羊とオオカミの恋と殺人の映画専門家レビュー一覧
羊とオオカミの恋と殺人
スプラッター・ラブコメディ漫画『穴殺人』を、「居眠り磐音」の杉野遥亮と「4月の君、スピカ。」の福原遥のW主演で映画化。自殺志願の黒須が壁にあいた穴を覗くと、隣人・宮市の生活が丸見えに。宮市の虜になるが、ある日彼女の殺人現場を目撃してしまう。監督は「女の子よ死体と踊れ」やドキュメンタリー「RADWIMPSのHESONOO Documentary Film」などを手がけた朝倉加葉子。自殺志願の男と美しき殺人鬼の恋愛模様を綴る。
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フリーライター
須永貴子
殺人鬼のヒロインが魅力的で、彼女が天真爛漫に人を殺す理由が知りたくなる。すると、「なぜ人を殺してはいけないのか?」といった素朴な問が投入され、彼女に恋する人生経験不足の青年と、人心がわからない快楽殺人者のヒロインが、答えを出そうとするが?み合わない。そんな2人が迎える「死にたいくらい(殺したいほど)愛してる」というフィナーレに陶酔。青年がヒロインの手料理に感動するシーンで、出来合いの揚げ物を使っていたのが残念。揚げるカットを入れるべき。
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脚本家、プロデューサー、大阪芸術大学教授
山田耕大
何を作ろうとしたんだろう。いや、何を作ったつもりだったんだろうか。ジャンルを問わず、メジャーやマイナーに関係なく、映画は人間を描くもの。ぞんざいな人形を描くものではない。やたら血しぶきが出てくるが、殺人少女もその隣人の少年も、体に血が通っているとは思えない。ホラー映画のつもり? 良いホラーにはエレガンスがあると知ってほしい。究極の愛? 人間が出てこない映画では、愛を語れない。特異な世界観を打ち出すのはいいが、最低限のリアリティくらいはほしかった。
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映画評論家
吉田広明
壁に空いた穴から覗くと隣の美少女が殺人鬼。そんな壁の薄いアパートで殺しの仕事かと、設定自体も緩いが、以後の展開がまた緩い。殺しに何の痛痒も覚えない、いわばニーチェ的超人たるオオカミと、群れて生きるしかない凡庸な道徳観念の羊の対決。羊がオオカミの倫理観を問う試金石たりえてもいないのに、何故オオカミがオオカミたることを止めるのか。「恋」だからしょうがないにしても、その選択で何か新しい倫理観、世界観が獲得されるわけではないのはどうか。
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