愛国者に気をつけろ!鈴木邦男の映画専門家レビュー一覧

愛国者に気をつけろ!鈴木邦男

    異色の政治活動家・鈴木邦男の素顔に迫るドキュメンタリー。かつては新右翼の教祖と呼ばれ、数奇な運命を生き抜いてきた鈴木の思想遍歴を辿りながら、作家や元赤軍関係者、元オウム真理教信者ら政治・宗教の境界を超えて様々な人たちと交流を続ける姿を追う。監督は「ナオトひとりっきり Alone in Fukushima」の中村真夕。出演は、鈴木邦男、作家の雨宮処凛、拉致被害者家族会の元副代表・蓮池透、元日本赤軍で映画監督の足立正生、一水会代表の木村三浩、麻原彰晃の三女・松本麗華、元オウム真理教の幹部・上祐史浩。
    • フリーライター

      須永貴子

      鈴木氏の生涯と思想信条の変遷に迫りつつ、「真の愛国心とは何か?」を問いかける、今の時代に観られるべき力作。80年代のサブカル界隈で、新右翼団体「一水会」代表だった鈴木氏の名前を頻繁に目にした理由が、本作を観てやっとわかった。彼は、自分の思想を主張するのではなく、異なる思想や意見を知るために、様々な論客と対話を重ねていたのだ。彼のこの対話型のスタンスこそが、対立と分断が進む現代日本において必要だというメッセージに大いに共感する。

    • 脚本家、プロデューサー、大阪芸術大学教授

      山田耕大

      開高健の小説に、食味レポートをする男が全国の旨いものを食べ歩いた末に、真水に辿り着くというのがある。鈴木邦男の本を読むと、この人は真水に辿り着いたのだと思えた。その真水とは、知性も品性もある大人の日本人のほとんどが思っているであろうことである。「行動する右翼」が、様々な人生体験の果てに辿り着く、ごくまっとうな思想。その言説は感嘆もの。観れば、鈴木の交遊の幅の広さに改めて驚かされる。が、もっと鈴木の思索を追ってほしかった。

    • 映画評論家

      吉田広明

      一水会創設者の鈴木邦男のドキュメンタリー、外国からの視点を持った監督が日本の現状を題材としたということで「主戦場」を思い浮かべるが、論争的というよりは鈴木自身の個人的魅力(「年取ったハムスター」)の方がよく出た作品になった。とはいえ、愛国は、同じ考えの人だけで集まり、他の考えを持つ人を排除することではないとか、正義を振りかざす者への違和感とか、批判される精神がなくてはならないとか、今の日本の権力(とその擁護者)への痛烈な批判が込められている。

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