アンチグラビティの映画専門家レビュー一覧
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映画・音楽ジャーナリスト
宇野維正
「インセプション」のような公開時だけでは解釈しきれない様々な寓意が込められた作品ならば、トリビュートしたくなる気持ちはわかる。しかし、10年近くも経って、そこに新たな視点を提示するのではなく、細部の剽窃に終わるのなら、それはやはり怠惰な作品と言うしかない。若い頃のメル・ギブソンから色気を抜いたような主演俳優も魅力薄。いきなりクライマックスから始まって、1時間以上そのまま押し通し、ようやく背景説明に入るストーリーテリングはなかなか面白い。
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ライター
石村加奈
昏睡状態に陥った人間が送り込まれる“昏睡の世界”の世界観が面白い。主人公の男が目覚めた時、かすかに感じる違和感を、脳を刺激するような、不快な音が的確に表現する。黒い怪物=死に神(リーパー)の正体も斬新だが、重力や時間の表現については一考の余地があるかと。作中、主人公が何故その世界へたどり着いたのかという経緯は明かされるが、思わせぶりな物語は遅々としたまま、一向に展開しない。そういう意味でも「知れば知るほど、問題が生じる」という台詞が印象に残った。
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映像ディレクター/映画監督
佐々木誠
昏睡状態の人間の脳内世界が舞台、という何でもアリ設定の度が過ぎて全篇ほぼ緊張感がない。夢は記憶と潜在意識の産物という前提で物語は進むのだが、「インセプション」をはじめ、「マトリックス」「X-MEN」「ターミネーター4」などこちらが観てきた多くの映画の〈記憶〉が次々と否応なく呼び起こされる。それが作品のコンセプトに合わせ、意識してちりばめていたのであればもっと楽しめたかもしれない。世界観のアイディア自体は悪くないが、あまりにも既視感に溢れていた。
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