杉原千畝 スギハラチウネの映画専門家レビュー一覧
杉原千畝 スギハラチウネ
第二次世界大戦時にビザを発給しナチスの迫害から逃げる多くのユダヤ人を救った外交官・杉原千畝の半生を描く伝記映画。危険を冒し激動の世界情勢を日本に伝えた諜報外交官としての姿を含め彼の信念を活写する。監督は「サイドウェイズ」のチェリン・グラック。杉原を「20世紀少年」シリーズの唐沢寿明が、彼の妻を「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズの小雪が演じるほか、ポーランドからボリス・シッツやアグニェシュカ・グロホフスカが参加している。終戦70年特別企画として制作された。
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評論家
上野昻志
これも大作なんだけどねぇ……と溜息が出るのは、それに見合うだけのパワーが感じられないからだ。実際の杉原千畝がしたことは凄いし、それは外国でもよく知られているのだが、この映画の印象は、ひどく稀薄なのだ。別段、唐沢寿明が悪いというわけじゃないが。確かに、「海難」みたいに派手な事件があるわけじゃないから、難しかったとは思うけど、迫力が感じられたのは、ヒトラー万歳で、ドイツとの同盟を推し進める大島大使を演じた小日向文世ぐらい、というのでは、寂しい限り。
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映画文筆系フリーライター、退役映写技師
千浦僚
柳広司原作、入江悠監督「ジョーカー・ゲーム」みたいなものに期待する、というか好き。戦時体制の日本を描く娯楽映画、史実を題材に感動や主義よりも娯楽性や活劇性を優先させてつくられる映画を求む。本作は意外と、結構それをやってた。満州で暗躍するスパイ杉原千畝というネタの良さ。杉原が特異な存在で、当時の日本政府と意見を異にしていたことが出ているのはいいが、それでもやはりナチスドイツと同盟国だった日本の言い訳というかユダヤ人への恩の押し売り感は否めない。
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文筆業
八幡橙
2時間19分。結構な時間(とお金)をかけて描かれる「日本のシンドラー」の半生。だが、見終わった直後に「杉原千畝とはどんな人物か」と誰かに尋ねられたとしても、明確に答えられる自信がない。ユダヤ難民にビザを発給し、多くの人の命を救った、という事実以外には。実在した人物の名を冠した映画であるにも拘らず、この作品からは杉原千畝という人間の血や肉が感じられず、惹きつけられる魅力に乏しい。爆撃音が響く中で対峙する小日向vs唐沢の場面には臨場感があったけれども。
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