愛しのタチアナ

いとしのたちあな Take Care of Your Scarf, Tatiana
上映日
1995年2月11日

製作国
フィンランド

制作年
1994
上映時間
62分

レーティング
一般映画
ジャンル
ドラマ

check解説

「マッチ工場の少女」「レニングラード・カウボーイズ、モーゼに会う」など、数々の秀作・話題作を発表しているフィンランドの鬼才監督アキ・カウリスマキが、久しぶりに故国を舞台に描いた中編。シャイで無口な2人の男と外国人女性2人の旅を、独特のシンプルな語り口と奇妙な間とユーモア感覚でつづった愛すべき小品。60年代のR&R音楽や風俗描写が生む新鮮なモダニズムも見逃せない。監督・脚本・製作・編集はアキ・カウリスマキ。共同脚本はサッケ・ヤルヴェンパー、撮影はカウリスマキ作品のほとんどを手掛けるティモ・サルミネン。録音のヨウコ・ルッメ、セット・デザインのカリ・ライネ、マルック・ペティレ、ユッカ・サルミ、衣装のトゥーラ・ヒルカモら、ほかのスタッフもカウリスマキ作品の常連が固めている。主演も「真夜中の虹」「ラヴィ・ド・ボエーム」のマッティ・ペロンパー(95年7月14日に死去し、これが遺作となった)、「マッチ工場の少女」でヒロインを演じたカティ・オウティネン、レニングラード・カウボーイズの創立メンバーで「レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ」「レニングラード・カウボーイズ、モーゼに会う」の原案も手掛けたマト・ヴァルトネン、短編「悲しき天使」や「レニングラード・カウボーイズ、モーゼに会う」のキルシ・テュッキュライネンと、カウリスマキ作品に欠かせない俳優ぞろい。
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この作品のレビュー

ユーザーレビュー

  • ミャーノフ大佐

     ロードムービーだった。コーヒー中毒の仕立て屋ヴァルトが、コーヒーの準備もしてくれず彼をこき使う母親を戸棚に押し込んで、家を出、修理している車を取りに行く。車屋のレイノと一緒に延々と遠出する。ヴァルトはずっとコーヒーを飲み、レイノは延々とウォッカを飲んでいる。あるレストランでバスが故障して足止めを食っている女2人を乗せていくことになる。彼女らは2人はロシア人、もう一人のタチアナはエストニア人。彼女たちと一緒にタリン行きの船が出る港までのロードムービーが始まる。
     レイノを演じているのはマッティ・ペロンパー、タチアナはカティ・オウティネン。アキ・カウリスマキ映画の常連だ。
     男2人だけのドライブ中も会話がないが、女達を乗せてもずっと無口。食事する時も無口。男女がペアでホテルの同室で泊まっても何も無し。大体、カウリスマキの映画って性的な描写がないどころか、そんな感じを全く出さないよな。男女の物語を描いていても全くない。プラトニックなところを描きたいのかな。
     レイノがタチアナを、タチアナがレイノを好きだと感じるのは彼らの視線が絡み合うところからだ。無口なレイノがヴァルトと一緒にタリン行きの船に乗ってしまうところは、彼の一途な感情を表現しているだろう。
     これまで海の向こうの理想郷を目指す映画をたくさん撮っていたカウリスマキだが、ついに海の向こう側にいった。そして向こう側にレイノとタチアナの幸福があったのだ。
     一人ヴァルトはフィンランドの家に帰ってきて戸棚に押し込んでいた母親を解放して終わる。
     さて、このラストをどう取りますか。私は母親を戸棚に押し込んでから解放するまではひょっとしたら空想なのでは、と取った。カウリスマキの映画だったら、何日も前に押し込んだ母親がそのまま出てくる、という描き方はありそうなんだけど。女達と一緒に何日も家を空けていたのに、押し込んだ状態と出てきた状態が一緒なので、映画の本編が想像なのでは?と思った。だって、男2人が遠出するのにせいぜい1泊くらいしかしていないのに、女達と一緒になってから港まで行くのに何日もかかっている。いくらカウリスマキの映画でもつじつまが合わない。
     そうすると、海の向こうのレイノとタチアナの幸福も、やっぱり空想の中の理想郷だったのか。

「愛しのタチアナ」のストーリー

60年代のフィンランド。40歳を過ぎて母親に頭が上がらず、毎日ミシンを踏んでいる仕立屋のヴァルト(マト・ヴァルトネン)は、中毒に近いほど好物のコーヒーを母親が切らしたことで堪忍袋の緒が切れた。母親を押入れに閉じ込め、財布から金を盗んで外へ飛び出した彼は、修理に出していた愛車を受け取りに友人の修理工レイノ(マッティ・ペロンパー)を訪ねる。同じく40を越した独身男の彼は、革ジャンを羽織ってポマードを髪に塗りたくりロックンローラー気取り。「行け、とジョニー・キャシュも言った」とのレイノの言葉で、田舎町の退屈な日常にうんざりした2人は奇妙な旅に出発する。その途中で出会ったやせぎすのエストニア女性タチアナ(カティ・オウティネン)、小太りのロシア人女性クラウディア(キルシ・テュッキュライネン)を港まで車で送ることになったが、ヴァルトはコーヒーをひたすら飲み、レイノはウォッカをあおるだけで、寡黙な男たちは全然コミュニケートができない。やっと着いた安宿でタチアナはレイノと、クラウディアはヴァルトと同じ部屋でひと晩過ごすことになったが、シャイで気が利かない男たちはさっさと寝てしまい、2組のカップルには何も起こらない。やがて車は港に着き、別れを交わしたはずのレイノとヴァルトが船に現れた。エストニアに渡る短い渡航時間の間にレイノとタチアナの気持ちは高まり、彼女が彼の肩にそろそろと頭を預けると、レイノはゆっくりと彼女の肩を抱く。汽車でロシアに帰るクラウディアを見送ったあと、いよいよタチアナの家にたどり着いたが、レイノはここに残ると言う。4人を乗せた車がコーヒー・ショップに突っ込む。それは残らなかったヴァルトの心の揺れか。彼は家に帰ると、再び無言でミシンを踏み始めた。

「愛しのタチアナ」のスタッフ・キャスト

スタッフ
キャスト役名

「愛しのタチアナ」のスペック

基本情報
ジャンル ドラマ
製作国 フィンランド
製作年 1994
公開年月日 1995年2月11日
上映時間 62分
製作会社 スプートニク・オイ
配給 シネセゾン=パルコ
レイティング 一般映画
アスペクト比 アメリカンビスタ(1:1.85)
カラー/サイズ モノクロ/ビスタ
音量 ステレオ

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