「タイガー・シャーク(1932)」のストーリー
アメリカの太平洋岸の漁夫仲間でマイク・マスカレナ船長といえば知らぬ者もない腕の良い漁夫だった。彼の年収は1万ドルをくだらなかった。彼は厳格な船長だったが、残酷な男ではなく正しい取り引きをするし友情もあった。彼の悲しみは女たちが少しも相手にしないこと、彼が女の愛を勝ち得ないことだった。その原因の大半は彼の右手が鉄の爪であることだった。彼の親友たる運転士のパイプス・ボーレイが鮫の餌食になろうとしたとき、助けに赴いたマイクは右手を鮫に与えなければならなかったのだった。その時以来マイクとパイプスは刎頚の交わりをした。マイクの部下のマニュエルが死んだとき、その孤児の娘キタが自殺しようとしたのを救い親身の世話をしたのはマイクだった。マイクはある日思い切ってキタに結婚を申し込んだ。キタは彼にはほかに恩返しの方法もなかったので、愛してはいないけれど妻になろうと返事した。結婚式は直ちにあげられた。パイプスはキタがマイクの金を目当てに結婚したのだと誤解したが、彼女の報恩の一念で結婚したことを知るやキタに敬意をさえ覚えるようになる。マイクは幸福だった。彼は妻と親友が恋に陥りつつあることを知らなかった。ある航海を終えて入港したときパイプスが大けがをしていたので、無理に彼を自分の家に伴い、医薬の代も彼が払うことにし、キタに看護させてマイクは出航した。キタは愛するパイプスの看護であるから夜も寝ないで一所懸命に尽くした。その甲斐があってパイプスの傷は意外に早く直ったのである。パイプスは命を2度も救った親友を裏切りたくないので逃げ出そうとしたがキタは彼を行かせない。パイプスも心底では深く愛しているキタに取りすがられては、情なく振り切って立ち去ることはできない。かくて2人の情熱は燃えたのだった。ある日2人が抱擁してるときマイクが突然現れた。マイクの2人に対する愛はたちまち憎悪と変じた。彼は2人を船に監禁して鮫の群棲する海へと急いだ。マイクはパイプスを殴りつけてボートに乗せ、銛を投げて穴をあけた。さらに1本の銛を鮫に放った。ところが網が脚にからんでマイクは海中に転落した。水夫たちは2人を救いあげた。パイプスは無事だったが、マイクは致命傷を受けていた。マイクはキタに抱かれて死んだ。