の取り調べに対し、素直に犯行を認める梶。しかし、彼は自首するまでの2日間に関しては決して口を割ろうとしなかった。“空白の2日間”に何があったのか? 何故、梶は最愛の妻を殺しておきながら、後追い自殺をしなかったのか? 事件を表沙汰にしたくない県警幹部たちは、誘導尋問によって捏造した事実で穴埋めし嘱託殺人として処理しようとするが、志木は納得がいかない。そんな中、事件はマスコミにリークされ、空白の2日間に関する梶の目撃情報が寄せられて来る。梶は、東京・歌舞伎町に行っていた! その目的を探るべく、個人的に捜査を続ける志木やスクープ記事を狙う東洋新聞の女性記者・中尾。彼らの調査によって、次第に真相が明らかになっていく――。実は、梶はその2日の間に、ひとりの少年に会いに行っていた。7年前、急性骨髄性白血病で13歳のひとり息子・俊哉を亡くしたのをきっかけに、ドナー登録していた梶からの骨髄移植によって命を救われた少年。彼に夫との命の繋がり=俊哉を感じていた啓子は、自分が壊れてしまう前に彼と一目会うことを秘かに切望していた。彼女に乞われ殺害した後、偶然見つけた彼女の日記の中にそのことを発見した梶は自殺を諦め、啓子に代わって彼に会いに行くことを決意。そして、少年が活き活きと働く姿を目の当たりにした彼は、ドナー登録の有効期限である51歳の誕生日まで生きる決心をし、少年がマスコミに曝されることを恐れ2日間のことは口を閉ざしたのだった。結局、梶は裁判の中でも最後までそれを自供しなかった。梶に4年の実刑判決が下った。護送される梶に、志木は車窓から少年・池上に会わせる。池上は梶へ言葉を送る……「生きて下さい」。