犬鳴村の映画専門家レビュー一覧
-
映画評論家
川口敦子
ホラーは苦手と軟弱にも可能な限り回避してきたジャンル。それで★をつけようとはいかにも心苦しい限りなのだが、さらに告白すればJホラーの雄、世界の清水映画も避け続け今に至っている。というわけで監督の軌跡を鑑みてこの新作を評することもかなわず、以下、背を丸め小声でいわせていただけば、乏しい記憶の中にある湖、トンネル、赤ん坊、母、呪われた血族と土地、犬歯(牙)等々、こんな私にもなじみあるジャンルのモチーフが山積みで妙にホッとした。ホラーなのに?!
-
編集者、ライター
佐野亨
都市伝説の映画化という些か安直な企画を、以前から構想していたらしい血縁をめぐるドラマに仕立てた清水監督。なのに、この血の「薄さ」はどうしたことだろう。最初の犠牲者となる少女とその恋人(さらに二人の子ども)、臨床心理士の主人公と家族、あるいは患者の男の子……彼らのつながりがどの程度の切実さをともなうものなのかが曖昧なため、血の物語としての恐ろしさも悲劇性もいまひとつ迫ってこない。クライマックスなど和製「狼の血族」という感じでわるくないのだが。
-
詩人、映画監督
福間健二
世界に売れる清水ホラー。語り方に工夫はあるものの、たとえば「伝説」を生む集合的無意識がどうだとかは考えず、おぞましさへの踏み込みに遠慮のないところがいいのか。ダム湖の底に沈められた村。その人々の前近代的生態と電力会社による陰謀の悪辣さの記録映像とされるものが出てくる。ゾッとした。往年の新東宝カルトの系列。そう考えると「妖しさ」不足が惜しい三吉彩花のヒロインだが、クライマックスで彼女と弟が過去の世界から祖母である乳児を連れて戻るのはよかった。
1 -
3件表示/全3件