恋する男の映画専門家レビュー一覧
-
映画評論家
川口敦子
スコリモフスキにゲリンと、一筋縄ではいかない面々の配給を手がけてきた村田信男監督のこの長篇デビューに合わせて「愛した女に振り回され、人生を狂わされようとも、ひたすらわが道を往く男」の映画が特集上映されるという。例えばジェルミ「イタリア式離婚狂騒曲」、あるいはトリュフォー「恋愛日記」。お子ちゃまにはもひとつ理解できない世界があったなと思い当たって、改めて村田監督作を思うと「でも」と「確かに」がとぐろを巻く。間違いなくいいのは出口亜梨沙。
-
編集者、ライター
佐野亨
中年男のドン・ファン妄想を具現化したファンタジーと思いきや、そうした妄想のうしろめたさ、根幹にある孤独を戯画的に笑いのめしたコメディ。戯画的ではあるが自虐的ではないところもミソ。この映画にスコリモフスキまで?ませてくる厚顔……いや、器のデカさには呆れ返るが、「早春」を思わせるプールが出てきたところで、なるほどこれは男の妄想をいたずらに美化してはならないというダメ押し的な布陣だったのかとさらに納得した次第。主題歌がまた無駄に名曲で笑う。
-
詩人、映画監督
福間健二
画づくり、ショットの飛び方、シンプルで鮮度ありそうだが、話がつまらなくて八四分が苦痛。恋愛喜劇にもエロスファンタジーにもなってない。でも、こういう主人公を「なにか憎めない」と思う女性と、こういう話に身につまされる男性がいるのだろう。この世界、倒すべきものがまだたくさんあると評者は戦意をかきたてた。女性たちがしたたかなのがせめてもの救い。村田監督、これでシャレてるつもりなのが痛々しい。編集監修のスコリモフスキ、名前を貸しただけとしても大失策。
1 -
3件表示/全3件