アダムス・ファミリー(2020)の映画専門家レビュー一覧

アダムス・ファミリー(2020)

これまで繰り返し映像化されてきた人気コミックを原作にした初の劇場用アニメーション。人間に故郷を追われたモンスターの夫婦、ゴメズとモーティシアは、丘の上に建つ荒れ果てた屋敷で、2人の子どもや執事のラーチと共に平和な日々を送っていたが……。声の出演は「スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け」のオスカー・アイザック、「スキャンダル」のシャーリーズ・セロン、「サスペリア」のクロエ・グレース・モレッツ。監督を務めたのは、「ソーセージ・パーティー」のコンラッド・ヴァーノン&グレッグ・ティアナンのコンビ。
  • 映画・音楽ジャーナリスト

    宇野維正

    2010年代の終わりにリメイクされる「アダムス・ファミリー」に期待するものといえば、近年のゴスカルチャー再評価や、メンタルヘルス問題を抱える若者にどう寄り添っているかになるわけだが、驚くことに本作にはそうした目配せがほとんどない。同時代性を感じさせるのは、ミーゴスによる最高に楽しいテーマソングくらい(プレスシートで1行も触れられてないことに?然としたが)。原作コミックに忠実であったとしても、これではあまりにも間口が狭いのではないか。

  • ライター

    石村加奈

    クリスティーナ・アギレラの〈Haunted Heart〉を筆頭に音楽が素敵だ。ラーチのピアノも、フォスター伯父さんやフランプおばあちゃん(ベット・ミドラー!)の歌もパンチが効いている。でもクールなのはアダムス・ファミリー限定、マルゴー率いる新興住宅地で暮らす人間の音楽はあからさまにダサイ……とメリハリの効いた構成で、どちらの「普通」が不気味なのかを軽妙に描く。アダムス家の子供たちが、異なる価値観や300年に亘る一族の歴史の、新たな希望となる役どころを担う。

  • 映像ディレクター/映画監督

    佐々木誠

    独自の文化を持つ異形の家族たちを排除しようする「普通」を愛する人々は、テレビの女性司会者に先導されている。その彼女のルックスや発言、裏で行っていることは明らかにドナルド・トランプを意識していて、アダムス夫妻の声を担当するのは、グアテマラ出身のオスカー・アイザックと南アフリカ出身のシャーリーズ・セロンだ。多様性が叫ばれる今、「他者との違いを楽しめ」という原作のメッセージを痛烈に、しかしポップなアレンジを施して描いた現代版アダムス・ファミリー。

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