詩季織々の映画専門家レビュー一覧
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映画評論家
北川れい子
ささやかなすれ違い。ささやかな喪失感。過ぎ去った時間。過ぎ去った人。舞台となる中国の3都市が、新海誠作品を手掛けてきたスタッフの丁寧な背景画で、それぞれの表情を持っているのが素晴らしい。街の表情に呼応した3話の短篇アニメも、新海監督の味と香りが充満していて、キャラの造型も新海タッチ。要するに3人の監督たちは、脚本を含め、あえて新海世界にドップリ浸かっているワケで、そういう意味では、新海作品はかなり模倣しやすいってこと? 愛すべき小品アニメ集だが。
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映画文筆系フリーライター、退役映写技師
千浦僚
ビーフンとモデル人生とカセットテープが主題の三つの短篇。一話目の「陽だまりの朝食」は北京で働く青年が故郷の湖南省での日々と祖母との思い出などをビーフンを介して回想する。二話目「小さなファッションショー」はモデルの姉と服飾専門学校生の妹の姉妹愛が描かれる。三話目「上海恋」は交換カセットテープで育まれた幼馴染の男女の想いとそのすれ違いが再開発される上海の石庫門という地を背景に語られる。全篇声優が演技過剰かなと思った。中国って今こうかと面白く見た。
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映画評論家
松崎健夫
新海誠の影響は、写実的でリアルな実景やモノローグによる説明などによって否応無く感じさせるが、本作には「衣・食・住」それぞれを3つの短篇のテーマとする面白さがある。特に1本目の『陽だまりの朝食』では、〈雨〉だけでなく〈汁〉などの〈水分〉に対する音へのこだわりを感じさせる。そして、作画によって提示される〈食〉に対しては、決して「おいしい」という言葉を使わないというこだわりを評価できる。モノローグによる説明によって物語が進行するだけに尚更なのである。
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