再会の夏の映画専門家レビュー一覧

再会の夏

モーリス・ジェヌヴォワ文学賞を受賞した歴史小説を「画家と庭師とカンパーニュ」のジャン・ベッケル監督が映画化した忠犬物語。黙秘を続けるジャック・モルラックを取り調べるランティエ少佐は、留置所から離れようとしない犬とジャックの恋人に目を付ける。ランティエ少佐を「最強のふたり」のフランソワ・クリュゼが、第一次世界大戦で武勲をあげながら収監されたジャック・モルラックを「ダリダ~あまい囁き~」のニコラ・デュヴォシェルが演じる。第一次世界大戦終結から100年を記念し製作された。
  • 映画評論家

    小野寺系

    戦争の道具として時代に翻弄される犬の運命を描きながら、同じような境遇に落ち込んだ人間たちの哀れな姿を重ね合わせていくことで、彼らを飼い慣らす者の無神経な暴力を静かに告発する一作。その構図が現代的で深刻であるがゆえに、農村のなかの“人間的”、あるいは“犬的”といえる、つつましいラストシーンが、じんわりと胸に響いてくる。飼い主に殉じる「忠犬ハチ公」のような美談を期待していると裏切られるかもしれないが、そこにとどまらないところが本作の手柄だ。

  • 映画評論家

    きさらぎ尚

    ポスターの明媚なビジュアルと邦題から、感傷的なドラマを想像したが、国家が国民に強いた不条理をあばく物語。劇中、主人公たちフランス兵と敵国の兵士が〈インターナショナル〉を歌いながら歩み寄る場面は、戦争における国家と国民の間の乖離を象徴する。なのに戦場での武功により勲章授与。それを犬の首にかけた主人公の行為に主題が集約。留置所の主人公を取り調べる職業軍人の、戦中戦後を通した主義の揺らぎ。二人の真情と、終始止まない犬の吠え声が物語を深くする。

  • 映画監督、脚本家

    城定秀夫

    フランス版忠犬物語なんて触れ込みとはいえ単なる動物感動映画などではなく、かなりストレートな反戦メッセージと普遍的な人間愛が流麗な物語運びの中で描かれており、VFXに頼らないガチンコ戦闘シーンをはじめとしたシンプルかつ力強い画作りや高い技術に裏打ちされた音響設計に加え、役者陣のみならず犬からも腰が据わった見事な芝居を引き出してしまう熟練の極みに達した職人技が堪能できる映画で、ドラマチックであることから逃げずに品格を保つ姿勢もベテラン監督ならでは。

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