ア・スペシャル・レディー(英題)の映画専門家レビュー一覧

  • 翻訳家

    篠儀直子

    もしかしたらエンタメではなく、アートシネマを目指した作品なのかもしれない。めくるめくガンファイトや格闘シーンとともに、話のスケールがどんどん拡大する韓国製アクションを見慣れた身としては、ごく狭い人間関係のなかで起こる凄惨な出来事を、背景情報の提示を最低限にとどめつつ、奇妙に静かなタッチで描いていくこの映画には、何やらギリシア悲劇にも似た静謐な抽象性を感じるのだった。タフなヒロインが活躍するだけでなく、女たちの絆が強調されているのがイマっぽい。

  • 映画監督

    内藤誠

    欧米のフィルム・ノワールはその時代の社会を反映しているからこそ、面白く見られるのだが、韓国ノワールも同様で、映画のリアリティからすると、貧富の差や家族のことなど、この国は苛酷な問題があることが分かる。底辺から上流階級へと這い上がった黒社会のヒロインを演じるキム・ヘスは独特のヘアスタイルとフアッションに身を固め、彼女が登場するシーンは引き締まる。「悪女」のキム・オクビンに次ぎ、アクションも相当なもの。イ・ソンギュンが農場で猛犬を飼う奇妙な悪役を好演。

  • ライター

    平田裕介

    早い話が痴話喧嘩。「ファントム・スレッド」同様にこちらもよくある男女の話だが、舞台が裏社会であることから当然のごとくぶつかりあいも殺し合いに発展するし、画的にも激しくなる。そしてその手が好物の身としては非常に楽しめるし、男の純情、母の愛情という人情味の“ふりかけ”も効いていて泣かせてもくれる。序盤でこれみよがしに中折式の散弾銃を持ったヒロインの姿を映しておきながら、肝心のクライマックスでそれを数発ブッ放す程度に留めてしまっているのはちと残念。

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