最初で最後のキスの映画専門家レビュー一覧
-
批評家、映像作家
金子遊
タイトルから想像した内容とはちがい、イタリア北部の田舎町を舞台にしたシリアスな高校生3人の物語。愕然としたのは、彼らが聞く音楽や夢中になるファッション、いじめの問題、ネット動画で仕返しをする方法に地域性がなく、他のどの先進国社会とも区別がつかないグローバルなものであることだ。若手俳優の熱演には好感をおぼえたけれど、主要人物の3人がそれぞれ同性愛、兄弟の死、性犯罪など大きなトラウマを抱えており、盛りこみすぎて物語が少しギクシャクしているのでは。
-
映画評論家
きさらぎ尚
浮きこぼれ3人組を主人公にしたこの映画、邦題にもう少し工夫が欲しいところだが、ドラマの中身はぎっしり。3人の三角関係を主軸にした青春映画であり、そこにはLGBT、いじめ、親子関係等の切実な問題が盛り込まれている。若者、あるいは親の、いずれかに肩入れするのではなく両者を絡ませて、危うく痛々しい3人の日々を描きながらテーマを浮かび上がらせ、衝撃のクライマックスへと導く作劇はうまい。インスタ風の映像、カラフルなファッションにインテリア、音楽も○。
-
映画系文筆業
奈々村久生
言うなればイタリア版「はなればなれに」。男女3人が手をつないで学校内を駆け抜けるカットはまさにルーブル美術館のシーンへのオマージュが全開で、拳銃の使い方やミュージカルの要素を取り入れた演出にも目配せがうかがえる。「はなればなれに」へのオマージュといえば「ドリーマーズ」が有名だが、ゴダールへの憧れはイタリア映画史に脈々と受け継がれているよう。男二人に女一人の物語につきものの定石として、関係は悲劇的な結末をむかえるのだが、そんなところも含めて正しい。
1 -
3件表示/全3件