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「ナイフ」のストーリー
ベトナム戦争が終わりに近づいた頃、キリスト教徒の住む海辺の村では、解放軍と南政府軍がまだ戦闘を繰り広げていた。そんななか、退却する政府軍の制止を振り切って一人の老婆が駆けていき、解放軍に向けて手榴弾を投げ、若い兵士の撃った銃弾に倒れる。老婆の孫娘ニュエ(ミ・ズエン)は祖母の墓に復讐を誓い、政府軍の指揮官が手渡したナイフを隠し持つ。村に進駐した解放軍へ抵抗を試み、復讐の機会を狙うニュエだったが、ある日、兵士ズン(ティエウ・アイン・ズオン)と出会い、互いに孤児であることを知る。ズンの素直な優しさに、頑ななニュエの心はとまどう。「敵の中にも良い人がいる……」。対立と緊張の中に生まれたささやかな幸福は、心の中にだけ許された平和の領域となった。悲しみを忘れ、輝きの楽園で子どものように二人は笑う。けれどニュエはまだ知らない。祖母を撃った兵士が誰であるかを。復讐と愛の相克、その深い亀裂へと、なすすべもなく悲しみが堕ちてゆく。