フライト・キャプテン 高度1万メートル、奇跡の実話の映画専門家レビュー一覧

フライト・キャプテン 高度1万メートル、奇跡の実話

中国で起きた飛行機事故を「マンハント」のチャン・ハンユー主演で映画化。リュー機長とクルーたちは、重慶市からラサに向かう飛行機に乗客119名を乗せて飛び立つ。地上1万メートルで操縦室のフロントガラスが大破し、副操縦士チェンの体が投げ出される。監督は、「インファナル・アフェア」シリーズのアンドリュー・ラウ。出演は、「空海 KU-KAI 美しき王妃の謎」のオウ・ハオ。
  • 映画・音楽ジャーナリスト

    宇野維正

    冒頭25分、西側諸国から半世紀以上遅れてジェットセット族が誕生した国ならではの「旅客機」という題材への高揚感に「知らんがな」という気持ちに。決して長尺作品ではないのに、まったりとしたエピローグが20分続くのも謎。もっとも、作品自体はハリウッドのディザスター映画の作法をトレースしたもので、どんなに経済大国になっても、どんなにドメスティックのマーケットが発展しても、中国映画がインド映画のような独自の文体の開発には向かっていないことがわかる。

  • ライター

    石村加奈

    タイトルは「フライト・キャプテン」だが、リュー機長(チャン・ハンユー)だけでなく、客室乗務員のリーダー、ビ・ナン(ユアン・チュアン)をはじめ、それぞれが自分の仕事に誇りを持ち、墜落の危機に立ち向かっていく、美しいチームワークが描かれる。離陸前、緊急着陸後、さらには1年後の、日常のほのぼのとしたエピソード(チェン副操縦士の続報希望)をふんだんに盛り込むことで、奇跡を尊ぶというより、乗客の安全のために訓練を怠らぬ、プロとしての矜持に焦点を当てている。

  • 映像ディレクター/映画監督

    佐々木誠

    2年前に起きた実際の航空事故の映画化。クルー、乗客、管制官、航空オタクなど多数の登場人物にスポットを当てるのだが、多すぎて其々深掘りできず、伏線としてもほぼ機能していない。それでいて各シークエンスが異様に長く(無事着陸した後なぜか20分近くも機内の様子を延々と描く)、タイトルにもなっている機長の背景のドラマも浅い。実話を再構築する際のズレが、アンビバレントな構造に表れている。飛行映像の完成度は高く、特に積乱雲の中を突っ切るシーンは見応えあり。

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