シェイクスピアの庭の映画専門家レビュー一覧
シェイクスピアの庭
シェイクスピア俳優として知られ「ヘンリー五世」などシェイクスピア作品の映画化を多数手がけたケネス・ブラナーが監督・主演、シェイクスピアの晩年を描く伝記劇。グローブ座焼失後断筆した文豪は故郷に戻るが、長年不在だった彼の帰還に家族は戸惑い……。故郷ストラットフォード・アポン・エイヴォンで過ごしたシェイクスピア最期の3年間に焦点を当て、「恋に落ちたシェイクスピア」でアカデミー賞助演女優賞を獲得したジュディ・デンチが妻アンを、「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズなどのほかシェイクスピア作品にも多数出演するイアン・マッケランがシェイクスピアのパトロンとして知られるサウサンプトン伯爵を演じる。
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映画評論家
小野寺系
ケネス・ブラナー監督・主演作らしく、役者が前面に出る演劇的な作品で、しかも題材がシェイクスピアとくれば、熱がこもるはずだ。中盤で暗闇に灯るろうそくの灯を前に、イアン・マッケランとブラナーによる、バストショットの切り返しが行われる会話シーンで、10分もたせる箇所が圧巻。とはいえ、あまりに演技が前に出るため、これが映画作品であることの意義を考えてしまう。家族一人ひとりにフォーカスする葬儀のシーンは、よほど思い入れがないとつらいところがある。
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映画評論家
きさらぎ尚
監督・主演のK・ブラナーをはじめ、出演者たちの顔ぶれからしても、撮るべき人が撮り、そのもとに演るべき俳優たちが集まった作品だと、まず。謎の多い人物の、断筆した最晩年に興味を募らせて見たのだが、年上妻との微妙な関係や子供たちとのぎくしゃくなど、俗事に悩まされる描写が面白い。思えば、こういう性格だからこそ人の心に分け入る悲劇、あるいは機微に通じる喜劇が書けたのだ。腑に落ちた。会話や挿話の要所にシェイクスピア作品を挿入した構成もファンには嬉しい。
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映画監督、脚本家
城定秀夫
家庭を顧みなかった報いとして嫁のみならず娘にまで冷遇され、しょんぼり庭いじりしている晩年のシェイクスピアの姿には同情を禁じえないし、そんな針のムシロに耐えかね「誰のおかげで立派な家に住めてんだ!」と大人げなく逆ギレしてしまう気持ちも分かる……なんて身につまされながら観ていたので、家族が再生に向かってゆく終盤の展開には救われた気分になったし、無駄なカット割りを削いだ落ち着いた演出も好ましいが、近年濫作されているこの手の伝記モノには流石に食傷気味。
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